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「安定して受け取れる」退職金2,200万円を“分割”受け取り→20年後、60代男性を待ち受ける“250万円”の盲点【お金のプロが見た】

  • 2026.3.27
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

老後資金の相談対応などを行っているマネーシップス代表の石坂です。退職金は老後資金の柱として考えられることが多く、「まとまったお金が入るので安心」と感じる方も少なくありません。一方で、受け取り方によって税金の扱いが大きく変わるため、選択次第で手取り額に差が出ることがあります。

今回は、実際の相談事例をもとに、退職金で見落とされやすい税金のポイントを紹介します。

「同じ2,200万円でも手取りが変わる」退職金の受け取り方で差が出た実例

相談に来られたのは、60歳で定年を迎えた会社員の男性です。退職金は2,200万円でした。

面談の中で、「会社からは受け取り方を2つ提示されている」と話されました。

  • 一時金でまとめて受け取る方法
  • 年金形式で分割して受け取る方法

すでに「安定して受け取れる方が安心」と考え、年金形式を選ぶつもりで手続きを進めている段階でした。

内容を確認すると、年間110万円ずつ20年にわたって受け取る設計です。一見すると計画的でリスクが少ないように見えますが、ここで税金の扱いについて改めて整理しました。

まず、一時金で受け取る場合です。勤続35年であれば退職所得控除は約1,850万円となり、2,200万円のうち課税対象となるのは約350万円です。さらに退職所得はその半分のみが課税対象となるため、実際に税金がかかるのは約175万円分にとどまります。

この前提で計算すると、所得税と住民税を合わせた負担は数十万円程度に収まる水準でした。

一方で、年金形式で受け取る場合は扱いが変わります。毎年受け取る110万円は雑所得となり、公的年金などの収入と合算されて課税対象になります。

この点を説明すると、「分割でもそこまで変わらないと思っていた」と驚かれていました。

実際に試算を行ったところ、一時金で受け取った場合と比べて、年金形式ではトータルの税負担が増え、最終的な手取り額で約250万円の差が出る見込みでした。

この結果を踏まえ、「安心だと思って選ぼうとしていた方法が、結果的には不利になる可能性がある」と気づかれ、改めて受け取り方を検討し直すことになりました。

「分割なら安心」が手取り減につながる理由

年金形式の受け取りは、毎年一定額を受け取れるため安心感があります。そのため、「分割して受け取る方が計画的」と考える方も多く見られます。

ただし、今回のケースでもそうでしたが、その判断の中で税制の違いまで考慮されていないことは少なくありません。

退職金は、一時金で受け取る場合には特別な優遇措置が設けられています。具体的には、退職所得控除が適用されることに加え、課税対象となる金額が1/2に圧縮される仕組みがあります。このため、他の所得と比べて税負担が大きく軽減される設計になっています。

一方で、年金形式で受け取る場合は通常の所得と同じ扱いとなり、毎年の受取額が課税対象になります。さらに、公的年金など他の収入と合算されることで所得が増え、結果として税率が上がる可能性もあります。

こうした違いは見落とされやすく、相談の現場でも「分割の方が安心だと思っていた」「税金は大きく変わらないと思っていた」という声は多く見られます。

損を防ぐために押さえておきたい退職金の受け取り方

退職金は金額が大きいため、受け取り方の選択がその後の資金計画に大きく影響します。

まず重要なのは、比較の基準です。

  • 額面ではなく「手取り」で比較する
  • 一時金と分割の総額を試算する

この視点がないと、見た目の安心感で判断してしまいます。次に、自身の収入状況との関係です。

公的年金との合算、その他収入とのバランスを考慮しないと、想定以上に税負担が増える可能性があります。

また、一時金で受け取る場合でも、その後の資金管理が重要です。

  • 生活費として使う分
  • 予備資金として残す分
  • 将来に向けて活用する分

など、用途を分けて管理することで、資金を有効に活用できます。

退職金は「受け取るまで」ではなく、「受け取った後」まで含めて設計することが大切です。