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愛人からの挑発的な縦読み「しゅうあいしてる」に妻が覚悟の「いいね」匂わせ女 VS 逆襲のサインを送る妻【作者に聞く】

  • 2026.2.16
「私は負けない!」画面向こうの匂わせ女に、覚悟と宣戦布告の「いいね」。 (C)横山了一/ウォーカープラス
「私は負けない!」画面向こうの匂わせ女に、覚悟と宣戦布告の「いいね」。 (C)横山了一/ウォーカープラス

SNSで恋人の存在を間接的に誇示する行為は、いつしか“匂わせ”と呼ばれるようになった。写真に微妙に映り込む影、縦読みで浮かび上がる意味深な言葉。そうした自己顕示的な振る舞いをする女性像を軸に、家庭の不穏を描いた漫画がある。「どちらかの家庭が崩壊する漫画」と銘打たれた本作は、些細な違和感が積み重なり、静かに日常が崩れていく過程を容赦なく描き出す。

仕事のできるエリート夫・シュウの薬師寺家に走る違和感

「どちらかの家庭が崩壊する漫画」01 (C)横山了一/ウォーカープラス
「どちらかの家庭が崩壊する漫画」01 (C)横山了一/ウォーカープラス
「どちらかの家庭が崩壊する漫画」02 (C)横山了一/ウォーカープラス
「どちらかの家庭が崩壊する漫画」02 (C)横山了一/ウォーカープラス
「どちらかの家庭が崩壊する漫画」03 (C)横山了一/ウォーカープラス
「どちらかの家庭が崩壊する漫画」03 (C)横山了一/ウォーカープラス

仕事のできるエリート夫・シュウと暮らす薬師寺ユイは、約束もなく家に上がり込み、自分の意見を押し通す義母との関係に疲弊していた。そんな折、ユイをさらに追い詰めたのが、シュウの同僚である田尻モナの存在である。彼女のSNSには、シュウが偶然とは思えない形で写り込み、縦読みでは「しゅうあいしてる」と読める投稿まであった。違和感を抱きながらも、ユイは長らくその気持ちをひとりで抱え込んでいた。

しかし、ママ友・毒山海(ぶすやま・まりん)の助言をきっかけに、ユイは黙って耐えることをやめる。自分の意見を伝える覚悟を決め、あえてモナの投稿に「いいね」を押す。それは、声を荒らげないまま放った宣戦布告だった。

静かに進む、もう一つの崩壊――毒山家に忍び寄る不穏

一方で、毒山家でも別の崩壊の兆しが忍び寄る。毒山海の夫・ゴンは「電話をするだけで月100万円稼げる」という甘い誘いに乗り、現地で詐欺だと気づいた瞬間、怒りを爆発させる。結果、詐欺師とともに警察に連れて行かれるという最悪の展開を迎えてしまう。

本作は、対照的な二つの家庭が同時に揺らいでいく構造を持つ物語だが、とりわけ薬師寺家で描かれる“匂わせ”をめぐる不安と緊張は、心当たりのある人も多く、大きな共感を集めた。作者の横山了一さん(@yokoyama_bancho)に、悪役キャラクターの造形について話を聞いた。

「完全な悪人を描くのは苦手」だからこそ生まれた匂わせ女

横山さんは、田尻モナというキャラクターを「典型的な愛人体質」と位置づける。媚びることに長け、恋愛にスリルを求めるタイプだという。ただ、これまで描いたことのない人物像だったため、細かな所作や言動は、妻で漫画家の加藤マユミさんの助言を受けて調整した部分も多い。たとえば、シュウとバーで飲む場面では、当初は突き放した話し方をさせていたが、「もっと相手に合わせる会話」に修正したという。

シュウとの関係についても、実はシュウ自身はモナをそれほどタイプだと思っておらず、積極的な行動は取っていない。横山さんは「モナと一緒にいるときのシュウの表情に注目してほしい」と語り、そこに彼女のしたたかさがにじんでいると明かす。相手の弱みにつけ込む巧みさこそが、モナという人物の本質なのだ。

悪役を描くこと自体については、「完全な悪人を描くのが苦手なんです」と率直に語る。物語を進めるうちにキャラクターに愛着が湧き、人間らしい側面や改心の余地を描きたくなってしまうという。しかし、モナに関しては例外だった。「ほとんど良心がないキャラは新鮮でした(笑)」と振り返りつつも、読者の反応はシュウの母・サトコのほうが強く、このシリーズではモナの見せ場が限られたことも明かした。

良心がないと断言されるほどの悪女・モナの存在は、薬師寺家の運命を確実に揺さぶっていく。シュウが終盤で口にする「全然問題ないからさ」という電話の一言も、どこか不穏だ。さらに、毒山家もゴンの一件で先行きは見えず、「どちらかの家庭が崩壊する漫画」というタイトルすら揺らぐ展開を見せている。二つの家庭がどこへ向かうのか、その行方を見届けたくなる物語である。

取材協力:横山了一(@yokoyama_bancho)

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