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「フェミニストであるために、あえて質素な装いをする必要はない」──グロリア・スタイネムに学ぶ、ファッションとフェミニズムの共存

  • 2026.3.6
Gloria Steinem Speaks At Rally

グロリア・スタイネムほど、心からクールだと言える女性がこれまでにいただろうか? 世界で最も象徴的なフェミニストとも言える彼女は、3月25日に92歳の誕生日を迎える。コンチョベルトにアビエーターサングラス、ときにはスパンコールやレザーを取り入れたユニフォームで現れたときの、あの言葉にしがたい存在感はいまも健在だ。

ご存じのとおり、スタイネムは1960年代、当時としてはまだ新しかった避妊やジェンダー平等といったテーマを扱うジャーナリストとして頭角を現した。1963年には、『Show magazine』に依頼され、プレイボーイ・バニーとして潜入取材を行い、ニューヨークのカクテルクラブにおける女性たちの衝撃的な労働環境を暴く2部作のルポを発表した。1972年には、画期的なフェミニスト雑誌『Ms.』を共同創刊。その後も、「National Women's Political Caucus」の共同設立に携わり、女性の中絶の権利や賃金格差の是正を求める法整備のために闘うなど、現代を代表する政治アクティビストの一人となっていった。彼女は紛れもなく、女性運動の主要なリーダーの一人である。

だが、長年にわたり議論されてきた彼女の装いについても語ってみよう。グロリア・スタイネムは当初から、従来とはまったく異なるタイプのスタイルアイコンとしての地位を確立した。1950年代から60年代初頭にかけてジャクリーン・ケネディが流行させた、きちんとコーディネートされた上品なスーツにアクセサリーというスタイルではなく、スタイネムは女性たちに新しいドレスコードを提示した。体にフィットしたヘンリーネックのシャツとフレアジーンズにローライズのベルトを合わせたり、スエードのミニスカートにニーハイブーツやメリージェーンを合わせたりしながら、自らのメッセージを発信したのだ。大ぶりのジュエリーやハイライトを入れたヘアスタイル、大胆なスローガンピンバッジもしばしば見られた。

彼女の装いはリラックスした若々しい印象を与えながらも、1960年代から70年代にかけての性革命(Sexual Revolution)という時代背景を踏まえると、明確な意図を感じさせるものでもあった。そして人々は、そうした彼女のスタイルに夢中になったのだ。

Shirley Chisolm Party - New York
Women's Strike for equality
Gloria Steinem Attends Rally
Gloria Steinem in East Hampton in 1970

「スタイネムが登場した当初、彼女はミニスカートを履き、とても“フェミニン”な見た目をしていました」と語るのは、歴史家であり『Dressed for Freedom: The Fashionable Politics of American Feminism』の著者、そしてケース・ウェスタン・リザーブ大学の講師であるエイナヴ・ラビノヴィッチ・フォックスだ。彼女は『Glamour』の取材に対し、こう述べている。「髪を独特の分け方にし、アビエーターサングラスをかけていた彼女のルックは国民的なトレンドとなり、誰もが彼女のようになりたがったのです。彼女は新しいロールモデルになりました」

スタイネムは1971年、「The New Woman(新しい女性)」という見出しとともに『ニューズウィーク』の表紙を飾った。誌面には、ボリュームのあるヘアスタイルにアビエーターサングラスをかけた、彼女そっくりの女性たちの写真も掲載されていた。

スタイネムの長年の友人であるファッションデザイナーのダイアン フォン ファステンバーグは、『Glamour』の取材に対しこう語っている。「若かりし頃の1970年代のニューヨークでは、グロリア・スタイネムは私のヒーローの一人でした。彼女は本当に美しく、とてもスタイルがあったのです」

スタイネムは自らの道を描く一方で、形を変えながらも今日に至るまで続いている、ある議論の交差点にも立たされていた。それは、「フェミニストでありながら装いに強い関心を持つことは可能なのか」という問いである。

1988年、スタイネムとダイアン フォン ファステンバーグ
Metropolitan Home Showhouse Design Industry Foundation1988年、スタイネムとダイアン フォン ファステンバーグ

フェミニズムとファッションは、歴史的に見ても複雑な関係にある。ファッションは家父長制による支配やジェンダー規範を強化する手段なのか、それとも自己表現の手段なのか。他者を喜ばせるための道具なのか、それとも好かれるかどうかに関係なく、自分が何者であるかを世界に伝える力強い方法なのか。服に自分の価値を委ねるのか、それとも自らが価値があると思うメッセージをさらに広めるための手段として衣服を用いるのか。

