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パリコレ&ミラノコレの舞台裏|モデル・小田鈴音とSAE KASHIWABARAが語るランウェイのリアル

  • 2026.4.1
Hearst Owned

ELLEgirl世代の等身大の悩みや恋愛、キャリアについて、“本音”で語り合う「GIRLS SYNC」。第六弾は、パリ・コレクション、ミラノ・コレクション出演経験のあるモデルでELLEgirl UNIの小田鈴音さんと、モデルのSAE KASHIWABARAさんが登場。海外コレクションの裏側や忘れられない出来事、モデルとして考える“美しさ”の定義など、ファッション好きのガール世代なら知りたいことばかりのはず! ここでしか知れないモデルの実体験トークを見逃さないで。

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海外コレクションデビューを振り返り

ELLEgirl:ランウェイ常連の2人ですが、初めての海外コレクションの思い出は?

小田鈴音(以下鈴音):私の海外コレクションデビューは4年前。「クロエ」2022-23年秋冬コレクションのショーでパリ・コレクションのランウェイを歩きました。記憶に残っているのは、階段を上がった先にあるランウェイの床が“砂”だったこと! リハーサルでは本番用のシューズは着用できなくてぶっつけ本番だったし、パリ・コレクションを歩くのも初めてだったので、ランウェイでとんでもない数のカメラと照明、観客の目が自分に向けられると、頭が真っ白になりました。だから正直、自分がどうやって歩いたのか覚えていなくて……。でも、ショーの後に家族や友人から写真が送られてきて、その瞬間に「私、パリコレを歩いたんだ」と思った記憶があります。

Salvatore Dragone / LAUNCHMETRICS SPOTLIGHT

SAE KASHIWABARA(以下SAE):私は2年前、ミラノ・コレクションで「Keqiao」2025春夏コレクションのショーを歩いたのが初めて。その時のルックがタイツにヒールを合わせたスタイリングで、滑りやすくてとにかくシューズが脱げる。本番はシューズが脱げないように必死で、頭の中は不安でいっぱい。「大丈夫。頑張れ」って自分で自分を励ましながら歩いていたかな。フィナーレでは脱げちゃったんだけど、何事もなかったかのように歩き切りました。

paolo lanzi / LAUNCHMETRICS SPOTLIGHT

華やかなコレクション。その舞台裏はドタバタ⁉

ELLEgirl:なかなか見ることのないファッションショーの舞台裏。海外コレクションのリアルな舞台裏を教えて。

鈴音:まず、早着替え問題がありますよね。リハーサルで本番の衣装を着られないことも多いので、舞台裏はとにかく慌ただしい。

SAE:部活みたいな雰囲気があるよね(笑)着替えを見られるのが恥ずかしいと感じる間もないくらい、「とにかく全部着替えて!!」というムードになる。

鈴音:一つ目のルックが終わって裏に入った瞬間に着替えモードに切り替わりますよね。誰かにバッグを預けて、ジャケットのボタンを開けながらシューズを脱いで……みたいな。

SAE:わかるわかる(笑)フィッターさんも手伝ってくれるけど、着脱が難しい服も多いから、自分が一番よく分かってないとスムーズにいかないよね。「右足からお願いします」「次はこれ着ます!」って。

鈴音:緊張しますよね。服を着てすぐに次のランウェイに呼ばれることもしばしば。

SAE:あと、男女関係なく同じスペースで着替えるけど、男性モデルが女性モデルの方を見ないようにしてくれているときに、デリカシーがあるなって思った。

小田鈴音が忘れられない“バイク事件”とは?

ELLEgirl:会場から会場をバイクで移動するモデルをよく見るけど、実態は?

SAE:時間がないときバイクに乗せてもらうのはあるあるだよね。

Edward Berthelot / Getty Images

鈴音:私も乗ったことがあるんですけど、忘れられない出来事があって……。ショーが終わってマネージャーから「バイクで〇〇に移動してほしい」っていう連絡が来ていたので、バイクを探そうと思っていたら、1人私に向かって手を挙げてくれている方がいたんです。「ここだよ」って。何も疑わずにその方のバイクの後ろに乗って、10分くらい進んだところで「あなたここに行くんだよね」って見せられた住所が全然違ったんですよ! 2人で「え! 間違えてしまった……」ってなって。

SAE:焦るね。それでそのまま送ってもらったの?

鈴音:そこからすぐに元の会場に戻ったんです。そうしたら私の専用バイクの方が別のところで待機してくれていたので、急いで乗り換えて正しい現場に向かいました。本番には何とかギリギリ間に合いました。

「私には私の良さがある」と気付かされるオーディション

ELLEgirl:モデルをしていて、大変だと感じる瞬間は?

