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全国11誌に『ねえ、ぴよちゃん』を9年毎日連載。漫画家生活45周年の青沼貴子「面白く描く秘訣は”小学生の脳みそをキープする感じ”」【インタビュー】

  • 2026.3.26

全国新聞11紙で毎日掲載され、今年4月で10年目を迎える4コマ漫画『ねえ、ぴよちゃん』。登場するのは、小学3年生の主人公・ぴよちゃんや、人間の言葉がわかる猫の又吉、そして、ぴよちゃんの家族や猫の仲間たち。彼らが過ごす穏やかな日々が、日本全国の朝を明るく照らします。幼児から90代まで、幅広い人たちに愛される本作がどのような想いで描かれているのか、作者の青沼貴子さんに聞きました。

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青沼 貴子(あおぬま・たかこ)

北海道函館市生まれ。81年、『週刊マーガレット』増刊号で漫画家デビュー。自身の体験を描いた育児漫画『ママはぽよぽよザウルスがお好き』がベストセラーとなり、アニメ化もされた。主な作品に『青沼さんちの犬は腹黒だ』など。東京都在住。

ぴよちゃんの名前がハマった時に「この作品はいける!」って

——これまでにも、アニメ化された『ママはぽよぽよザウルスがお好き』(婦人生活社)などのコミックエッセイで家族のお話を描かれています。本作のテーマはどのような経緯で決まりましたか?

青沼貴子さん(以下、青沼):連載を引き受けた時は、ファミリー向けの4コマ漫画ということだけが決まっていました。私は『ママぽよ』などで子育てエッセイを描いていたのですが、その頃はもう子育てから離れ、ママ向けや飼い犬のエッセイを描いていたので、オリジナルの漫画は『ぴよちゃん』が久しぶりでした。

——ぴよちゃんは天真爛漫で、どんなことにも楽しさを見出す子どもらしい子どもです。モデルはいたのでしょうか。

青沼:いちばんのモデルは私の小さい頃です。ただ、すごく昔の話になるので、時代背景は自分の子どもたちの小さい頃に合わせています。ぴよちゃんのお兄ちゃんの椰子彦はゲームをするし、スマホも持っているし。『ママぽよ』では、リュウとアンという私の子ども2人がモデルでしたが、どうしても描けない部分があったんです。ぴよちゃんは私自身がモデルだから言っちゃいけないこともないし、描いていて楽ですね。

——ご自身がモデルということは、小さい頃の記憶がネタになっているのですね。どんどん思い出すものですか?

青沼:年齢を重ねた人の“あるある”ですが、2日前のごはんを思い出せなくても、昔のことはよく覚えているんです。とくに、小学生の頃の思い出はすごく記憶に残っていますね。

——きっと楽しい思い出も多かったのでしょうね。ぴよちゃんという名前の由来とは?

青沼:由来はとくになく、最初から「ぴよちゃん」と決めていました。ぴよちゃんだから、本名は「ひよこ」だろうなと思っていて。家族の名前は海に関連した名前がついているサザエさんの家族みたいに、植物でそろえたんです。でもぴよちゃんだけ違っちゃうな…と思っていたら、ハコベ草の別名がひよこ草なんですね。それを知らずに名付けていたのに家族ともちゃんと符合したから、これはすごい偶然だと自分でも驚いて、「この作品はきっといける!」と勝手に思いました(笑)。

ぴよちゃんと又吉の言葉が通じない理由

——猫は先生がよく描いている題材ですが、又吉のモデルはいましたか?

青沼:『ママぽよ』でも飼っていたペルシャ猫のジャックです。18年生きて、子どもたちが小学校いっぱいくらいまで一緒に暮らしたんですが、ツンとして誰にも懐かないし、いつも睨みをきかせているような猫でした。昔、『おどろんエンジェル』(集英社)っていう妖怪漫画でもジャックをモデルにした化け猫の又吉が出てきましたけど、デザイン的にも今の又吉とほぼ同じです。

——ペルシャ猫は先生のいろいろな作品に登場していますね。

青沼:ペルシャ猫って長毛で、又吉もアップで見るとちょっとだけ長毛なんです。尻尾も普通の猫より丸い。ペルシャ猫にはヤマネコの血が入っているという噂があって、ヤマネコは南のほうの島にいるらしいので、又吉は関西弁です。

——又吉はぴよちゃんの言葉がわかる賢い猫ですね。でも、ぴよちゃんは又吉の言葉がわからない。それも子どもらしくて可愛いのですが。

青沼:ジャックが亡くなったのがあまりに悲しくて、今度はミニチュアダックスフントを飼い始めたんです。今はもう16歳で、この子も長生きなんですけど、動物って人間に何かと訴えかけてきますよね。でも、人間は大体外すじゃないですか。「ご飯なの?」って返したらプイとされて…。又吉とぴよちゃんが言葉でわかり合えないのは“ペットあるある”かなと。

——又吉の場合はそれを気にしていなくて、それが人間とうまくやっていくコツ…だなんて猫仲間に話していたりしますね。

青沼:又吉は達観してるんです。お家にいるペットもきっと同じで、ある程度フンフン言ったところで諦めますよね。人間には何を要求してもほぼ通じないんだろうって。又吉たちが猫同士で話し合う部分はファンタジーですけど、ぴよちゃんと言葉が通じないっていうところはリアリティとして入れました。

ぴよちゃんの年齢は歴代の国民的漫画をお手本に

——ぴよちゃんが小学3年生という設定はどのように決まりましたか?

