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柄本明が語る『レンタル・ファミリー』で結んだブレンダン・フレイザーとの絆「緊張感を持ちながらも探求し、楽しむことができた」

  • 2026.3.1

オスカー俳優のブレンダン・フレイザーが主演し、日本人監督のHIKARIがオール日本ロケで完成させた“ハリウッド映画”の『レンタル・ファミリー』(公開中)。舞台となった日本でも公開が始まり、感動の輪が広がっている。

【写真を見る】ブレンダン・フレイザー主演、オール日本ロケのハリウッド映画『レンタル・ファミリー』

【写真を見る】ブレンダン・フレイザー主演、オール日本ロケのハリウッド映画『レンタル・ファミリー』 [c]2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
【写真を見る】ブレンダン・フレイザー主演、オール日本ロケのハリウッド映画『レンタル・ファミリー』 [c]2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

7年間、東京で生活するアメリカ人俳優のフィリップが、“レンタル家族”の仕事と出会う物語。クライアントの家族や友人になりきるうちに、フィリップの人生も大きく変わっていくのだが、そこで彼が大きな影響を受けるのが、日本の国民的名優といわれる長谷川喜久雄だ。その喜久雄を演じているのが、文字どおり日本を代表する俳優の一人、柄本明。初のハリウッド映画で、英語のセリフも多い役に、どのような思いで挑んだのかを聞いた。

「喜久雄のセリフと闘いながら、その人物を探す旅に出る」

“レンタル家族”として働くフィリップ(フレイザー)に大きな影響を与える国民的名優、喜久雄役を務めた柄本 [c]2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
“レンタル家族”として働くフィリップ(フレイザー)に大きな影響を与える国民的名優、喜久雄役を務めた柄本 [c]2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

まず『レンタル・ファミリー』に関わったきっかけを聞くと、「HIKARI監督のオーディションを受けました」と打ち明ける。柄本明ほどの俳優がオーディションに臨むというのも意外だが、本人にとっても稀なケースだったのだろうか。

「いや、これまでも何度かオーディションを受けています。だいたい落ちていたんじゃないかな(笑)。この仕事は、需要と供給で成り立っていますから、そんなもんです。今回はオーディションの話をうかがって、初めてHIKARI監督と会い、英語のセリフなどにも挑戦しました。英語は、実際にはほとんど話せないんですけどね」。

大阪出身で現在はハリウッドを拠点に活躍するHIKARI監督。初対面での印象について「元気でパワフル。とてもパッションに溢れた人。まさに“大阪のお姉さん”」と柄本はうれしそうに振り返る。

『37セカンズ』(19)のHIKARI監督がメガホンをとった [c]2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
『37セカンズ』(19)のHIKARI監督がメガホンをとった [c]2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

柄本が演じる喜久雄は、時代劇などで一世を風靡した大スター。ただし、すでに世の中から忘れ去られている存在でもあり、そんな彼を元気づけようと、取材をする外国人ジャーナリストの役回りをフィリップが任される。過去に偉大なキャリアを積み上げた名優という役に、柄本はどのようにアプローチしたのか。

「とにかく脚本に書かれているセリフに忠実に向き合うだけです。あらかじめ『こう演じよう』というのは、あまり考えません。HIKARI監督からも特に注文はありませんでした。ですから喜久雄のセリフと闘いながら、その人物を探す旅に出るわけです。僕は家族ぐるみで映画ファンなので、古くは東映時代劇全盛の時代から、(市川)右太衛門さん、(片岡)千恵蔵さん、大河内傳次郎さん、阪妻さん(阪東妻三郎)の映画に親しんできました。そういったスターが喜久雄役に無意識に反映されたかもしれません。ただ、特定の誰かを参考にしたわけではないです」

喜久雄を「探す旅」に出たという柄本。この喜久雄は時として記憶が曖昧になったり、理解できない行動をとったりするが、そういった難しい演技も「これまでの演技の経験、あるいは先人の方々の実績もふまえ、瞬間、瞬間に生まれるもので挑んだ」と、柄本は冷静に振り返る。

日米の名優が奏でる、年齢や文化を超えた温かな絆 [c]2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
日米の名優が奏でる、年齢や文化を超えた温かな絆 [c]2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