鈴音:体力・気力を使う場面って本当に多いけど、オーディションは特別。

SAE:落ち込むこともあるよね。

鈴音:今でもたくさんあります。でもオーディションが終わった後に「ウォーキングのここがダメだったかな」「受け答えがダメだったかな」って考えたとしても、選ぶのはブランド側。だから「今できることはすべてやった」と自分のことを認めてあげるようにします。オーディションが終わったらすぐに切り替えて、モデルじゃない“小田鈴音”に戻ることを意識しますね。数をこなしていく中でうまくいくことばかりじゃないから、辛いことにも慣れてきたのかも。

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SAE:そうだね。私はモデルを始めたての頃、一つのオーディションに対して願掛けをするくらい肩肘を張っていたかな。全部のオーディションの前に「これがダメだったら私はモデルとしてダメだ」って考えてた。だけど、オーディションって良い意味でも悪い意味でも山ほどあるから、毎回そこまで考えすぎると落ちたときのショックが大きいんだよね。

鈴音:わかります。目まぐるしくオーディションが繰り返されるからこそ、感情の揺さぶりが大きくなるとしんどいですよね。だからといって何も準備せず行くことはしたくないから、バランスを取るのに苦労したり。

SAE:だけど「私には私の良さがあって、他のモデルには他のモデルの良さがある。自分が否定されたんじゃなくて、ブランドの世界観に合っているかどうかでオーディションに受かるか落ちるか決まるんだな」って気付いた。そこからは自信を失わずにモデルでいられるようになった。

鈴音:比べないことって大切ですよね。他のモデルを見て「あの子のああいうところ、自分にはないな」って思ってもプラスに捉えられたらいいかな。

SAE:むしろ仲良くなっていろいろ聞くのもいいかも。自然と私も頑張ろうって思えるのが理想。

「ウォーキングがかっこいい」エディ・スリマンの一言が自信に

ELLEgirl:オーディションやキャスティングで印象に残っている出来事は?

鈴音:私がフィッティングで歩いたときに、デザイナーのエディ・スリマンが「彼女のウォーキング、すごくかっこいい」って言ってくれたんです。本当に嬉しくて「よっしゃ」と思いました。その時のドレスが肩やデコルテの辺りが出るドレスで、写真を撮った後にも「彼女のデコルテが本当に綺麗」と褒め言葉をもらいました。ホテルに帰ってすぐにマネージャーに「エディ・スリマンが私を褒めてくれた!」と連絡しました。

CELINE

SAE:それは嬉しいね! 私はミラノで「プラダ」のキャスティングで、歩くたびに「美しい」って言ってもらってた。最終的にコンセプトに合わずに選んでもらえなかったけど、ウォーキングはたくさん練習してたからそう言ってもらえて嬉しかった。「努力が実ったな」って思った瞬間だったな。

鈴音:小さな一言が嬉しいし、自信になりますよね。逆に、フィッティングで不安になることも多いです。「これ着こなせるのかな?」って。

SAE:それは毎回思う。

鈴音:自分だったら選ばないような服がルックになったりすることが多いですよね。

SAE:でも、私にとってコンプレックスに感じていた部分は、他の人から見たら良く見えてるんだって発見にもなる。

鈴音:プロのスタイリストとデザイナーが任せてくれているって思うと安心しますよね。私は「ミュウミュウ」2023年春夏コレクションのルックで上下シースルーの素材を着る機会があったんです。ラメが散りばめられていて、トップスが蛍光色のグリーン、ボトムスが蛍光色のイエロー。「この色って私の肌に合っているのかな?」ってすごく不安でした。でも、ランウェイを歩くとかっこよく見えるし、きっと似合ってる。

Filippo Fior / LAUNCHMETRICS SPOTLIGHT

SAE:かっこいいよね。自分に似合うものが意外なものだったりして、それを着せてくれるプロってすごい。

固定概念だった“美しさ”からの解放

ELLEgirl:世界中でたくさんのモデルと出会う中で、美の基準が揺らいだ経験は?

鈴音:自分が自分のことを好きでいられたら、それでいいと思うんです。ありのままを好きでいることも、もっと綺麗になりたいと思うことも、全部大切なこと。私は世界の舞台に出てから、自分の中の“美しさ”は固定概念だったことに気が付きました。だから、“美しさ”の基準ってないと思うんです。

SAE:そう実感できるのは、個性をもった人が活躍していることを海外で知ったからなのかも。学生時代はみんな同じ制服と髪型なのに、自分だけ身長が高いことがずっと嫌だった。

鈴音:私もです。「私だけ身長が高い」ってマイナスに感じていました。あと、目が二重で顎や鼻が小さいのが美しいって前は思っていました。でもコンプレックスをプラスに捉えたくてモデルを始めて、それがきっかけで個性を大切にできるようになりました。

SAE:私はランジェリーの撮影でスペインに行ったことがターニングポイント。人種も体型も違う3人のモデルが集められて、それぞれ全く同じシーンを撮るの。それを見て、3人で「全員美しいね」って話をしたんだよね。“美しさ”に正解はないって身をもって感じた。

鈴音:ファッション業界は、流行によって“美しさ”の価値が左右されるような気がする。全部に共通しているものって何だろう。

SAE:“人の心がポジティブに動くかどうか”かな。自分が明るい気持ちになるとか、癒されるとかね。世界中のモデルさんの写真を見てると「みんな美しいな」って思う。

世界のトップモデルの中で感じる、日本モデルの強さ

ELLEgirl:トップモデルと肩を並べて戦うために、必要なことは?

