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〈60代の暮らし〉ギリギリの生活費と、足元がスースーするような不安。それでも、小さな自分だけの台所に立つのは楽しかった!

  • 2026.4.5

日々の中にある小さな「うれしい」や「満たされる瞬間」。それは、誰かに褒められたときだけにあるものではないのかもしれません。エッセイスト 一田憲子さんの言葉から、自分で自分を満たすヒントをひもときます。

「よし、私は大丈夫!」

離婚をして住んだ6畳ひと間のワンルームマンションには、ガスがひと口しかついていませんでした、それでも、「ヤマザキ」の食パンでフレンチトーストを作り、初めて買ったシナモンパウダーをふりかけて食べたら、なんだか大人になったような気がしました。

カフェオレボウルにミルクティーをたっぷり注ぎ、駅前の家具屋さんで1万円ほどで買ったテーブルにセットした時に、「よし、私は大丈夫!」と思ったことを、今でも覚えています。

足元がスースーするほどの不安に怯えていたけれど

生活費はギリギリだったけれど、初めてフリーライターとして仕事を始め、帰りに「西友」で食材を買って、小さな鍋やフライパンでおかずを作る。足元がスースーするほどの不安に怯えていたけど、小さな自分だけの台所に立つ時間は楽しかったなあ~。

その後、古い平屋に引っ越してオーブンを買い、パン作りを始めたというわけです。

20代、30代と、それぞれの時代には、胸いっぱいに吸いこんだおいしい香りの思い出があります。それは、フリーライターとしてなんとか食べていくようにならなくちゃ、と必死にもがいていた私の人生の本筋からは離れた、脇道にあるささいなことだったけれど、今思い出しても自然に顔がほころんでしまう、かけがえのない思い出です。

家にいる日の昼食はポタージュを作る。白花豆を大量に煮てキューブ状に冷凍してカブとともにスープに。

一田憲子(いちだのりこ)●1964年京都府生まれの編集者・ライター。女性誌や書籍で活躍し、暮らしや装い、人間関係など日常の気づきを丁寧に描く。『暮らしのおへそ』などを手がけ、著書やWeb発信も多数。

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