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「若く見えるね」が悪口になればいい。女優・常盤貴子と個人・常盤貴子の美の基準と強さとは

  • 2026.4.13

テレビドラマ史に名を残す数々の作品でヒロインを演じたのは、20代の常盤貴子さんだ。今も、その姿は変わらない――というこの表現、常盤さんにはちょっと違うのかも。と思ったのには、訳がある。常盤さんには、独自でカッコいい年齢観があるのだ。

「若く見えるね」が悪口になればいい

――ドラマや映画、CMと30年にわたって活躍し続ける常盤さん。最近はファッション誌などに登場するたび、「変わらなさ」が強調される。実際に会えば、すぐに実感できる表現だったりする。が、常盤さん、年齢については“過激”な思考の持ち主だ。

私は20代の頃から、「若く見えるね」みたいな言葉が、いっそ悪口になればいいのに、と思いながら生きてきたんです。若い方がいいっていうのは日本独自の文化だと思っていて。

若さには、特有のかわいさがあります。それを愛する心は尊くもあります。舞妓さんが好きとかアイドルが好きとか、それはもう脈々と続いている日本文化の一つでもあると思うんです。ですが、そのことと、年齢を重ねても美しいとか美しくないとかということは、何か次元が違う気がするんです。(若い人と)同じ土俵に立っていませんから!という(笑)。若い頃と今を比べるのも好きではないです。比べてもなぁ・・・と思ってしまうので。

かつて、年上の先輩方が年齢を聞かれている場面を目にすることが多くありました。答えを言わせた後のリアクションが、必ず「(その年齢には)見えないですね」でした。定型文なんです。何、この茶番? 何を求めての質問? そう思っていました。

大林宣彦監督の「野のなななのか」という作品で、16歳の高校生を演じました。2014年公開だから、40代になっていましたね。そのとき監督が「貴子ちゃんは16歳の経験があるよね。だからできるよね」と言ったんです。すごく衝撃でした。

海外のオーディションだと「何歳ですか?」でなく、「何歳を演じられますか?」と聞かれるんだそうです。そういうことだと思うんです。そもそもお芝居なんて嘘だし、その中でどこまで嘘がつき切れるかというのが役者という仕事だと思います。自分の演じられる年齢を表明することは、自分の可能性を確認することでもある。すごくいいなと思いました。

個人・常盤貴子として出会った場所と人を大事にしている

――常盤さんのオフィシャルインスタグラムは、能登に関する投稿でいっぱいだ。ボランティアに行ったり、能登から劇団を招いてのイベントを開いたり。ヒロインの母親役で出演した朝ドラ「まれ」(2015年放映)の舞台として訪れて以来の縁だ。

2024年10月、「まれ」のスタッフと能登に泥かきへ行った時(写真提供:常盤貴子)

女優・常盤貴子として演じた役は、次の役のために忘れなくてはなりません。だけど、演じることで出会った人や場所は、個人・常盤貴子の人生の一場面だと捉えていて。この人たち好きだな、ここにまた行きたいな。そういう思いは大事にしています。

能登のことを「自分を取り戻せる場所」と言う人が多いのは、「人間力」を尊ぶ土地柄だからだと思います。ものを持っているかどうかでなく、今をどう生きるかを大事にしている。そのことが伝わってきて心が震える瞬間が多いから、また行きたくなる。「能登はやさしや土までも」という言葉がありますが、その通りの場所です。

園井恵子さんという人のことも、とても大切に思っています。広島への原爆で亡くなった元タカラジェンヌで、戦時中は「桜隊」という劇団の看板俳優でした。大林監督の遺作「海辺の映画館―キネマの玉手箱」で園井さんを演じて、ステキだな、もっと知りたいなと思いました。その縁で毎年8月6日には、桜隊の「原爆殉難碑」がある目黒の五百羅漢寺での追悼会に参加しています。

資料を読んだり縁の人と会ったりするうち、園井さんが私の中で立体になってきました。知ることはとても大事。戦争も、知り合いを相手にはしないのではないかと思う。アメリカにとって日本は遠い、知らない土地だった。2023年に参加した追悼会の朗読劇では冒頭で「今も戦争が続いています。ロシアの、ウクライナの演劇陣たちは、今どうしているのでしょうか」というセリフがありました。思いを馳せる、想像する。とても大事なことだと思います。

――日本特有の「若さ」「年齢」に対する価値観へ一石を投じる常盤さん。記事後半では常盤さんの美への価値観や、これからの常盤貴子についてを深掘りしていく。

 

すっぴんですけど、何か?