青沼:私が好きなサザエさんの漫画では、ワカメちゃんが1年生で、カツオが5年生。他の国民的漫画でいうと、コボちゃんが幼稚園児から3年生まで進級しましたし、ちびまる子ちゃんも、朝日新聞のののちゃんも3年生。何十年も描いていらっしゃる先生たちの漫画をリサーチして、小学生で、かつこのあたりかなと。9歳といえば、天真爛漫さが全開の時期ですし。

——たしかに、ぴよちゃんと同じ小学3年生の設定は多いですね。そして、ぴよちゃんのお兄さんの椰子彦は中学2年生。又吉と仲良くしたいのにいつも逃げられてしまう、愛おしいキャラクターです。

青沼:椰子彦は“外し”担当という感じで、作者としても気に入っているキャラクターのひとりです。私自身が兄ひとりの2人兄妹なので、妹とお兄ちゃんという構図がいちばん描きやすいんです。『ママぽよ』で登場するうちの子どもたちも、お兄ちゃんと妹ですから。

——お気に入りのキャラクターは他にもいますか?

青沼:椰子彦は私のランキングの中でだいぶ上ですけど、いちばんは又吉かもしれないですね。もちろん主人公のぴよちゃんにも思い入れはありますが、好きというより自分自身というか、一心同体という感じなので。

——お母さんのすみれさんは、毎日忙しく動き回っていて家事はほどほどに…そして明るくおちゃめというタイプですが、モデルはいますか?

青沼:ぴよちゃんが私と私の子どもたちを合わせたイメージだとしたら、すみれさんは、私と、仲良くしてくれている板橋マダムスが合わさっています。私のように仕事を持っている人もいるし、パートで働いている人もいて。すみれさんのパートの話ではマダムスから聞いたお話を入れたりして、たくさんの引き出しにさせてもらっています。

——子育てと仕事を両立させながら忙しい毎日を乗り越えている姿に、子育て世代は勇気をもらえそうです。

青沼:そうですね。今はもう子どもたちが大人になりましたけど、やっぱり高校生くらいまでは主婦の仕事も多かったので、両立は大変でしたね。幼児の時期がいちばん大変で、だんだん楽にはなりますけど、小学生はまだまだ親の出番も多いですからね。

——週末はごろ寝したいのに家族サービスを強いられるお父さんの草太も、お父さんたちの共感を誘っているキャラクターです。

青沼:このモデルは、どうしてもダーリンになりますよね。平日は真面目に働いて、週末は競馬を楽しむという…。『ママぽよ』のダーリンとは変えたいと思いながら、変わりませんでした。うちのダーリンも子どもが小さい頃はテーマパークなどに連れて行っていましたが、今は子どもから手が離れて自分の趣味に邁進しています。それはそれで幸せそうですよ(笑)。

——そして、ぴよちゃんのお友だちのひみこちゃんは、SNSでツンデレが話題になったキャラクター。ひみこちゃんはどんな存在として描き始めましたか?

青沼:最初は、天真爛漫でどんなことも楽しく受け止めるぴよちゃんに対し、キリキリと嫉妬するようなお嬢様タイプのライバルとして描き始めました。ツンツンした感じを大事にしていたので、それをツンデレ系のお嬢様として受け入れていただいたのは、ありがたいことです。でも途中から、ぴよちゃんみたいないい子に意地悪をする子はいないなと思い始めて。今はもう、ぴよちゃんのお友だちになっています。

文字は全部手書き! 9年間、漢字の練習をたくさんしました

——連載は3000回を超えています。毎日連載のネタ作りや作品制作の大変さは並大抵ではないと思いますが、いかがでしょうか。

青沼:最初の1年はウンウン言いながらひとりで作っていましたが、2〜3年目くらいからネタ出しをスタッフに手伝ってもらっています。「遠足は?」とか、「お月見は?」とアイデアを出してくれて。4コマは私のほうで描けるから、アイデアを出してくれるだけで十分なんですよ。

——4コマの表現がまた面白くて、さまざまな工夫が入っているのだろうなと感じます。

青沼:どの作品もそうですけど、やっぱりネームというか、ネタをコマに書き起こすのは大変ですね。3コマ目まではできるけど最後のオチが難しいとか、オチはあるけど3コマ目までができていないとか。そこで行き詰まることはたくさんあります。

