1. トップ
  2. ライフスタイル
  3. ストレスが溜まると「道に迷いやすくなる」と判明

ストレスが溜まると「道に迷いやすくなる」と判明

  • 2026.3.23
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

街中を歩いていて「あれ、今どこだっけ?」と、居場所がよくわからなくなった経験はありませんか?

特に、その経験が最近多くなったという人は、ストレスが溜まっているのかもしれません。

独ルール大学ボーフム(RUB)の最新研究で、ストレスが高まると人は道に迷いやすくなることが明らかになりました。

その原因は一体何なのでしょうか?

研究の詳細は2026年3月12日付で学術誌『PLOS Biology』に掲載されています。

目次

  • 私たちの脳内にある「内部GPS」とは?
  • ストレスで「脳内地図」が壊れていた

私たちの脳内にある「内部GPS」とは?

今回の研究の焦点となったのは、研究者が「内部GPS」と呼ぶ、脳内のナビゲーションシステムです。

私たちは普段、目印がない場所でも、自分がどの方向にどれくらい移動したかをもとに現在地を推定しています。

この能力は「経路統合(けいろとうごう)」と呼ばれ、主に、内嗅皮質(ないきゅうひしつ)という脳領域が担っています。

内嗅皮質には「グリッド細胞」と呼ばれる神経細胞があり、これらは空間を格子状に区切るように活動します。

この働きによって、私たちはあたかも地図を見ているかのように、自分の位置を把握できるのです。

今回の研究では、健康な成人男性40人を対象に、コルチゾール(ストレスホルモン)を投与した場合と、プラセボ(偽薬)を与えた場合を比較しました。

参加者は仮想空間の中で移動し、見つけたリンゴを持って元の場所へ最短距離で戻るという課題に取り組みます。

このとき、研究者たちはfMRI(機能的磁気共鳴画像法)を使って脳の活動も同時に測定しました。

ストレスで「脳内地図」が壊れていた

実験の結果は明確でした。

コルチゾールを投与された状態では、参加者のナビゲーション能力が大きく低下していたのです。

目印がある場合でもない場合でも、この傾向は変わりませんでした。

さらに重要なのは、脳の中で何が起きていたかです。

通常(プラセボ条件)では、内嗅皮質において「グリッド状の活動パターン」が観察されました。

これはグリッド細胞が規則正しく働いていることを示し、脳内で空間が地図のように表現されている状態です。

しかしコルチゾールを投与すると、このグリッド状の活動が弱まっていました。

つまりストレスは、単に注意力を下げるのではなく、空間そのものを把握するための神経システムを直接乱してしまうのです。

その結果、脳は内部GPSをうまく使えなくなり、代わりに目印や習慣に頼った「不正確なナビゲーション」に切り替わると考えられています。

言い換えれば、ストレスが高いときには、私たちは「地図を見ている状態」から「なんとなくの記憶に頼る状態」へと切り替わってしまうのです。

「ストレスで頭が真っ白になる」という表現がありますが、それは単なる比喩ではなく、脳の中で実際に起きている現象なのかもしれません。

今回の研究は、ストレスが私たちの認知能力に与える影響を、脳の仕組みレベルで示した重要な成果です。

もし初めての場所で道に迷いたくないなら、地図アプリだけでなく、自分のコンディションにも目を向ける必要がありそうです。

参考文献

Do You Get Lost When You’re Stressed? Blame Cortisol
https://www.psychologytoday.com/us/blog/the-asymmetric-brain/202603/do-you-get-lost-when-youre-stressed-blame-cortisol

元論文

Cortisol treatment impairs path integration and alters grid-like representations in the male human entorhinal cortex
https://doi.org/10.1371/journal.pbio.3003661

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

元記事で読む
の記事をもっとみる