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「本人に任せる」“子どものアルバイト年収”管理しなかった親の末路…→ある日、給与明細を襲う“思わぬ損失”【社労士が解説】

  • 2026.3.25
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

特に2025年(令和7年)の税制改正により、扶養控除の仕組みには大きな変化がありました。制度の変更に気づかず、「子どもに任せていたから大丈夫」と放置してしまうと、思わぬ形で家計にダメージが及ぶ可能性があります。

今回は、社会労務士の現場で数多くの家庭を見てきた「あゆ実社労士事務所」さんに、最新の制度と、親子でトラブルを未然に防ぐための具体的な対策についてお話を伺いました。制度の現状を正しく把握し、家族にとって最適な働き方を考えるためのヒントをお届けします。

扶養控除はどう変わった?2025年改正のポイントと「社会保険の壁」

---2025年の税制改正により扶養控除の枠組みが大きく変わったと聞きました。具体的に何がどのように変わったのでしょうか?

あゆ実社労士事務所:

「子どもが一生懸命アルバイトで稼いでくれているのは嬉しいと感じる親は多いのではないでしょうか。でも年末に向けて「実はもう扶養を外れていたかもしれない」と青ざめる親御さんは、人事の仕事をしていると決して珍しくないと感じています。

この仕組みを理解するうえで欠かせないのが、「扶養控除」という制度です。税制上、19歳以上23歳未満の子どもを扶養している親は「特定扶養親族」として、所得から63万円を控除できます。これが親の税負担を大きく下げる役割を担っています。かつては子どもの給与年収が103万円を超えるとこの控除が受けられなくなる、いわゆる「103万円の壁」が問題視されていました。

ただし、2025年(令和7年)の税制改正によって、この枠組みは大きく変わりました。今回の改正で新設された「特定親族特別控除」により、19歳から22歳の子どもであれば、給与年収150万円まで親は従来と同じ63万円の控除を受けられるようになりました。さらに150万円を超えた場合でも、控除額がすぐにゼロになるのではなく、188万円まで段階的に減少する仕組みが導入されています。

月10万円稼ぐ場合、年換算で約120万円になります。2025年以降は特定親族特別控除の範囲内に収まるため、親の扶養控除は維持されます。

一方で注意が必要なのは、税制上の壁とは別に「社会保険の壁」が残っている点です。年収130万円を超えると、学生であっても社会保険への加入対象となり得るため、繁忙期のシフト増加などで想定外に年収が積み上がってしまうケースも起こり得ます。
改正の恩恵を受けるためにも、まず制度の現状を正しく把握することが出発点になると思います。」

放置は厳禁!稼ぎすぎによる意外なデメリットとリスク

---「子どもも大学生だし、お金のことは本人任せ」というご家庭も多いですが、この姿勢にはどのようなリスクがあるのでしょうか?

あゆ実社労士事務所:

「『子どもも大学生なんだし、もうお金のことは本人に任せている』という声を、面談の場でたびたび聞いてきました。その気持ちはよくわかりますが、放置の代償は思いのほか大きくなることがあります。

最も典型的なリスクは、年末調整のやり直しです。たとえば、12月にアルバイト先の繁忙期が重なり、実際の年収が当初の見込みを大幅に超えてしまったとします。すでに扶養控除を適用した状態で年末調整が完了していると、後から修正が必要になります。報告した金額と実態がかけ離れていた場合、年末調整のやり直しが必要になり、対応が遅れれば親自身が確定申告を行わなければならないケースもあります。

税負担の変化についても理解しておく必要があります。2025年の改正で特定親族特別控除が導入されたことにより、150万円までは控除が維持されますが、それを超えると段階的に控除額が下がっていきます。150万円を超えても188万円までは段階的控除が適用されますが、その減少分がそのまま親の課税所得の増加につながります。63万円の控除が消えた場合、親の所得税率にもよりますが、数万円単位での税負担増になることも少なくありません。

さらに見落としがちなのが、会社の「家族手当」への影響です。企業によっては扶養家族の要件として、税制上の扶養と連動した基準を設けているところがあります。子どもが知らぬ間に基準を超えていた結果、翌年から手当が支給されなくなるケースも、人事の現場では実際に起こっています。

子どもが稼ぐこと自体はとても大切なことです。ただ、「稼ぎすぎると家族全体の手取りに影響する」という構造を、親子で共通認識として持っておくことが必要だと思います。」

気まずさを乗り越える!親子で始める「収入確認」の習慣

---お金の話題は子どもに対しても切り出しにくいものです。具体的にどのような対策をすればよいのでしょうか?

あゆ実社労士事務所:

「『子どもに収入のことを聞くのはなんとなく気まずい』という感覚は、親御さんにとって自然なことだと思います。でも、その一言が言えないまま年末を迎えて困る、というパターンはかなり多いと感じています。

まず明日から始めるとしたら、「毎月の給与明細を親子で確認する習慣をつくること」がもっとも手軽で効果的です。具体的な行動として、子どもがアルバイト先からもらう給与明細を月一回、LINEで写真を送ってもらうだけでも十分です。「管理したい」という雰囲気ではなく、「家族みんなの家計に関わるから一緒に把握しておこうね」という形で伝えると、子どもも受け入れやすい傾向があります。

確認すべき数字はシンプルです。その月の総支給額を記録しておき、1月からの累計を家族で把握しておくこと、これだけで十分です。税制上の扶養は年収123万円、社会保険については130万円を超えると加入対象になり得るため、この二つのラインを目安に、夏以降から収入のペースを意識するだけでリスクはかなり下がります。

もう一つ有効なのは、秋口(9〜10月頃)に年収の着地を一度計算してみることです。たとえば『10月末時点で累計95万円だから、残り2ヶ月で30万円以上稼ぐとラインを超えるね』という具体的な数字で話せると、子どもも意識しやすくなります。制度の知識より、「自分ごと」として捉えてもらうことが大切です。」

制度を正しく理解し、親子で家計の「共通認識」を持とう

制度の仕組みを知り、親子でコミュニケーションをとることは、単なる節税対策以上の意味があります。稼いだお金がどのように家計に影響するのかを知ることは、子どもにとっても貴重な社会勉強になるはずです。

「気まずいから」と放置するのではなく、まずは給与明細を一緒に見るという小さな一歩から始めてみてはいかがでしょうか。今回紹介した数字を家族の共通認識として持つことで、年末の慌ただしさを減らし、家族全員が納得できる形でアルバイトと学業を両立させていきましょう。


監修者:あゆ実社労士事務所
人材育成・キャリア支援を軸に約10年の実務経験を持つ、社会保険労務士/国家資格キャリアコンサルタント。 IT企業の人事として、新卒・若手育成、研修設計、評価・キャリア支援の仕組みづくりに携わる一方、個人では企業や個人に向けたキャリア相談・人事支援を行っている。 これまでに累計100名以上のキャリア面談を実施し、1on1制度設計や面談シートの設計、育成施策の言語化を支援。 近年は生成AIを活用した業務設計・人事業務の効率化にも注力し、「現場で使えること」を前提にしたAI活用の伴走支援を行っている。