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マルニのファンとして描く、メリル・ロッゲのビジョン【2026-27年秋冬 ミラノコレクション】

  • 2026.2.27

ブランドには、オーラというものがある。それにカルマ(業)も積む。それらは創設者や1、2シーズン指揮を執ったデザイナーが去ってからも、長く残り続けていく。マルニMARNI)は誕生初日から奇異なオーラを放ち、ミラノのモダニズムに根ざした、独特ながらも毅然とした精神を貫いてきた。そして、コンスエロ・カスティリオーニによって創立され、在任中にフランチェスコ・リッソがその感性豊かな表現力で再解釈したメゾンは、再び女性デザイナーの手に委ねられた。蓄積されたカルマがもたらした結果なのか、宇宙がマルニを本来のあるべき姿に戻そうとしているように感じる。

「10代のころからマルニのファンです。私のファッションのビジョンを形作ったメゾンです」と、新たに指揮を任された、若手ベルギー人デザイナーのメリル・ロッゲは言う。マルニは、実に多くの人から愛されている。フェミニンなエネルギーと洗練された癖を持ち合わせたブランドとして、長い間、知的でクリエイティブ志向の女性たちを魅了してきており、ロッゲもそのうちのひとりだ。

ロッゲはメゾンと、どこかパーソナルなつながりがあるように思う。それゆえに、彼女はマルニらしさを瞬時に、そして直感的に掴み、母語を話すような流暢さでメゾンの言語を理解する。また、現在も創設デザイナーとして率いている自身の名を冠したブランドとマルニの間には、美しい親和性がある。ともに芸術的なウィットに富んでおり、表情豊かで奇抜な感性を宿す。実用性や快適性、着心地の良さといった、ファッションデザインにおける地味に大切な面も疎かにしない。

どの新任デザイナーも、どこかのタイミングでメゾンのアーカイブを掘り下げなければならず、ロッゲも例外ではない。アーカイブを漁ることで、自分自身とマルニとのつながりをさらに強く感じた彼女は、メゾンの初期のコレクションが保存されたハードドライブを見つけた。それは長い間忘れられてたもので、あいにくどのコレクションも『VOGUE RUNWAY』にあがっていない。

何が印象的かというと、1993年に発表されたこれらのコレクションには、全く色が使われていないことだ。カラーは白、黒、ブラウン、グレーのみで、最初の3シーズンはプリントも、装飾も、無駄な要素もなく、純粋に素材とフォルムを大切にしている。おおよそマルニらしくないこの慎ましさは、この日、ロッゲが披露したデビューコレクションに再び現れた。くすんだトーンのバランスを取るように黒が多用され、時折パステルやビビッドカラーがアクセントとして用いられている。控えめでありながら、効果を十分に発揮する色使いだ。

ロッゲはまた、1996年ごろや、1990年代後半から2000年代初頭にかけて発表された、お気に入りのコレクションにも立ち返った。「いまだに、驚くほど新鮮に映ります」と彼女は言う。「アーカイブからピースを引っ張り出してきて、試着してみたんです。現代にも通ずるものはどれかと考えながら」。最終的に彼女はプロポーションに行き着いた。フィットしたショルダー、ゆるく絞られたウエスト、膝丈のスカート。身体のラインに沿う90年代のピースは紛れなくモダンだ。「ウエスト位置がやや低いスカートを見たとき、これだと思いました」とロッゲは説明する。その細身で清楚なシルエットをベースにすることが決まると、あとはさまざまな形で打ち出すのみだった。そしてランウェイにはあらゆるバリエーションが登場。確かな基盤を築き、次なるマルニを作り上げていく心構えができた、ロッゲというデザイナーの自信が感じられた。

ロッゲのマルニはほのかにパンクだ。それは、度を過ぎて甘いガーリーなものや、かわいらしさのみを追求したものを嫌った創設者の好みを反映している。「全部、少しタフにしました」とロッゲは言う。コレクション全体を通して取り入れられたハードウェアは、機能的でありながら装飾としての役割も担っており、留め具やスタッズにデザイン性をもたらしていた。

昔からマルニのシグネチャーであるファーテクスチャーは、シアリングやヤギの毛のコートとして再解釈。メゾンを象徴するプリントも再考された。ストライプ柄を前面に押し出したルックや、ドット柄のスカートにトップ。ドットはゆるく取り付けられた円盤として表現され、モデルが一歩進むごとにジャラジャラと音を立てながら揺れる。グラフィックなフローラル柄は変わらずシャープでモダニズム風で、そこには甘さも、軽やかさも、やわらかさもない。装飾は一貫してアーティスティックで、昔から人々を惹きつけてきたマルニの幻想的な一面を踏襲している。

根幹にあるコードを再考することで、メゾンの言語に最も精通している、真のマルニ信者になら瞬時に伝わるマルニらしさをさりげなく落とし込むことができた、とロッゲは語る。昔のマルニを知らない、若い世代の人には気づかなれないかもしれないと彼女は言うが、今も鮮度は落ちていない。

「マルニが描く女性像は、強く、自律的です。キャリアがあり、家族と友人に囲まれていて、アートカルチャーに心から興味がある女性です」とロッゲ。それは、男性像も同じだと言う。「ファッションに興味を持っているものの、それがアイデンティティのすべてではない。マルニ好きというポーズを取っているのではなく、マルニを着て人生を謳歌しているような男性です」。ロッゲによれば、こういった人物像を軸に据えていることこそが、マルニを存在感と魅力あるブランドであり続けさせている。

「コンスエロのマルニを一番うまく表現できるのはコンスエロだ、といつも言っています」とロッゲは語る。「私のマルニが、最初から別物になることは決まっていました。それは、私が別の人間だからというだけではなく、時代が変わったからです。なにしろ、今は2026年なのですから」

※マルニ 2026-27年秋冬コレクションをすべて見る。

Text: Tiziana Cardini Adaptation: Anzu Kawano

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