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「もっと近くにつけてほしい」救急車の“停車位置”をめぐって隊内で意見が分かれた…元救急隊員が語る停車の難しさ

  • 2026.7.1
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。ライターのとしです。

救急現場では、傷病者の近くに救急車を停めることが大切です。

ただ、近ければ必ず活動しやすいかというと、そうとも限りません。

道路の幅や交通量、ストレッチャーの動線によって、停車位置ひとつで活動の流れが変わることがあります。

今回は、救急車の停車位置をめぐって隊内で意見が分かれた事案についてお話しします。

停車位置で意見が分かれた

救急要請を受け、現場へ向かった時のことです。

機関員として、私は救急車をどこに停めるかを考えながら現場に入りました。

傷病者の近くに停めることは基本です。

ただ、見ていたのは距離だけではありません。

ストレッチャーをどの方向に出すか。
傷病者をどのルートで運ぶか。
ほかの車両の通行を妨げないか。
病院へ向かう時にすぐ出発できるか。

そうしたことも含めて停車位置を決めていました。

しかし、その現場では隊長から「もっと近くに付けてほしい」という趣旨の指示がありました。

傷病者に近づけたいという考えは理解できます。

ただ、機関員として見ていた動線とは少し違っていたため、一瞬迷いがありました。

停車位置に固定の正解はない

救急車の停車位置は、現場ごとに変わります。

広い道路なら、近くに寄せても問題ないことがあります。

反対に、狭い道路や交通量の多い場所では、近づけすぎることで動きにくくなることもあります。

ストレッチャーの向きが変えにくい。ほかの車両が通れなくなる。出発時に切り返しが必要になる。

こうしたことが起きると、搬送までの流れが悪くなります。

傷病者を中心に考えることは基本です。

ただ、周囲の状況を見ずに救急車を停めてしまうと、活動全体が止まってしまう場面もあります。

停車位置は、近いか遠いかだけで決めるものではありません。

その場に合わせて、臨機応変に変える必要があります。

活動障害が傷病者の負担になる

停車位置をめぐっては、通行車両や近隣の方からの苦情につながることもあります。

道路や出入口を塞ぐ形になると、現場全体が落ち着かなくなります。

その対応に時間を取られれば、救急隊の動きにも影響します。

傷病者の観察や搬送に集中したい場面で、別の対応が必要になるのは大きな負担です。

その影響は最終的に傷病者にも返ってきます。

搬送までに時間がかかる。
ストレッチャーの動線が悪くなる。

そうした状況は、傷病者にとっても負担になります。

だからこそ、停車位置は周囲の状況まで見て判断する必要があります。

経験によって見えているものが変わる

救急隊は基本的に3人一組で活動します。

隊長は全体の活動や傷病者対応を見ます。

隊員は観察や処置を支えます。

機関員は運転だけでなく、車両の位置や搬送経路にも気を配ります。

同じ現場でも、役割によって見えているものは少しずつ違います。

現場での経験年数や、機関員としての経験によっても、見え方は変わるのだと思います。

搬送時の動線や出発のしやすさ、苦情につながらないかまで考える。

それは、何度も停車位置に悩んだ経験があったからこそ、意識できていた部分かもしれません。

隊長がその視点を理解しているかどうかで、隊内の連携は大きく変わります。

その意図が共有できていないと、現場で迷いや食い違いが生まれることもあります。

救急車をどこに停めるか。

小さな判断に見えるかもしれません。

しかし、搬送の安全や速さにも関わる大事な部分です。

傷病者を中心に考えるからこそ、周りの状況も見なければなりません。

隊内で共有しておく大切さを感じた事案でした。


ライター:とし
元救急隊員。消防で17年、主に救急隊として活動し救急救命士資格を取得。現場経験をもとに、救急の分かりにくい部分を一般向けに噛み砕いて発信しています。


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