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看護師「ベッドが空になっている…!」入院中の患者が“行方不明”になり病棟が大騒ぎ…20分後に発見した“予想外の場所”

  • 2026.6.12
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

こんにちは。現役看護師ライターのこてゆきです。

病院で患者さんの姿が見当たらなくなると、現場には一気に緊張が走ります。

特に精神科病棟では、離院や事故につながる可能性もあるため、患者さんの所在確認はとても重要です。

今回は、病棟中が一時騒然となった失踪騒動のお話です。しかしその出来事の背景には、私たちが見落としていた患者さんの疲れや苦しさが隠れていました。

午後のラウンドで気づいた異変

Aさんは中年の男性でした。気分の波が大きくなったため入院して治療を受けていました。

入院当初より状態は落ち着いてきており、病棟内では穏やかに過ごしていることが多い方です。

談話室で他の患者さんと話したり、レクリエーションへ参加したりする姿も見られていました。

その日の午後も特に変わった様子はありませんでした。

昼食を終え、各患者さんの様子を確認するため病室を回っていた時です。

「あれ?ベッドが空になっている…!」

担当スタッフが首をかしげました。ベッドにいるはずのAさんがいなくなっていたのです。

どこを探しても見つからない

最初は誰も深刻には考えていませんでした。

「談話室かな?」「トイレじゃない?」

そんな会話をしながら確認しました。ところが見当たりません。

談話室にもいない。デイルームにもいない。トイレにもいない。浴室にもいない。

病棟内をひと通り探しましたが見つかりませんでした。徐々にスタッフの表情が変わっていきます。

「最後に見たのいつ?」

「昼食の時はいたよね?」

「外来に行ってない?」

情報確認が始まりました。病棟全体に緊張感が広がります。

頭をよぎった「離院」

精神科病棟では、患者さんが無断で病院を出てしまう「離院」が最も警戒される事態の一つです。

もちろんAさんにその兆候はありませんでした。しかし、見当たらない以上は可能性として考えなければなりません。

スタッフは病院内の各部署へ連絡を入れました。

エレベーター付近。外来待合。売店周辺。中庭。考えられる場所を次々確認していきます。

私はその時、

「まさか離院じゃないよね…」

と内心かなり焦っていました。病棟内の空気も完全に変わっていました。普段の穏やかな午後とは違い、スタッフ全員がAさんの行方を追っていたのです。

「本当に病棟にいないの?」

探し始めて20分ほど経った頃でした。あるベテラン看護師がぽつりと言いました。

「本当に病棟の中にいないかな?」

すでに何度も確認していました。それでももう一度探すことになりました。病室のカーテンの裏、倉庫、物品室。普段は人が入らないような場所も見て回ります。

そしてその時です。

洗濯物を回収する大型ワゴンの近くで立ち止まったスタッフがいました。

「ちょっと待って」

そう言いながらワゴンの奥を覗き込みます。

次の瞬間、

「あっ!」

という声が聞こえました。

発見された意外すぎる場所

そこにいたのはAさんでした。洗濯物回収用ワゴンの奥のスペースに、身体を小さく丸めるように座っていたのです。

私は思わず言いました。

「Aさん!こんな所にいたんですか!」

Aさんは少し気まずそうな顔をしました。

「すみません…」

スタッフ全員が安堵したのを覚えています。大きな事故でも離院でもなかった。それだけで空気が一気に緩みました。

ただ、不思議だったのです。なぜそんな場所にいたのか。

「誰にも話しかけられたくなかった」

病室へ戻ったあと、Aさんへ話を聞きました。するとAさんは少し考えてから言いました。

「ちょっと落ち着きたかったんです」

私は聞き返しました。

「何か嫌なことがあったんですか?」

Aさんは首を横に振りました。

「嫌なことじゃないんです」「ただ、今日はしんどくて」

さらに話を聞くと、その日は朝から他患者さんとの会話が続いていたそうです。

レクリエーションにも参加していました。病棟生活の中では普通のことです。けれどAさんにとっては、その普通が少しずつ負担になっていました。

「誰かと話すのも疲れる時があるんです。でも病室にいても人が来るし」

「ちょっと一人になりたかった」

そう話してくれました。

問題行動では見えてこなかったもの

正直に言うと、見つかった直後は「勝手に隠れないでほしい」という気持ちもありました。

実際、病棟は大騒ぎになっていました。

多くのスタッフが動き回り、緊張した時間を過ごしていました。けれどAさんの話を聞くうちに、見方が少し変わりました。

Aさんは誰かを困らせたかったわけではありません。離院しようとしたわけでもありません。ただ、人との関わりや周囲の刺激から少し離れたかっただけだったのです。

精神的な疲れが限界に近づいていた。でも、それをうまく言葉にできなかった。結果として選んだ場所が、たまたま洗濯物ワゴンの奥だったのです。

安心できる場所はどこにあるのか

精神科病棟では、患者さん同士の交流が治療につながることがあります。

活動への参加も大切です。けれど、それが負担になる日もあります。人と関わることが苦しくなる時もあります。Aさんの件は、そのことを改めて考えさせられる出来事でした。

私たちはつい、

「活動に参加できている」

「他者交流ができている」

という部分を良い変化として捉えがちです。もちろんそれは間違いではありません。

ただ、その裏で疲れが蓄積していることもあるのです。

病棟中が探した先に見えたもの

あの日、Aさんは洗濯物回収用ワゴンの奥で見つかりました。

聞いた時には思わず笑ってしまいそうな場所です。

けれど、その場所はAさんにとって唯一、誰にも話しかけられずに済む場所だったのかもしれません。

患者さんが姿を消した。その事実だけを見ると問題行動に見えます。しかし背景を知ると、そこには助けを求めるサインが隠れていることがあります。

病棟中が探し回ったあの出来事は、私にとって「患者さんが本当に安心できる場所とは何か」を考え直すきっかけになりました。治療の場である病院だからこそ、時には「誰とも関わらなくていい時間」も必要なのかもしれません。

そんなことを教えてくれた、忘れられない失踪騒動でした。



ライター:こてゆき

精神科病院で6年勤務。現在は訪問看護師として高齢の方から小児の医療に従事。精神科で身につけたコミュニケーション力で、患者さんとその家族への説明や指導が得意。看護師としてのモットーは「その人に寄り添ったケアを」。

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