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どうでもいいことを延々と考え続ける彼の頭のなか。なぜか目が離せない、“ごく普通”のサラリーマンの話【書評】

  • 2026.2.23

【漫画】本編を読む

『あ、安部礼司です。』(青木U平:著、「NISSAN あ、安部礼司 ~BEYOND THE AVERAGE~」:企画・原案/主婦と生活社)の主人公・安部礼司は、ごく平凡なサラリーマンだ。特別な能力があるわけでも、劇的な成功を収めるわけでもない。そんな主人公の平凡な物語なのだが、なぜかページをめくる手が止まらなくなる1冊だ。

本作は、大人気長寿ラジオドラマ『NISSAN あ、安部礼司 ~BEYOND THE AVERAGE~』のコミカライズ作品であり、昭和生まれの“平均的”なサラリーマンである安部が、平成、令和と時代を超えて生き抜いていく姿が描かれる。安部は、「どうでもいいこと」をやたらと真剣に考えてしまう人物だ。会議中の微妙な空気、上司の何気ない一言、仕事と家庭のバランス。どれも社会人なら一度は経験したことのある出来事ばかりだが、誠実な彼はそれらを真正面から受け止め、頭の中で延々と考え続ける。安部の内面モノローグとテンポの良い会話によって、日常の一コマ一コマが生き生きと立ち上がってくる。その「あるある」の積み重ねが、共感と笑いを同時に生み出している。

また、登場人物たちの存在も魅力的だ。クセの強いキャラクターが揃っているにもかかわらず、誰一人として嫌味がない。それぞれが“会社の一員”としてきちんと機能し、適度な距離を保ちながら関係を築いている。和気あいあいとした空気の中に、仕事のしんどさや人生のままならなさが自然に混ざっていて、読んでいると不思議と肩の力が抜けていく。

非凡なヒーローの物語ではない。だが、「非凡なまでに平凡」な男の姿をここまで丁寧に描かれると、それ自体が立派な物語になるのだと気づかされる。社会人として日々を生きる人ほど、安部礼司に自分を重ねてしまうだろう。笑えて、少し救われて、明日ももう一日頑張ってみようと思える。そんな勇気と成長をそっと差し出してくれる、優しいサラリーマン・コメディである。

文=ネゴト / すずかん

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