1. トップ
  2. 恋愛
  3. 「病気、痛み、相撲」って渋すぎ!? 久保ミツロウ×能町みね子×ヒャダイン、こじらせ中年トークが最高にクセになる【書評】

「病気、痛み、相撲」って渋すぎ!? 久保ミツロウ×能町みね子×ヒャダイン、こじらせ中年トークが最高にクセになる【書評】

  • 2026.3.11
かわいい中年 久保ミツロウ・能町みね子・ヒャダイン / 中央公論新社
かわいい中年 久保ミツロウ・能町みね子・ヒャダイン / 中央公論新社

この記事の画像を見る

なんとなく誰かと話したいな、という気分のときがある。別にかしこまった話じゃなくていい、昨日食べたコンビニスイーツが美味しかった、みたいな適当な話だ。そんなとき、学生時代は何も考えず、隣で授業を受けている友達を誘ってファミレスに行ったりしていた。でも社会人になってからは、友達を誘うにもお互いの休日の予定をすり合わせて、ずっと先の約束をするのが当たり前になってしまって、気がつけば「適当な話をダラダラとする」ことのハードルがぐんと上がってしまった。それがたまに寂しくなる。

そんな寂しさを抱えながら手に取った、久保ミツロウ氏、能町みね子氏、ヒャダイン氏の3人の鼎談をまとめた『かわいい中年』(中央公論新社)には、そんな自分の「無軌道に友達と、その瞬間に話したいことを話す」という求めていた光景があった。

この鼎談集は、テレビ番組『久保みねヒャダこじらせナイト』のアフタートークをまとめた書籍である。当番組はゲストを招きながらさまざまな企画を行うバラエティ番組だ。しかしこの書籍はそういった番組企画とは関係なく(時折、番組内容に触れる会話があるが、その際は丁寧な補足が入っている)、中年期に入った仲良し3人がただただ雑談をしているだけの内容なので番組自体を観たことがない人も十分楽しめる書籍になっている。

まず、目次を見ただけでとても魅力的な本であることがわかる。「大人はちゃんとした工程を経ないと友達に会えない」「旅行を老後に取っておくのはコスパが悪い」「関西人はなぜ東京でも関西弁を話し続けるのか?」……なんだろう、このワクワクする感じは。思わず読む前から、「わかるわかる、会えなくなるよね」「やっぱり旅行は行きたいときに行くべきだよね」とつい自分まで話したくなってしまう。

『かわいい中年』目次
『かわいい中年』目次

3人の会話も、絶妙なゆるさが良い。仲がいいんだろうな、というのが会話の無軌道さからも伝わってくる。誰もテーマやトピックに沿って面白い話をしようと意気込んでいる感じじゃないのに、出てくるエピソードがどれも面白くて笑ってしまう。ヒャダイン氏と久保ミツロウ氏が最近はまっている相撲部屋「二子山部屋」の話なんて、相撲に全く興味がなかったはずの自分まで前のめりに読んでいるのに気づく。気がつけば読み終わったあとに二子山部屋のYouTubeの動画を見始めている始末である。

引用----

久保 とりとめもなく話したけど、今日の話はどんなテーマだったんだろうね。

能町 病気と相撲の話。

久保 病気、痛み、相撲。

一同 (笑)

ヒャダ もう我々、話題が全部シルバーじゃないですか。

----

老眼から始まり、相撲や病気、犬の散歩中に出会う犬友達や昭和の頃の思い出、出てくる話題はシルバーっぽいのだが、不思議と哀愁は全くなく、そういう話題を楽しそうに話す3人はたしかに「かわいい中年」という表現がピッタリだ。

また、久保ミツロウ氏が愛犬のりゅうちゃんの散歩をしながら、犬を飼っていない友人と一緒に散歩をしていたときの話も印象的だった。散歩しながら話すのは、面と向かってダラダラと話すのとは質感が違う、というのが久保氏の話だった。

引用----

――目線を合わせずに、二人とも同じ方向を見てるから

久保 そう、ずっと同じ方向を見ながら話すんだよね。あと、目に入ってきたものについて話したり。「この家の表札、面白いよね」とか、「こんなに池袋から離れてるのに、よくアパート名に『池袋』って付けるよね」とか。深い話をしようと思わずに、そういう外堀の話からふいに深い話に行ったりして。けっこう新鮮でしたね。

----

この部分を読みながら、状況は違うのかもしれないが、一読者としてこの本を読んでいるときの感覚に近いものがあった。3人が話している内容を目で追いながら、気づくと自分も頭の中であーだこーだと考えている。意味のある会話をしようとしているわけじゃないのに、たまにハッとするような気づきがあったりする。その心地のいい時間が、この本の中にはある。自分もこんな中年になりたいな、と思ってしまう。友達と気軽に会えなくなった寂しさはあるけど、この本を面白いと思えるのもまた、そこそこいい歳になった良さなのかもしれない。番組や彼らのファンはもちろん、中年期、もしくは中年期にさしかかるすべての人々にお勧めしたくなる一冊だ。

文=園田もなか

元記事で読む
の記事をもっとみる