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コーヒーで旅する日本/関東編|この空間から何を感じるか。レトロな街のロースタリー「saladday coffee」で見つかる新しいコーヒー体験

  • 2026.2.25

全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも関東エリアは、伝統的な喫茶店から最先端のカフェまで、さまざまなスタイルの店が共存する、まさに日本のコーヒー文化の中心地。

東京をはじめ、関東近郊にある注目店を紹介する当連載。焙煎士や店主たちが教える“今、注目すべき”ショップをつなぐ、コーヒーリレーの旅へ。

【写真】店は元製本所をリノベーションした趣きある空間。駅から徒歩10分ほど、都会ながら落ち着いたエリアにある
【写真】店は元製本所をリノベーションした趣きある空間。駅から徒歩10分ほど、都会ながら落ち着いたエリアにある

第17回は東京都台東区にある「saladday coffee(サラダ デイ コーヒー)」。下町情緒漂う街の一角に佇むロースタリーカフェだ。店主の宮村哲也さんは人気カフェでの経験を活かし、焙煎と抽出を行う。店内はレコードから流れる音楽とコーヒーが楽しめるすてきな空間で、「それぞれの過ごし方を見つけてほしい」と静かに迎える店主。コーヒーの話と、開業から6年目を迎えた今、店主が考える今後の課題についても教えてくれた。

店主の宮村哲也さん。英語も達者な宮村さんのコミュ力の高さも魅力のひとつ
店主の宮村哲也さん。英語も達者な宮村さんのコミュ力の高さも魅力のひとつ

Profile|宮村哲也さん(みやむら・てつや)

1982年、富山県生まれ。地元の飲食店でコーヒーの提供をしていたことが、興味を持つきっかけ。その後、30歳でコーヒーを仕事にし、独立することを決意。「SOL'S COFFEE(ソルズ コーヒー)」(台東区)に約3年勤務し、焙煎や抽出に加え、個人店としてのノウハウを学んだ。2020年3月に「saladday coffee」を開業。

名店の技術、スタイルを踏襲したコーヒーづくり

木板の看板が営業の合図
木板の看板が営業の合図

宮村さんのコーヒー人生は独立を決意した30歳から本格的に始まる。いくつかのカフェでの経験もあるが、なかでも「SOL'S COFFEE」で学んだことが、コーヒーの技術や今の店づくりに大きな影響を与えている。

「地元・富山にいるときに飲食店でコーヒーの抽出をしたことがあって。それでコーヒーを始めてみようかなと思ったんですよ。何気ないことからコーヒーの世界を目指し始めたんですが、当然、やるからにはしっかりとコーヒーを学びたいと思って『SOL'S COFFEE』で勉強させてもらうことにしたんです」

「エスプレッソ」(500円)やトニックウォーターを合わせた「エスプレッソトニック」(800円)を用意。マシンは「SLAYER(スレイヤー)」
「エスプレッソ」(500円)やトニックウォーターを合わせた「エスプレッソトニック」(800円)を用意。マシンは「SLAYER(スレイヤー)」

「『SOL'S COFFEE』さんには、もともとお客として通っていて、コーヒーの味が気に入っていました。そしていざ働いてみると、街に根差すお店のあり方が見えておもしろかった。業務フローでの焙煎をしたのもここが初めてで、基本的な技術をしっかりと身に付けられたと思います。そして個人店ならではの経営を間近で知れたことが、当時開業を目指していた私にとって一番勉強になりましたね。コーヒー1本でやっていくことが、いかに難しいか。理想だけでなく、現実的な厳しさまで実感できた貴重な期間でした」

スイーツなどフード系はなく、ドリンクオンリーのメニュー展開
スイーツなどフード系はなく、ドリンクオンリーのメニュー展開

「SOL'S COFFEE」には約3年勤務。知識と技術を身に付けたあと、2020年3月に「saladday coffee」をオープンさせた。宮村さんが手がけるコーヒーの特徴としてあげられるのが「飲み疲れないコーヒー」ということ。

「デイリーなコーヒーと言うんですかね。このこだわりは前職で学んだこと。豆ごとの風味はありつつ、後味がすっきりしているコーヒーが好きなんですよ」

エスプレッソのブレンドもある
エスプレッソのブレンドもある

豆は全部で5種類あり、エチオピアとブラジルの2種類は定番、3種類は月替わりで用意。焙煎度は中浅煎りが基本だが、「エチオピア・アリチャ」だけは深煎りというラインナップだ。この「アリチャ」は“SOL'S”にも置かれていた豆で、自身の店でも定番として常時置くほど、思い入れのある豆だと感じる。

