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“確かめたい”だけだった…見守りカメラが映した決定的な瞬間|封筒貯金が消えた話

  • 2026.2.23

慎ましい3人暮らしの中で、「万が一」に備えて封筒貯金を続けていた主人公・恵。それは家計のためであり、心の安心でもあった。しかしある日、その封筒の中身に違和感を覚えて…。『封筒貯金が消えた話』第4話をごらんください。

恵は帳簿をつけて封筒貯金を管理するも、夫・健太に記録を疑われ、疑念を深めていった。
事実をはっきりさせるため、恵は見守りカメラを設置し、警察への相談を仄めかして健太の反応を探ることにする。

確かめるために越えた一線

ママリ

夫への疑念を抱き始めてから、恵の中で何かが静かに変わっていた。
怒りでも、決めつけでもない。ただ、「確かめなければ前に進めない」という感覚。
その一心で、恵はある行動に出た。
 
平日の午前中。
健太と莉子を送り出したあと、恵はスマートフォンを手に取り、注文していた小型の見守りカメラを設置した。
リビングの棚の隅。
封筒貯金をしまっている引き出しが、ぎりぎり映る位置。
 
(……これで、何もなければ)
 
自分にそう言い聞かせながら、恵は設定を終えた。
疑っている自分が、苦しい。けれど、曖昧なまま過ごす方が、もっと苦しかった。

警察の話を避ける夫からの電話

ママリ

カメラを設置しただけで、心臓が落ち着かない。
それでも、恵は次の一手を考えていた。
──それは、健太への揺さぶりだった。
 
その日の昼過ぎ。
家事を一段落させたタイミングで、恵は健太にメッセージを送った。
 
《やっぱり気になるから、封筒貯金の件、警察に相談してみようと思う》
 
送信ボタンを押した瞬間、胸がぎゅっと縮こまる。
 
(どう出る……?)
 
数分後。スマートフォンが震えた。
表示されたのは、着信。健太からだった。
 
「もしもし?」
 
電話口の健太の声は、やけに明るかった。
 
「あ、今大丈夫?」
 
「うん……どうしたの?」
 
「いや、昼休みでさ。今日暑いねーって話」
 
……暑い?
恵は一瞬、言葉を失った。
 
「えっと……うん、暑いね」
 
「莉子、昨日夜なかなか寝なかったじゃん?保育園送ってく時はどんな様子だった?」
 
封筒貯金の話には、触れない。
警察のことにも、一切。ただの、他愛ない世間話。
 
(……変)
 
普段なら、昼間に電話なんてしてこない。
ましてや、用件もなく。メッセージだって、既読になるのは半日経ってからがザラだ。
 
「……ねえ」
 
恵が切り出そうとすると、健太は被せるように言った。
 
「あ、そろそろ戻らないと。また夜ね」
 
一方的に、電話は切れた。
スマートフォンを握ったまま、恵はその場に立ち尽くす。
胸の奥で、嫌な確信が形を持ち始めていた。
 
(今の電話……)
 
警察の話題から、意図的に逸らした。
 
安心させようとした?それとも、様子を探った?
 
どちらにしても、健太の行動は明らかに“いつもと違う”。
疑念は、もはや否定できないものになっていた。

見守りカメラが捉えた犯人

ママリ

それから数日。
恵は、見守りカメラの存在を意識しながら、何事もない顔で生活を続けた。
健太も、表面上は変わらない。
 
そして、ある日の午後。
莉子を連れて買い物から帰宅し、ふとした気持ちで恵は録画履歴を確認した。
再生ボタンを押す指が、微かに震える。
 
画面が切り替わり、無音の映像が流れ始める。
リビング。誰もいないはずの時間帯。
数秒後、映像の端に、人影が映った。
 
健太だった。
恵は息を止める。
健太は周囲を一度見回し、引き出しに近づいた。
迷いのない動き。引き出しを開け、封筒を取り出す。
中を覗き込み、紙幣を数え、数枚を抜き取る。
そして、何事もなかったかのように封筒を戻す。
 
画面の中の健太は、慣れた手つきだった。
恵の視界が、一瞬滲む。
 
(……やっぱり)
 
震える指で、再生を止める。
否定したかった。勘違いであってほしかった。
 
でも、もう逃げ場はなかった。
封筒貯金を抜き取っていた犯人。
それは、他の誰でもない。
──夫、健太だった。
 
恵は、深く息を吐いた。
驚きよりも、怒りよりも、先に湧いたのは虚しさだった。
 
(この人は……)
 
疑っていたことが、現実になった瞬間。
夫婦として築いてきた信頼が、音を立てずに崩れ落ちた。
画面に映る健太の姿を、もう一度だけ見つめる。
そこに映っていたのは、
家族を守る夫でも、優しい父親でもなかった。
 
ただ、嘘をつき、家族のお金に手を伸ばす男だった。
 
真実は、はっきりしてしまった。
あとは、どう向き合うか。その重さが、恵の肩にのしかかっていた。

あとがき:真実は、知りたい形では現れない

恵が見たかったのは犯人ではなく、「安心」でした。けれど映っていたのは、家族を裏切る夫の姿。
怒りより先に虚しさが湧く描写は、信頼が壊れる瞬間の静けさを際立たせています。
 
ここから物語は、犯人探しではなく「どう向き合うか」へ進んでいきます。
証拠を突きつけた先にあるのは、夫婦としての対話と、それぞれの決断です。
 
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています

イラスト:まい子はん

著者:tenkyu_writing

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