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【ホラー】心霊スポットの神社で「じりん」線の切れた公衆電話が鳴った…受話器を取った少年に寄り添った奇妙な“友人”【作者に聞く】

  • 2026.4.3
少年の歩調と合わせて足音が聞こえてくる。自殺しようという彼をわざわざ追いかけてくるのは一体誰なのか!? 鳩ヶ森(@hatogamori)
少年の歩調と合わせて足音が聞こえてくる。自殺しようという彼をわざわざ追いかけてくるのは一体誰なのか!? 鳩ヶ森(@hatogamori)

物語は、主人公が14歳だった頃の記憶から始まる。同級生からも教師からもいじめを受け、居場所を失っていた少年は、ある夜ロープを手に、心霊スポットとして知られる神社へと向かっていた。参道の両脇には木々が生い茂り、拝殿は暗がりの奥に沈んでいる。その時点ですでに、空気はどこかおかしい。

足音が、ずっとこちらについてくる

春の夜の友人_001 鳩ヶ森(@hatogamori)
春の夜の友人_001 鳩ヶ森(@hatogamori)
春の夜の友人_002 鳩ヶ森(@hatogamori)
春の夜の友人_002 鳩ヶ森(@hatogamori)
春の夜の友人_003 鳩ヶ森(@hatogamori)
春の夜の友人_003 鳩ヶ森(@hatogamori)

「がさ。」不意に聞こえた音に、少年は足を止める。風は吹いていない。木々が勝手に鳴るような状況ではなく、明らかに“何かが動いた”気配だった。しかもその音は、一度きりでは終わらない。歩けばついてきて、止まれば気配も止まる。まるで呼吸を合わせるように、森の奥から存在が寄り添ってくる。

耐えきれなくなった少年は走り出す。だが、「ざわざわざわざわ…」と音もまた併走してくる。逃げても離れない。追ってくるのか、ついてきているのか、その違いすら曖昧なまま、不気味さだけがじわじわと膨らんでいく。

茂みの奥にあった“鳴るはずのない電話”

意を決した少年は踵を返し、音のする茂みをかき分ける。そこにぽつんと置かれていたのは、電話線の切れた公衆電話だった。そんなものが、なぜこんな場所にあるのか。意味がわからないまま、少年が受話器に手を伸ばしたその瞬間、「じりん」と電話が鳴る。

線は切れている。つながるはずがない。なのに確かに鳴った。その時点でもう十分に怖いのだが、この作品が不穏なのはそこから先だ。受話器の向こうから聞こえてきた“意外すぎるひと言”に、少年はなぜか数分間も笑い転げてしまうのである。恐怖の最中に差し込まれるその異物感が、逆にぞっとする。

怪異は“襲うもの”ではなく、寄り添うものかもしれない

この作品を描いたのは、2023年2月に「第2回朝日ホラーコミック大賞」の漫画部門で大賞を受賞した鳩ヶ森(@hatogamori)さん。今回のエピソードについて、「実は私の実体験が元になっています」と明かしている。

学生時代、友人たちと地元の小さな神社へ肝試しに行った際、参道脇の森から“ガサガサ”と足音が聞こえたという。その音は、自分たちの歩調に合わせるようにずっとついてきたそうで、「震えあがって退散した」記憶が、この作品の出発点になったという。そこから鳩ヶ森さんは、「怪異は怖いだけでなく時には人間に寄り添ってくれるもの」という思いを込め、優しい話へと昇華させた。

ただ、この“優しさ”がまっすぐ温かいわけではないのが、この作品の不気味なところでもある。寄り添ってくれる存在が人間ではないこと、しかもそれが暗い森の奥からずっとついてきていた“何か”であることが、読後にもじわじわ残る。

笑いと恐怖が隣り合う、不穏な距離感

鳩ヶ森さんは今後について、WEBマンガサイト掲載を目指してホラー作品のネームを進めているほか、Xでも短編ホラー漫画を継続的に発表していきたいと話している。「商業漫画に限らず、自分が満足するためだけのホラー漫画も描きたいです。もしかするとギャグだらけの一風変わったホラーになるかもしれませんが、ご覧いただけたらうれしいです」と語った。

実際、鳩ヶ森さんはホラーだけでなくギャグも得意分野だという。その理由については、「基本的にはお笑い脳なんだと思います」としつつ、「ギャグとホラーは紙一重で、過剰な笑いは怖いし、極端な恐怖は笑ってしまう」と分析。「笑いの裏に潜む恐怖というようなものは、常に意識しています」と明かしている。

たしかに本作も、鳴るはずのない電話、正体の見えない足音、そしてそこで交わされるどこか拍子抜けしたやり取りによって、“怖いのに少し笑える”という奇妙な感覚を生み出している。だが、その笑いは決して安心ではない。むしろ恐怖が限界を超えた先にある、危うい揺らぎのようにも見える。

孤独な少年と怪異が結んだ、静かなつながり

現実の世界に、友人もいなければ、頼れる教師も、信じられる家族もいなかった。そんな少年にとって、人間かどうかなど関係なく、“自分のそばにいてくれる存在”は心の支えになったのかもしれない。

たとえ最初に聞いた受話器越しの言葉の意味を、後になって取り違えていたのだと気づいたとしても。その勘違いすら含めて、彼にとっては救いだったのだろう。そしてそれは、ずっとひとりでそこにいた怪異にとっても、同じだったのかもしれない。足音は今も彼のそばで聞こえる。これから先も、その“友人関係”は続いていくのだろう。静かに、気味悪く、けれど確かに。壊れてしまうことなく――。

ちなみにホラー漫画家である鳩ヶ森さんは、自身初のミステリー漫画『仮門(かりもん) 消えた少女―10年目の真実』を電子書籍として出版、現在好評発売中である。『仮門 消えた少女―10年目の真実』は、10年前の幼女失踪事件の真相を追うミステリー漫画。前半に散りばめられた数々の伏線を後半で見事に回収していく全192ページの本格派作品だ。真実が明らかとなる最後の最後まで気を抜けない読み応えある一作となっているので、こちらもあわせて読んでみて!

取材協力:鳩ヶ森(@hatogamori)

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