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89歳・横尾忠則さん「髪も黒く、肌も若々しい!」その秘密は?【対談 和田秀樹さん×横尾忠則さん】

  • 2026.2.16

89歳・横尾忠則さん「髪も黒く、肌も若々しい!」その秘密は?【対談 和田秀樹さん×横尾忠則さん】

80歳、90歳を超えても、現役でいきいきと輝き続ける人たちがいます。その元気の秘密とは? 高齢者医療のプロ・和田秀樹さんが人生のレジェンドたちと語り合いながらそのヒントを探る、新刊『80歳の壁を超えた人たち』(幻冬舎刊)が話題です。その中から一部抜粋してお届けする第5回は、現代美術家の横尾忠則さんです。

和田秀樹さんの対談のお相手は

横尾忠則さん 現代美術家
(よこお・ただのり)1936年兵庫県生まれ、89歳(2026年1月時点)。ニューヨーク近代美術館、パリのカルティエ財団現代美術館、東京都現代美術館、東京国立博物館など国内外の美術館で多数の個展を開催。2012年横尾忠則現代美術館、2013年豊島横尾館が開館される。高松宮殿下記念世界文化賞受賞。日本藝術院会員。文化功労者。小説『ぶるうらんど』(泉鏡花文学賞)、『原郷の森』(ともに文藝春秋)、エッセイ『言葉を離れる』(講談社、講談社エッセイ賞)など著書多数。

心変わりは大いに結構。脳も身体もイキイキとする

和田 いやあ、すごいなあ。どの絵も素晴らしいですね。横尾さんのご活躍は僕が小さい頃から知っています。当時はサイケというかポップというか原色を使った奇抜なグラフィックの印象が強いんですが、今はこういう画風なんですね。

横尾 小さい頃って和田先生、今おいくつですか。

和田 64です。中学生ぐらいの時に『平凡パンチ』とかを見て、すごい芸術家だなあと。

横尾 中学からそんな週刊誌。先生はおませだったんですね(笑)。

和田 (笑)。横尾さんは、ずっと美術の世界を突っ走っておられる。そして今もこうしてイキイキと描き続けてるのだから、本当にすごいことです。

横尾 いやいや、イキイキなんて全然(笑)。だけど先生、88歳って長生きの部類に入るんですかね。

和田 平均寿命を超えてますからね。でも88には見えません。髪も黒いし肌も艶々。

横尾 髪の毛はね、まだ抜けてないんですよ。あまり白くもなってない。だけど医学が長生きさせてくれてるんじゃなく創造的な仕事をすることによって延命させられてる。と手前みそですが、僕はそんなふうに思っているんです。

和田 ピカソもそうですが、絵を描いている人は長生きなんです。横尾さんは作風をガラリと変えたりしている。そこにも長生きの秘訣があるのかもしれませんね。何度も違う人生を生きてるみたいな。

横尾 先生がさっき仰ってたグラフィックは、もう45年前に終わってましてね。そこから画家に転向したんです。

和田 変化は大事ですよ。脳の前頭葉という部分に刺激を与えるんです。前頭葉は年齢とともに弱ってくるんですが、放っておくとどんどん意欲がなくなり、老けこんでしまうんです。

横尾 ああ、だから僕は大丈夫なのかな。非常に飽きっぽい性格ですからね。ひとつのことに熱中するとすぐに飽きちゃって、次のものに心変わりするわけです。すると次から次に何かが変わる。そうやって自然にね、変化していくのかなと思ってます。

和田 それは横尾さんの若さにも繫がっているんでしょうね。

考えるとダメになるから考えない。見えない力を借りる

和田 絵を描いている時はどうなんですか?

横尾 絵を描く時は極力、観念とか、その表現を言語化するとか、そういったことから解放されて、アスリートの瞬間芸的な状態にならないと絵が描けないんですよ。

和田 アスリートの瞬間芸?

横尾 例えば水泳の飛込競技では、上へ上がってから下に落ちていく。この間は、競技者は何も考えてないと思うんですよ。その時間を、僕は自分のアートの時間に置き換える。アスリートは「ここでどう動く」とか「今晩は家に帰って晩ご飯は何を食べよう」なんて思いながら競技していないでしょ。だから絵を描く時も極力ね、アスリートの瞬間芸のように頭を空っぽにして身体性だけで描くようにもっていくんです。

和田 考えたら身体が動かない。

横尾 考えるということによって手が動かない、筆が動いてくれない。だから極力、頭の中を空洞にする。まったく考えないというのは無理なので、考えますけども。ほとんど無意識の状態で、無意識の他動的な力を借りちゃうみたいなね。それが僕のやり方なんですよ。

和田 独特の方法ですね。

横尾 現代美術っていうのは徹底的にコンセプチュアル・アートなんです。考えて、考え抜いて、考えが言語化されるところまで考えていくんですよ。それでやっとその作品を作るわけです。僕はまったくその反対。頭を空っぽにした状態で、ある意味、愚者になる。

和田 今の医療は横尾さんとは真逆ですよ(笑)。無理やり人工的にしようとする。

横尾 自然治癒ってあるじゃないですか。だけど医者はすぐに手術って言うからねえ。僕も足の指を骨折してね、病院へ行くのは嫌だから、そのまま富士山に登ったりしてたんです。そしたらいまだに痛い。けれど、手術もしないである程度自然治癒しています。もう20年ぐらい経ってますけど(笑)。で、お医者さんに「この痛みいつとれますか」と聞いたら「30年かかります」と。「じゃ、僕が死んで、足の痛みだけ生きてるんですか」と言ったら「まあ、そういうことですね」と。病気も、面白いですね(笑)。

撮影:鈴木規仁
対談日:2025年4月7日

この記事は『80歳の壁を超えた人たち』和田秀樹著(幻冬舎刊)の内容を、ウェブ記事用に再編集したものです。

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