——締め切りにギリギリ間に合わない…ということもあるのでしょうか。

青沼:長くこの仕事をしているので、苦しくても締め切りまでには帳尻を合わせて完成させるんです。ただ、新聞はコンプライアンスが厳しいので、完成後に修正することはありますね。ネタの打ち合わせの段階でスタッフに相談しながら「その表現だとこういう人が傷つきます」と教えてもらうこともありますけど、それでも修正はあるので、新聞連載は大変だなって。

——それだけたくさんの方が読んでいるのでしょうね。

青沼:そうですね。漢字の間違いもよくあるんですよ。書き文字にしたのは日刊で締め切りに間に合わせるためだと思いますが、小学校の時に間違えて覚えたような漢字は2度も3度も間違えますよね。ハネやトメも、大人になったら適当ですから。間違えやすい字を紙に書いて部屋に貼って、たくさん勉強してます。最近はだいぶ間違えが減りましたけど、この9年間は漢字を書く練習をたくさんしました。

長い連載の中でキャラクターが動き出すのは快感

——毎日連載となると、何本かまとめて提出するのでしょうか。

青沼:1ヶ月に2回、15本ずつ提出しています。15本作るのに1週間じゃちょっと足りなくて、8日間くらいかかりますね。アシスタントやスタッフにスケジュールを決めてもらっているので、それに合わせて描いています。ダラダラしたら、いくらでもダラダラできるので、ガッと集中して。

——お休みするタイミングもなかなかないのでは…。

青沼:日刊の先生たちはみんな大変な想いをされていて、それを自虐的に面白おかしく言っていらっしゃるのを目にしていたので、私は最初に1ヶ月分の貯金をして始めさせてもらったんです。30本くらいの貯金を今でもずっと守っています。それに加えて、年間353本掲載されるところ、355本提出して毎年2本、余分に提出しているので、9年経つと18本の貯金。そのおかげで今年は15本分お休みしたのですが、もう最近はそれが楽しみで楽しみで(笑)。

——そのペースをずっと崩さずに守り続けているとは…感服します。1981年に集英社の『週刊マーガレット』でデビューされてから、今年で45周年。これまでの漫画家活動を振り返っていかがですか?

青沼:漫画家さんって、45年で45作品描く人もいると思いますが、私は作品数が少なくて、一回描き始めると長い。続編などの依頼をいただけることも多くて、いまだにそのスタイルは変わっていませんね。

——同じお話を長く続けることの醍醐味とは?

青沼:長く続ける中でキャラクターが動き出し、お話ができていくのは快感です。ぴよちゃんではないのですが、やっぱり苦しく描いた話って、あまり反響が良くないんです。でも、とくに『ぴよちゃん』のように長く続いている作品では、勢いでノってバーッと描いた回のほうが面白いと言ってもらえることが多いですね。4コマ漫画はそんなにたくさん描いていませんし、こんなに長く続けた連載も初めて。ストーリー漫画とは書き方も感覚も違いますが、キャラクターが動き出してくれたっていう意味では、『ぴよちゃん』は本当に楽しく描かせてもらっています。

ぴよちゃんを描くために小学生の脳みそをキープ

——『ねえ、ぴよちゃん』は来年4月で10年目。これからも長く続くことを願っています。

青沼:長く続けるには健康がいちばんですね。80時間寝ない記録ができるくらい大変な生活をしていたので、それに比べたら、今は毎日寝られていますから。週刊マーガレットで『ペルシャがすき!』を連載している時、欄外に「堤さん、ごめんなさい」って編集さんへのメッセージがペンで描いてあったことがあったんです。自分で書いたはずなんですが、全然記憶になくて…きっと半分寝てたんですね。欄外だから良かったですけど、今週はたぶん仕上がらないと思っていたんだと思います。

——今以上に壮絶な時代があったのですね。ぴよちゃんは先生のもうひとりの姿だと思いますが、ぴよちゃんを描き続けるために工夫されていることは?

青沼:自分を天真爛漫な世界に置こうと意識しています。たとえば、夫から社会的な怒りをぶつけられた時は、そういうのを私には聞かせないでとお願いして。だから心はいつも平和ムード。常に脳みそを小学生にしておくようなイメージです。

——制作の大変さもあると思いますが、この作品を描いて良かったと感じることはありますか?

青沼:自分を描くことには慣れていたし、これまでのコミックエッセイが礎になっていますね。楽しいと思える作品なので、やっぱり『ぴよちゃん』に巡り会えて良かったなと。「日刊は大変でしょ」とよく言われますが、週刊連載では週に19ページ描いていたから、ひと月で80ページ近く。日刊とはいえ、ひと月に30本なので、昔よりも楽です。

——長く続けたからこそ、また新たな作品に巡り会えたのですね。とても素敵なことだと感じます。

青沼:今は「ヒュ〜」と思うほど上手い漫画家さんがたくさんいるのに、どうして私にお仕事を依頼してくださるのかなってずっと思っているんです。同時に、何か、私にしか描けないものがあるのかなと思って。それが何なのかはまだわかりませんが、今のままでいいと仰っていただけるので、これからも変わらず描いていけるように頑張ります。

取材・文=吉田あき 写真=奥西淳二

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