政治の表舞台に立つ女性たちにとって、こうした問いは止めどなく突きつけられる。ヒラリー・クリントンはファーストレディになった当初、あまりに「時代遅れ」な服装だと批判され、その後は彼女のパンツスーツが世界的に注目を集め、嘲笑の対象となった。米下院議員のアレクサンドリア・オカシオ=コルテスも、2020年に『Vanity Fair』の表紙に登場し、ニューヨークを拠点とするラグジュアリーブランド・アリエット(Aliétte)による、推定1,000ドルのアイボリーのシルクウールスーツを着用していたことから、「服に気を使いすぎている」と批判を受けた。やっても非難され、やらなくても非難されるのだ。

グロリア・スタイネムもまた、その華やかなイメージゆえに女性運動へのコミットメントを疑問視されてきた。しかし、その疑念は本質を見誤っているようにも思える。彼女の生涯にわたる仕事は、女性が自らの選択で行動できるのだと主張し続けることだったからだ。そして彼女自身、「自分のためである限り、服を好きでいてもいい」と語っている。

2011年のHBO制作のドキュメンタリー『Gloria: In Her Own Words』で彼女はこう述べた。「かつてのファッションは、順応し、自分自身を失うことを意味していました。けれど、今のファッションはユニークであること、そして自分自身を見つけることを意味しているのです」

NY: Portrait Session With Gloria Steinem
50th Birthday Party for Gloria Steinem

「世界で一番のフェミニストでありながら、彼女はセクシーなドレスを着ているのです」と、ダイアン フォン ファステンバーグは言う。「彼女は、魅力的であることとフェミニストであることは両立できるのだと示しました。『フェミニストであるために、あえて質素な装いをする必要はない』と言ったのです」

同時に、グロリア・スタイネムは意識的または無意識的に、ファッションを自らの活動を前進させるために活用してきた。築き上げたイメージがなければ、彼女はあれほどの政治的・メディア的影響力を持つ存在へと変貌しただろうか。

「スタイネムは、ファッションを拒絶すべきだと主張するフェミニストではありません。むしろ、それを活用して政治家の注意を引き、かれらに私たちの声を聞かせることができると言っているのです」と、エイナヴ・ラビノヴィッチ・フォックスは述べている。

それは何十年にもわたって受け継がれてきたレガシーだ。目を凝らさなくても、私たちは現在のファッショントレンドや今日のファッション業界のなかに、グロリア・スタイネムの痕跡を見ることができる。

デザイナーのマイケル・コースは、2023-24年秋冬コレクションの直接のインスピレーション源としてスタイネムを挙げ、ローライズのベルトやアビエーターサングラス、オーバーサイズのジュエリーを多用した。1970年代風のフレアジーンズやマイクロミニの復活も本格化しており、クロエ(CHLOÉ)のようなメゾンでもその流れが見られる。また、デザイナーたちはますますファッションショーをアクティビズムの発信の場として活用するようになっていた。たとえばプラバル・グルン(PRABAL GURUNG)は、2025年春夏のランウェイで投票を呼びかけた。

NYコレクションにて、マイケル・コース(MICHAEL KORSS)2023-24年秋冬コレクションのランウェイに出席するステイサム<br />
Michael Kors Collection Fall/Winter 2023 Runway Show - Front Row

さらに、アクティビストたちは組織運営とファッションの接続において、いまもグロリア・スタイネムの足跡をたどり続けている。

「スタイネムのアプローチは、同世代の女性たちにファッションを反抗や自己表現の手段として使うことを促し、今日においても衣服と社会運動を結びつける方法に影響を与えています」と、CFDA(アメリカファッション協議会)のCEOであるスティーブン・コルブは語る。CFDAは2017年、スタイネムに「ボード・オブ・ディレクターズ・スペシャル・トリンビュート」を授与している。

この影響は、近年の米下院民主党議員が女性の権利を支持し、女性参政権運動への敬意を表すために一般教書演説で白を着用する場面にも表れている。「スタイネムの遺産は、ファッションが社会変革を促す強力な手段になり得ることを示しており、平等、個性、そしてアクティビズムという価値を体現しています」とコルブは述べた。

Steinem at the the 2017 CFDA Fashion Awards
gloria-steinemSteinem at the the 2017 CFDA Fashion Awards

グロリア・スタイネムのスタイルの影響は、彼女が流行させた具体的なアイテムの枠を超えて広がっていくだろう。「スタイネムについて考えるときに、“選択”という概念は非常に重要です。そして、それはファッションにも表れています。自分がなりたい自分を選び、何を着るかも自由に選べるということ。フェミニンなフェミニストであってもいいし、そうでなくてもいい。それで問題ないのです」とエイナヴ・ラビノヴィッチ・フォックスは語る。

「これは彼女の遺産であり、女性にとって選択の自由がいかに重要かというメッセージです。自分の身体についての選択、服装についての選択、働く環境についての選択。自分には当然選ぶ権利があり、その選択を批判されるべきではないのです」

Text: Leah Bourne Adaptation: Hanae Iwasaki

From Glamour

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