――常盤さんはかつて、普段のメイク習慣について、「起床後洗顔したら、化粧水、美容液、乳液、日焼け止めから一気にメイクまで」すると語っていた。ところが最近、変わってきたという。

衣装協力=コート、ジレ、ブラウス、パンツ、ストール全て GUPTOHA(マテリアルマスター) イヤリング、イヤカフ ヒーミー青山 ブーツ paraboot AOYAMA

コロナ禍の頃は、もう朝からずーっと夫(劇作家、演出家、俳優の長塚圭史さん)と一緒だったじゃないですか。そうなると何かメイクしないわけにはいかないな、みたいな気持ちになっていたんです。でも今はそういう事態ではなくなったし、日焼け止め以降は、変わりました。「私はこのすっぴんの状態でいますけど、何か?」という顔を毎朝、夫にしています。

「私は、これ(=すっぴん)でいきますよ、今日は一日中」と宣言のような感じですね。心を強く持とうと思って(笑)。まるまる外に出ない日は、ずっとそのままという時もあります。そうすると毎朝、私を見る夫の眼球がぐぐぐぐぐって動く気がするんです。すっぴんの私に「誰?」って伝えてくる目だと思って、だから私も「このままいきます」っていちいち伝えてるんです、目で(笑)

温泉のお風呂問題も、永遠の悩みですね(笑)。温泉に着いてからお風呂に入るときはメイクはしたまま、食事をして、寝る間際のお風呂でようやく落とします。これはもうこれで決まりですが、朝ですね、悩むのは。朝食と朝風呂どっちが先か、どのタイミングでメイクをするのか。

朝風呂前にメイクして、顔は濡らさずに朝食というのが多いですかね。でも温泉に来ているメンバーにもよるし、どこで食事をいただくかも重要です。食事に行く際フロントの前を通るかどうか、動線もありますね。そのようなさまざまな要素を勘案して、総合的に判断する。結果、都度都度、違う感じです(笑)

めんどくさいおばあちゃんはカッコいい

――最後に、常盤さんにとって「美しさ」とは何ですか、と尋ねた。

強さ、だと思います。自分を信じることができる強さがある、イコール美しいということ。人の意見に流された方が楽なことも多々あると思うけれど、でも自分の心の声にちゃんと耳を傾けて、自分が将来どうなりたいかもちゃんと見すえて、自分と対話する。そうすれば信念を持って生きられると思います。

――常盤さんは20代の半ばで、事務所社長に「映画の仕事をしたい」と告げたという。以来、自分の仕事は自分で決めている。

他人の決めたレールを歩むと、自分の中にひずみができてしまう気がしたんです。自分が納得して決めたことなら、失敗しても自分にとって大事な学びになる。だから私にとって失敗は、嫌なことではないんです。

流されることが悪いとばかりは思いません。私も弱い部分もあるし、そういう自分も嫌いではない。でも迷ったときに自分の「核」がある人はぶれない。だからずっと、自分と対話しています。選挙で誰を選ぶかもそう。自分に合った商品を買うのもそう。積み重ねかな、という気がしています。

今、一番自分と対話しているのは能登のために何ができるか、です。それはけっこう、考えていますね。

――常盤さんにとってのキーワードには「楽しむ」がある。 

30代くらいから「私が楽しんでいる姿を見せることで、見てくださる方も楽しんでくださるかな」と思うようになりました。

それで、あのね、私、めんどくさいおばあちゃんになりたいんです。性格が丸くなってかわいいおばあちゃんもいいですが、長く生きたんだから、渾身の笑顔で「少しのわがまま聞いてぇ」でいいと思う。一々引っかかって、こだわりを言ってくる、わがままぐらいの方がチャーミングだと思う。流されず、いろんなことに疑問を持てるおばあちゃんはステキですよ。カッコいいおばあちゃんになりたいです。

※インタビューは2025年に行いました。
※HALMEK upの人気記事を再編集したものです。

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