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「無理だ」と進路を否定された重度知的障害の息子。反対を押し切り入所した事業所で目にした『活躍』にホロリ

  • 2026.3.1

筆者の話です。重度知的障害のある長男の進路として「知的障害者のための大学のような事業所」を見つけた私。しかし養護学校の進路指導担当W先生に「その事業所では長男の通所は無理!」と断言されます。その進路を推し進めた私の決断は正しかったのでしょうか? 可能性を信じることを問う物語です。

画像: 「無理だ」と進路を否定された重度知的障害の息子。反対を押し切り入所した事業所で目にした『活躍』にホロリ

希望の事業所

重度知的障害のある長男が、養護学校の高等部を卒業する時期が近づいていました。

私は、長男の進路についてずっと考えており、ある日、その事業所を見つけました。

「知的障害者のための大学のような事業所」

そこでは、スマホの使い方、公共交通機関の利用方法、演劇、ダンス、レポート作成など、様々なスキルを学べます。

「ここなら、長男の可能性を伸ばせるかもしれない」

私は、その事業所のパンフレットを持って、長男の通う養護学校の進路指導担当のW先生に相談に行きました。

「先生、この事業所なのですが、長男は演劇や歌ったり踊ったりすることがとても好きなので、合うと思うんです」

そう言って私は、W先生にパンフレットを見せました。

可能性の否定

W先生は、パンフレットを厳しい表情で見つめました。

「この事業所ですか? 長男くんにはちょっと無理ではないですか?」

「え?」

「だって、長男くん、重度知的障害でしょう? こういう高度なプログラム、ついていけないと思いますね」とW先生は、きっぱりと言いました。

「でも、見学に連れて行ったら、長男も楽しそうにしていたので」

「それは、その場が楽しかっただけでしょう? 続けるのは難しいと思います。もっと現実的な進路を考えた方がいいですよ」

W先生からは、強く否定されてしまいました。

悔しかったですが、長男が見せたあの輝いた目を信じたい気持ちがありました。

「私は長男をこの事業所に通わせたいと思います」

「まあ、お母さんがそう言うなら……でも、すぐに辞めることになると思いますよ」

とW先生は、冷やかに言いました。

笑顔で通う日々

長男は養護学校を卒業して、その事業所に通い始めました。

最初は、私も不安でした。

「本当に、長男についていけるのかな……?」

でも、長男は予想以上に楽しそうで毎日、笑顔で帰ってきます。

通い始めてから、挫けそうな出来事も多々ありましたが、長男なりに一生懸命頑張っている姿がありました。

事業所では、年に一度、保護者や関係者を招いて発表会が開かれます。

利用者たちが演劇を披露したり、レポートを発表したりするイベントです。

「先生も招待できますか?」

私は、事業所の職員に聞きました。

「もちろんです。ぜひ、お声がけください」

私は、W先生に長男の事業所の発表会の招待状を送りました。

しかし、W先生から返事がありません。

「やっぱり、来ないのだろうな」

私は、少しがっかりしました。

長男の可能性

そして発表会当日。

会場には、多くの保護者や関係者が集まっていました。

驚いたことに、そこにはW先生の姿もありました。

「ちょっと気になったので」

そう言ってW先生は、気まずそうに笑いました。

まず、演劇の発表が始まりました。

長男は主要な役ではありませんが、しっかりと自分の役をこなしていました。

セリフも、ちゃんと覚えています。

振り付け通りに動くこともできています。

観客席から拍手が起こり、私は長男の頑張っている姿を見て涙が出そうになりました。

それから、次はレポート発表の時間です。

長男はスクリーンの前に立ち、自分が作ったレポートをプロジェクターで映しながら発表しました。

「ぼくは、大好きな電車の乗り方を勉強しました。最初は怖かったけど、今は一人で乗れます」

長男の言葉は、たどたどしいですが、一生懸命伝えようとしています。

観客席から、拍手が起こります。

長男たちの発表が終わった後、W先生が私のところに来ました。

「お母さん、私、完全に間違ってました。長男くん、こんなことができるなんて思ってもみなくて」

「私、長男くんの可能性を見くびっていました。お母さんが正しかったと思います」

W先生の目には、涙が浮かんでいました。

「私、進路指導の担当として、生徒の可能性を信じるべきだったのに『無理』と決めつけてしまった」

「長男くんだけじゃなく、私は他の生徒にも同じように『無理』と決めつけて彼らの可能性を潰していたのかもしれない。それが、すごく怖くなりました」

それは、一人の教師が長年抱いてきた「常識」が、長男の笑顔によって打ち破られた瞬間でした。

「お母さん、教えてくれてありがとうございました。長男くん、本当に立派でした」

深々と頭を下げるW先生の姿を見て、私の胸の支えもスッと消えていきました。専門家の意見は時に正しい。けれど、一番近くにいる親が可能性を信じ続けることでしか、開かない扉があるのだと確信した一日でした。

【体験者:50代・筆者、回答時期:2026年2月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:藍沢佑菜
管理栄養士の資格を持つ、2人の自閉症男子のママ。自身の育児環境の変化をきっかけに、ライター活動をスタート。食と健康を軸に、ライフスタイル全般のコラムを得意とし、実体験に基づいたリアルな記事を執筆中。専門的な情報を「わかりやすく、すぐに日常に取り入れられる形」で伝えることが信条。読者の「知りたい」に寄り添い、暮らしを整えるヒントを発信しつづけている。

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