そんな柄本にとっても『レンタル・ファミリー』で最大のチャレンジとなったのは、オーディションの部分でも打ち明けていたように英語のセリフであった。

「英語は苦労しましたね。発音の際に舌をどんな形にすればいいかなど、難しいことも多かったので、レッスンを重ねました。日本語のセリフと違って、感情をどう乗せていいのかも自信がなく、そのあたりはHIKARI監督を含め、英語をわかる方々が、僕の英語でおかしくないところをうまくチョイスしてくれたんだと思います」

「ブレンダンさんは人間として“大きい”方で、とてもまじめ」

柄本明が登場するシーンの多くで、彼の横にいるのがフィリップ役のブレンダン・フレイザー。『ザ・ホエール』(22)でアカデミー賞主演男優賞を受賞した彼は、共演の柄本明を「イアン・マッケランのよう」と讃えていたが(フレイザーとマッケランは『ゴッド・アンド・モンスター』で共演)、柄本から見てオスカー俳優の彼はどんな印象だったのか。

フィリップはかつてのスターを取材する記者を装い、喜久雄の傍らに立つことに [c]2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
フィリップはかつてのスターを取材する記者を装い、喜久雄の傍らに立つことに [c]2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

「ブレンダンさんは見かけも大きいですが、人間としても“大きい”方で、とてもまじめ。地に足がついた感じで、決して偉そうな態度はとらず、誰とでもフランクに接していました。声質も柔らかいので、一緒に演じていてとても気持ちが良かったです。ベタな言い方ですが、芝居がうまいんですよ」。

喜久雄とフィリップのエピソードは熊本、天草でも撮影され、「シリアスな部分でしたし、(日が暮れるまでの)時間どおりに終わらせるため、僕だけじゃなくキャスト、スタッフ全員、大変だった」と柄本が語るように、ふたりの名優によるエモーショナルなシーンは本作の見どころになっている。

柄本にとって、これほど多くの英語セリフをこなすのはキャリア初の挑戦だった [c]2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
柄本にとって、これほど多くの英語セリフをこなすのはキャリア初の挑戦だった [c]2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

このように母国語が異なる共演者とも、普段の現場と同じように信頼の絆で結ばれたことがうかがえるが、一方で“ハリウッド映画”の撮影現場ということで、普段とは違う環境を体験できたのも、これまた事実のようだ。

「まず現場の人数が圧倒的に多いですし、当然ながら英語が飛び交っているわけです。そうした状況に自分が身を置いて、どのような演技ができるのか。日本では映画でもテレビでも、だいたいどのような段取りになるのか理解できます。今回は慣れていない環境で、しかも英語のセリフで、緊張感を持ちながらも探求し、楽しめたんじゃないでしょうか」。

「俳優としての野心や欲望には“戸を立てられない”」

新たな現場、これまでにないチャレンジを経験したことで、俳優としての野心も高まったのではないか。そんな問いに、柄本明は穏やかな表情で答える。

「野心はあります。今回の『レンタル・ファミリー』に限らず、俳優としての野心や欲望には、残念ながら“戸を立てられない”ですから。年齢は関係ありませんね。HIKARI監督の作品にもまた出たいと思いますが、僕が望んでいるだけで向こうはどう考えているか…(笑)。あらゆるオファーに対し、平等に『ありがたい』と受け入れる。そういうスタンスでこの仕事を続けられることが、いちばんの野心かもしれません」。

フィリップと喜久雄がたどり着く、嘘を超えた絆とは? [c]2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
フィリップと喜久雄がたどり着く、嘘を超えた絆とは? [c]2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

最後に、この『レンタル・ファミリー』の物語をどうアピールするかを聞いてみた。

「映画は楽しいもの、愛らしいものであるべき。その意味で、HIKARI監督とブレンダンによって愛しい作品になっていると思います。この世の中では人それぞれ、なにかしらの寂しさを感じながら生きているわけで、共感を呼ぶ映画だと実感します。観ている人が温かい気持ちになってほしいですね」。

柄本明の希望どおり、一本の映画が日本全体を“温かく”包んでほしい。そして、その温かさを誰かと共有したくなる。それこそが『レンタル・ファミリー』の魅力だ。

取材・文/斉藤博昭

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