SAE:自分から主張することだと思う。ギリシャでモデルをやっていた時、その大切さを感じた経験があって。ギリシャの雑誌ではフォトグラファーがあらゆる決定権を持っているから、雑誌に出たいと思ったらフォトグラファーに自分のことをプレゼンしなくちゃいけないの。自分の意見をはっきりと伝えたり、自分のキャラクターを見せたり...。そうすると人脈で別のフォトグラファーから声をかけてもらえることもあった。日本人はシャイだけど、主張することは大切だと思った!

鈴音:私が必要だと思うことは、やる気、負けん気、気合い。体型管理やモデルとしての技術ももちろん大切だけど、やっぱり最終的に残るのは気持ちの面かな。

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ELLEgirl:お2人が考える日本人モデルの強みとは?

SAE:ミラノで受けたオーディションで壁に付箋が貼ってあったんだけど、それが“180cm”の目印だったの。「身長が180cmに満たない人は帰ってください」って意味。私は177cmだけどどうしてもランウェイに出たかったから少し背伸びしてその場に残った。日本人はフィジカル面でいうと有利とはいえないよね。

鈴音:欧米モデルの方が平均身長が高いですよね。

SAE:身長を覆す程の強みはなんだろうって考えたとき、日本人が持つ美しさって、静と動でいうと静かな美しさじゃない?日本人モデルの撮影やショーを見てると、力の抜き方がうまいなって思う。静かな強さを感じて「美しいな」「いいな」って思う。

鈴音:派手さはないかもしれないけどかっこいいですよね。私は身長が179cmで欧米モデルの平均くらいだから、同じ身長の子がオーディションでは多いんです。中には173cmの海外のモデル仲間もいるんですけど、その子は「バレンシアガ」を歩いてたんです。もちろん身長180cm以上って決めてるブランドもあるけど、意外と身長が関係ないショーもあるのかな。それこそ「セリーヌ」は私より身長低い子の方が多かった気がします。

SAE:そのモデルが纏う雰囲気がブランドのイメージとフィットしたんだろうね。

鈴音:そう思います。あとは骨格や顔のバランスとか。数字だけじゃないと思います。

自分を大好きでいてほしい

ELLEgirl:世界の舞台を経験したお2人が、モデルを志す若者に伝えたいことは?

SAE:私がモデルを始める前は、他のモデルを見て劣等感を抱いてしまっていたんです。でも、せっかくやるなら楽しくやってほしいから、まずは自分を大好きになってほしい。見た目に自信がなかったら、自分の内面でもいい。見た目って内面からにじみ出てくるものだと思います。自分がモデルを職業にしてたくさんの仲間と関わる中で、普段の生活から仕草が生まれ、仕草から自分が好きな見た目になるんだなって思いました。何でもいいから1個自分の大好きな部分を作ってほしいです。

鈴音:私が思うのは、自分がモデルになる前に見ていた先輩モデルも今の自分と同じ悩みや不安を持って仕事してる方が多いということ。だから「自分のこういうところが嫌い」「こういうことが不安」という漠然とした思いがあったとしても、やってみないと解決しないことの方が多い。悩みや不安を理由に挑戦できないことがあっても、一度挑戦してみてほしいなと思います。どんなに心がぽっきり折られようが、しんどい経験をしようが、苦しさに耐えるのも人生かなって思うんです。だから怖がらずに挑戦してほしいなと思います。

小田鈴音/モデル
2001年生まれ。2022年、パリ・コレクションデビュー。「セリーヌ」や「ランバン」などメゾンブランドのコレクション等へも出演し、日本を代表するモデルの1人として活躍中。日本のTOMORROW TOKOYに所属し、NYのKollektiv MgmtやパリのSilentなどの大手エージェンシーとも契約。

SAE KASHIWABARA/モデル

1996年生まれ。IT会社でシステムエンジニアとして働きながら、2021年よりモデル活動をスタート。2024年にミラノ・コレクションデビュー。国内のファッションショーを始め、雑誌や広告などでもモデルとして活躍中。日本のTOMORROW TOKOY所属。

photo:CEDRIC DIRADOUIAN video edit:LILICO KUBOTA

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