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物静かなお嬢様にぶつける、執事の偏執的な愛情表現がクセになる! すこし不穏な純愛系コメディ『ミカヅキのお嬢様備忘録』【書評】

  • 2026.3.3

【漫画】本編を読む

これを純愛と呼んでよいのか、ちょっとはばかられるような気もするが――。

『ミカヅキのお嬢様備忘録』(せかねこ/KADOKAWA)は、『ほむら先生はたぶんモテない』(KADOKAWA)のせかねこ氏が自身初のフルカラーで描く最新作。物静かな女子高生のお嬢様と、彼女を偏執的に愛する執事を中心に描かれる、ささやかな日常と強い執着が交差するラブコメディだ。

豪邸に暮らすお嬢様と、執事・ミカヅキ。お嬢様が踏んだ石、髪についたホコリ、食べ残したクリーム、入ったあとの風呂の湯……。お嬢様のすべてを愛し、すべてを知りたい(食べたい)ミカヅキは、過保護で変態的な愛をぶつけ続ける。ミカヅキのお嬢様に対する過剰な関心と偏執的な愛情表現は、笑いを誘いつつも同時に不穏さが常につきまとう。

お嬢様もまた、ミカヅキを「拒絶しない」ことについてはむしろ変態的かもしれない。彼女はミカヅキに何をされても、逃げもしないし怯えもしない。多くを語らず、感情を激しく表に出すこともない。むしろ「かわいいやつ」として、淡々と、ある種の信頼のもとその言動を受け入れている。

このふたりの関係が成り立つ理由は、“とある秘密”にある。ここでは明かせないが、互いに打ち明けられていない事実や、ふたりの幼い頃の記憶に関わる秘密が作中に描かれるほのぼのとした日常のなかに、ほんのちょっとミステリアスなスパイスを加えつつ、ラブコメとして独特の空気感を醸し出している。

さらに読み進めると、ミカヅキの偏愛行動をテンポよくたしなめるメイドや、お嬢様との距離を縮めてくる同級生など、ふたりを取り巻く人物も登場。奇妙な関係にほのかな波紋を落としながら、日常系純愛コメディの皮をかぶった不穏な物語はさらに加速していく。その中毒性のある展開に、気づけば読者もまた「偏執的な」ファンになってしまう……かもしれない。

文=富野安彦

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