“感覚派”な焙煎と抽出から生まれるコーヒー

「フジローヤル」。日本製のクラシカルな焙煎機
「フジローヤル」。日本製のクラシカルな焙煎機

「焙煎機はフジローヤルの半熱風式。設置環境を含め、マシンの特徴を理解した焼き方を心がけています。細かな説明は割愛しますが、焙煎ごとに生じる焙煎由来の穏やかな甘さにやや寄りかかった味づくりが今のところ続いています。そのうえで、これまでとは違う焙煎アプローチをしていくことがこれからの課題となっています」

店づくりも「SOL'S COFFEE」ロースタリー店のレイアウトを踏襲。開放感があり、居心地もよい
店づくりも「SOL'S COFFEE」ロースタリー店のレイアウトを踏襲。開放感があり、居心地もよい

課題を掲げつつも、豆のよさを出すことに取り組む宮村さん。日々のブラッシュアップで、焼き方がガラリと変わる可能性もあるが、その違いを楽しんでみるのもおもしろい。

ブラックミュージックやシティポップ、ジャズ、ポストロック、ハードコアなど。宮村さんセレクトの音楽が、空間を彩るひとつのエッセンスに
ブラックミュージックやシティポップ、ジャズ、ポストロック、ハードコアなど。宮村さんセレクトの音楽が、空間を彩るひとつのエッセンスに
回し入れず、粉の真ん中だけを通すようにお湯を落とす
回し入れず、粉の真ん中だけを通すようにお湯を落とす

抽出は前職から使い続けている「ハリオV60」で行う。最初は少量のお湯をポトポトと点滴のように落とし、後半はお湯を一気に注ぐ。一般的にコーノ式と呼ばれる抽出方法から生まれた前職のメソッドを採用している。

「これは前職で学んだやり方で、これまでやってきたことを今も変わらず、続けているだけ。豆は粗目に挽いて、お湯は83度と少し低めで淹れていて、飲み疲れない味わいを出せていると思います」

丁寧に抽出された中浅煎りのコーヒー(※豆はコロンビア フィンカ ビジャ セレステ)を飲んだが、フルーティーな風味のあとからさわやかな柑橘の果実感、飲み終わりには甘く優しい余韻を楽しませてくれる一杯だった。

特徴的なお湯の注ぎ方は「SOL'S COFFEE」で学んだ。コーノ式の抽出方法が源流なんだとか
特徴的なお湯の注ぎ方は「SOL'S COFFEE」で学んだ。コーノ式の抽出方法が源流なんだとか

「最初に落とす“点滴”の回数が決まってなかったり、本当に感覚的なところが大きい。もっというと、粉とお湯の比率も決めてないのでお湯の量も毎回違うんです。ガチガチのロジックでやっていらっしゃる方からすると、おそらく『そんな再現性のない方法でやってるの?』と驚かれるかもしれませんね(笑)。しかしながら、そんな抽出方法が自分で焼いた豆とは相性がよく、自分が思い描く味わいになります。その味わいをしっかりロジックでパッケージしてみることも、今後の課題かもしれません」

「コロンビア フィンカ ビジャ セレステ」(850円)
「コロンビア フィンカ ビジャ セレステ」(850円)

経歴からコーヒーについて話してくれた宮村さん。最後に“今現在”の店のあり方についても教えてくれた。

「この場所ではコーヒーと空間を用意してるので、あとは訪れた人たちがそれをどう感じてくれるのか。私自身、今は自分から『こういう店だ』と発信せず、訪れた人が“過ごしやすい過ごし方”、“使いやすい使い方”で、お店で楽しむのが一番よいと思っています」

【宮村さんレコメンドのコーヒーショップは「テ」】

「中央区東日本橋にある『テ』。自身のコーヒーに厳しく、そして絶対的な自信と信頼があるからこそ成せるセルフプロデュースの妙と、兎にも角にも楽しもう!という気概を感じます。本当の意味でほかでは一切替えが効かない、すてきな方のすてきなお店です」(宮村さん)

【「saladday coffee」のコーヒーデータ】

●焙煎機/フジローヤル 3キロ(半熱風式)

●抽出/ハンドドリップ(ハリオV60)、エスプレッソ(スレイヤー)

●焙煎度合い/中浅煎り、深煎り

●テイクアウト/あり(500円〜)

●豆の販売/100グラム1000円〜

取材・文/GAKU(のららいと)

撮影/大野博之(FAKE.)

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