1. トップ
  2. エピソード
  3. 50代娘「80代の母が薬を飲んでくれない」相談すると…薬剤師が取った対応に「もっと早く相談すればよかった」

50代娘「80代の母が薬を飲んでくれない」相談すると…薬剤師が取った対応に「もっと早く相談すればよかった」

  • 2026.7.1
undefined
出典:photoAC(※画像はイメージです)

介護をされているご家族にとって「処方された薬はきちんと飲ませてあげたい」という思いはごく自然なものです。
しかし、その責任感の強さが、かえってご本人の負担を大きくしてしまうことがあります。

本記事では、薬局で実際に伺ってきたエピソードをもとに、ご家族の善意とご本人の状態の間で生まれるすれ違いをご紹介します。飲みやすい剤形への変更や、医師・薬剤師との相談で広がる選択肢など、無理なく服薬を続けるためのヒントを整理しました。

「飲ませにくい」と感じたときに、一人で抱え込まないためのきっかけになれば幸いです。

介護の現場で起きる、薬を巡るすれ違い

ご家族の愛情とご本人の体調。どちらも大切にしたいからこそ、服薬の場面では小さな摩擦が生まれることがあります。まずは現場でよく見られるすれ違いの形を見ていきましょう。

「全部きちんと飲ませたい」ご家族の責任感

80代のお母様を介護されている50代の娘さんが、ある日疲れた表情で来局されました。

お話を伺うと「処方された薬を残さず飲ませなければと思っているのに、最近は口を開けてくれないことも増えてきた」とのこと。

朝の支度の合間に、何種類もの錠剤を順番に飲んでもらう時間は、ご家族にとってもご本人にとっても緊張の連続だったようです。

「お医者さんが必要だと判断した薬だから、しっかり飲ませたい」というお気持ちは、介護をされている方の多くが共有されている思いではないでしょうか。

本人が飲みづらそうにしているサインを見逃して

一方で、ご本人の側では「むせやすくなった」「錠剤が大きくて飲み込みにくい」といった変化が静かに進んでいることがあります。

言葉で訴えづらい方の場合、首を振る、口を閉じる、後で吐き出してしまうといった行動がサインになっていることも。

ご家族は「ちゃんと飲ませなきゃ」という気持ちが強いほど、こうした小さな変化に気づきにくくなることがあります。決して見落としを責めるべきではなく、誰にでも起こりうることとして捉えることが大切です。

ご家族と一緒に解決策を探る

「飲みにくい」「飲ませにくい」と感じたら、それは服薬の方法を見直すサインかもしれません。一人で工夫を続けるよりも、専門職と一緒に考えていくほうが選択肢は広がります。

飲みやすい形(剤形)への変更という選択肢

薬には、錠剤・カプセル・粉薬・液体・口の中で溶けるタイプなど、さまざまな形があります。

同じ成分でも飲みやすさが異なるものがあり、医師と相談することで変更できる場合もあります。

先ほどの娘さんのケースでも、いくつかの錠剤を口の中で溶けるタイプに切り替えたところ、朝のやりとりがぐっと穏やかになったそうです。

「こんなに簡単に変えられるなら、もっと早く相談すればよかった」とおっしゃっていたのが印象的でした。

負担を減らす工夫を医師・薬剤師と相談

剤形の変更以外にも、服用のタイミングをまとめる、一包化して取り出しやすくする、服薬ゼリーを活用するなど、工夫の余地はいろいろあります。

すべての薬が変更可能なわけではありませんが、医師と薬剤師が連携することで、ご本人とご家族にとって無理のない方法を一緒に探していけます。

「これは仕方ない」と諦める前に、まずは現状をお話しいただくことが第一歩です。

読者へのワンポイントアドバイス

介護の中での服薬は、ご家族の頑張りだけで支えるものではありません。専門職を味方につけることで、毎日の負担はずいぶん軽くなります。

「飲ませにくい」は立派な相談事項

「こんなことを相談していいのかな」とためらわれる方は少なくありませんが、「飲ませにくい」「最近むせやすい」「時間がかかるようになった」といった声は、私たち薬剤師にとってとても大切な情報です。

ご本人の状態に合わせて薬を整えていくためには、日々の生活の中で気づいた小さな変化こそが手がかりになります。

お薬手帳と一緒に、最近気になっていることをメモしてお持ちいただくと、より具体的なご提案ができます。

一人で抱え込まず、まずはひと言お聞かせください。

ご家族の思いと、ご本人の心地よさの両方を大切にできる方法を、一緒に探していきましょう。


ライター:下田篤男

京都大学薬学部総合薬学科を卒業後、調剤薬局やドラッグストアグループで薬剤師として勤務してきました。総合病院の門前店舗では管理薬剤師を務め、たくさんの患者さんと向き合う日々の中で、「薬を渡す」だけではない、人と人との関わりの大切さを実感しています。現在は薬剤師として現場に立ちながら、医療記事の執筆・編集や薬局経営コンサルタントとしても活動中。読者の皆さまに、薬局がもっと身近で頼れる場所になるような情報をお届けしていきたいと思っています。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる