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【現地リポート】「NOT A HOTEL SETOUCHI」開業!ビャルケ・インゲルスが日本で初めて手掛けた建築へ

  • 2026.4.7
Akinobu Kawabe

これまでの別荘やホテルの概念を書き換え続けているシェア別荘サービス「NOT A HOTEL」。その最新作が広島県三原市・佐木島に誕生した。世界が注目する建築家ビャルケ・インゲルス率いるBIG(Bjarke Ingels Group)が、日本で初めて完成させた建物がついにそのベールを脱いだ。現地の様子をリポートする。

Kenta Hasegawa

「NOT A HOTEL」は、これまでの別荘やホテルの概念を書き換え続けているシェア別荘サービスだ。オーナーとして、ライフスタイルに合わせ必要な日数分だけ建物を所有しながら、自身が利用しない日はホテルとして貸し出すという仕組み。一般的に別荘があっても実際の滞在は1年のうち20日程度で大半は活用できていないという別荘オーナーが抱える問題を解決する合理的な仕組みを取り入れている。しかし、魅力はそれだけではない。世界の名だたるクリエイターを起用し、その土地のポテンシャルを引き出す「建築の力」にある。最新作となる「NOT A HOTEL SETOUCHI」のパートナーとして選ばれたのは、世界中から注目を集めるデンマークの建築事務所BIGを率いるビャルケ・インゲルスだ。

〈写真〉佐木島の南西岬に“角度”にインスパイアされた、3つのヴィラがつくられた。その位置から望む視界の広さに応じて「180」(手前)、「270」(中央)、「360」(奥)という名前がついている。

Akinobu Kawabe

意外にもこのプロジェクトは、以前から「NOT A HOTEL」の取り組みに注目していたビャルケの方からお問い合わせフォームにコンタクトを取り実現したという。彼は本作について、「『NOT A HOTEL SETOUCHI』は、BIGにとって日本で初めて完成した建築であり、私自身や私の建築観に大きな影響を与えてきた日本の文化と向き合う、重要なプロジェクトです。大胆な未来志向と深く根付いた伝統が対照的に共存するこの国において、NOT A HOTELとともにこのビジョンをかたちにできたことは、まさに建築的な冒険でした」と振り返る。

〈写真〉「180」のダイニングとキッチン。キッチンは鉄板焼きの設備を備えたメインキッチンの後ろに、そのほかの調理を行うサブキッチンが用意されている。

Akinobu Kawabe

3つのヴィラはいずれも佐木島の緑豊かな丘陵の地形に寄り添うように円形を基調にしたアイコニックな外観を持ち、穏やかな瀬戸内の海を美しくパノラミックに切り取る。

伝統的な日本の平屋から着想を得た構造や、障子を現代的に解釈したガラスのファサード、畳のレイアウトを反映した床の意匠など、建物のさまざまな要素に伝統的な日本建築を再解釈。さらに、特徴的なのは現地の土を用いたラムドアース(版築)の壁で、建物を土地の記憶と深く結びつけている。

「各ヴィラは風景そのものに住まうような存在として外へとひらかれながら、背骨のように走る壁によって空へとだけ開かれた、内向的で守られた空間も併せ持っています。伝統と現代、調和と突出、スカンジナビアと日本——相反する要素が共存するこれらのヴィラは、一つの“ホスピタブル”な建築として統合されています」とビャルケ。


〈写真〉「180」の内部。廊下の両側にあるラムドアースの壁(敷地の土をセメントなどと混ぜ合わせ層状に重ねてつくった壁)が光によって味わい深い表情を見せる。

Akinobu Kawabe

〈写真〉「180」の寝室。手前のドアの先には露天風呂があり、外廊下の先にはインフィニティプールが続く。

Akinobu Kawabe

〈写真〉「180」の中庭。日本庭園から着想し、ゆるやかな坂になった小道に苔が敷かれ、四季によって表情が変わる樹種を中心に植えられている。

Akinobu Kawabe

「180」の静謐な空間からさらに斜面を登った先に現れるのが、より視界が開ける「270」。中庭にプールを配置し、外の景色とあわせ、どこにいても水の静かなゆらめきに心癒やされる。



〈写真〉「270」のリビングダイニングとプール。ダイニングテーブルは3棟共通でカッシーナに依頼し製作した、この建物だけのオリジナル家具。ダイニングチェアはデンマークの巨匠ポール・ケアホルムが1979年にデザインした「PK15™」。

Akinobu Kawabe

〈写真〉それぞれの部屋名はビャルケ・インゲルスの事務所BIGのロゴと同じフォントを使って示されているのもポイント。

Akinobu Kawabe

敷地のもっとも高台に位置するのが「360」。一筆書きで円を描いたときに生まれる筆のハネを外観デザインに取り入れ、迫力ある建物がゲストを迎える。室内は名前の通り、360度回遊できるプランになっており、圧倒的な開放感をほこるリビングダイニングや、閉じた空間で過ごす心地よさを追求した書斎など、多様な過ごす場所が用意されている。

〈写真〉「360」の外観。屋根は太陽光パネルを日本の瓦のように重ねて設置。建物の一部の電力を太陽光でまかなう。

Akinobu Kawabe

〈写真〉丘からせり出したインフィニティプールとその先の瀬戸内海がシームレスにつながり、圧倒的な開放感を味わえる「360」のリビング。

Akinobu Kawabe

〈写真〉開放感あふれるLDKに対して、回廊はあえて光を絞り、静謐な空間に。スリット状の窓から差し込む光がラムドアースの壁をドラマチックにみせる。

Akinobu Kawabe

日本の気候風土や伝統への深いリスペクトと、BIGならではの革新的なアプローチが融合し、この場所でしか得られない体験がある。

〈写真〉内円から突出するようにできたポットと呼ばれる個室。天窓から中庭の緑や空を眺める。

KYRRE SUNDAL(Left), NILS KOENNING(Right)

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Laurian Ghinitoiu
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