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《タワマンを望む上野から中国の山へ》上野双子パンダの“旅立ち”と“現在”〈母シンシン・姉シャンシャンと同サイズの輸送箱に入り…〉

  • 2026.2.14
生まれ育った上野動物園で、屋外放飼場での最後の日を過ごすシャオシャオ。翌日から、渡航に向けた隔離検疫が始まった。(2025年12月26日、筆者撮影)

4歳の双子のジャイアントパンダ、シャオシャオ(暁暁)とレイレイ(蕾蕾)が生まれ育った上野動物園を出て半月。中国での様子も少しずつ伝わるようになりました。渡航までの日々を振り返ります。


上野動物園でのシャオシャオ。レイレイと共に、さまざまな人たちの思い出に残った。(2025年12月26日、筆者撮影)

1月28日(水)から中国・四川省の雅安碧峰峡基地(雅安基地)で暮らし始めた双子のジャイアントパンダ、シャオシャオ(暁暁)とレイレイ(蕾蕾)。中国国外から中国に来たパンダは、30日間以上の検疫が必要なので、この双子も現在、隔離されて検疫中だ。中国ジャイアントパンダ保護研究センターは2月6日(金)夜、「隔離検疫周記(一)」とのタイトルで、双子の様子をWeiboに投稿した。

それによると、シャオシャオは当初、強いストレス反応を示し、よく歩き回っていたが、新たな環境に少しずつ慣れてきている。レイレイはシャオシャオよりも、環境への適応が早かった。双子はタケノコ、竹、果物などを食べている。主食である竹の採食状況は良好で、排泄も正常だ。双子の状態は落ち着いていて、すでに飼育員にも慣れており、飼育員が動物舎で作業をしても、双子がストレスで歩き回ることはないそうだ。

さらに、同センターが2月13日(金)に投稿した「隔離検疫周記(二)」によると、双子のストレスは先週に比べ緩和されたという。双子は、午前中は屋外、午後は屋内で過ごしている。飼育員には一層慣れ、簡単なトレーニングにも取り組めるようになった。

上野動物園で竹を食べるレイレイ。(2026年1月20日、筆者撮影)
上野動物園で竹を食べるシャオシャオ。(2025年12月26日、筆者撮影)
上野動物園でおやつ(副食)を取るレイレイ(左)とシャオシャオ。(2025年12月26日、2026年1月20日、筆者撮影)

上野動物園での渡航に向けた本格的な準備は2025年12月に始まった。まずは1頭ずつ輸送箱に入る練習。上野動物園から雅安基地まで、手続きなどの待機時間を含むと約17時間かかる。この間、双子はずっと輸送箱の中で過ごさなければならない。

輸送箱に入る練習は、シャオシャオが2025年12月22日、レイレイが12月29日にスタート。「2頭とも、初回はやや慎重になりながらも問題なく入ってきました」(上野動物園の職員)。

輸送箱のサイズは、縦×横×長さが約1.4×1×1.7m。双子の姉のシャンシャン(香香)が2023年2月21日、母親のシンシン(真真)が2024年9月29日に上野動物園から雅安基地まで入っていた輸送箱とほぼ同じサイズだ。双子の父親のリーリー(力力)は体が大きいので、シンシンと一緒に帰国する際に入った輸送箱は、この4頭のものより大きかった。

輸送箱に入ったシャオシャオ(左)とレイレイ。(提供:(公財)東京動物園協会)
木に登るシャオシャオ。上野動物園の屋外放飼場で過ごした最後の日。(2025年12月26日、筆者撮影)

動物舎全体を検疫エリアに

ジャイアントパンダを日本から中国へ送り出す場合、30日間以上の隔離検疫が必要だ。そのため双子は、2025年12月27日から室内だけで過ごしてきた。

室内で公開できる部屋は3部屋。観覧者から向かって左端をレイレイ、屋外放飼場を挟んで、右の2部屋をシャオシャオが使った。「今回は動物舎全体を検疫エリアとしているため、検疫に入る前と同様の部屋割りとなっています」(同)。

リーリーとシンシンの検疫時は違った。検疫対象ではない双子が同じ動物舎内にいて、検疫エリアを分ける必要があったので、検疫前と部屋割りを変更した。その結果、左端の部屋をレイレイ、右の2部屋をリーリーとシンシンが隣同士で使い、シャオシャオが原則非公開だった。

双子の検疫が始まると、白い防護服で全身を覆った職員が双子に駆虫薬を投与したり、X線で撮影したりした。これらは、普段の健康観察に必要な血圧測定や採血のトレーニングを続けながら実施した。狂犬病対策のワクチンも接種した。中国では狂犬病の発生が確認されているためだ。狂犬病ワクチンは、シャンシャン、リーリー、シンシンにも中国への渡航前に接種している。

右の部屋に食べ物が用意されたので、左の部屋から移動したシャオシャオ。(2026年1月20日、筆者撮影)

久しぶりに同じ空間へ

双子が上野動物園を出たのは1月27日(火)。「今日は人が多いのかな、いつもとどうも様子が違うな、といったことは察したように思います」(上野動物園の福田豊園長)。

練習の成果を発揮してか、双子はすぐ輸送箱に入った。ただ、輸送箱の中でやや興奮気味になったので、これから長時間を輸送箱の中で過ごすことも考慮して、それぞれに鎮静剤を投与した。麻酔はしていない。ニンジン、リンゴ、パンダ団子も少し与えた。

そして、シャオシャオ、レイレイの順にトラックにのせた。輸送箱に入っている状態とはいえ、双子が同じ空間にいるのは、2024年4月中旬以来となる。双子は2024年4月中旬から同居をやめて、別々に暮らしてきた。体が大きくなるにつれ、じゃれ合いが激しくなり、けがをする恐れがあったためだ。

今回、久々の「再会」となった双子の様子について筆者が1月27日(火)の記者会見で福田園長に尋ねたところ、「2 頭が同一空間と言いますか、狭い場所で一緒になることは、普通はないですね。そういう意味で、今日は特別だと思います。輸送箱のすき間は大きくあいているわけではないので、箱の中から相手をどういうふうに見た、あるいは認識したかは分かりませんが、鎮静剤を投与しましたし、搬出の時はとても落ち着いていたと思います」とのことだった。

シャオシャオ(左)とレイレイが入った輸送箱。(提供:(公財)東京動物園協会)
シャオシャオ(左)とレイレイが入った輸送箱をトラックへ。(提供:(公財)東京動物園協会)

双子をトラックにのせたまま爆発物検査

双子をのせたトラックは、1月27日(火)午後1時30分頃、上野動物園を出発した。出発後、福田園長は輸送について「動物の輸送全般に言えることですが、1番心配なのは、車が移動している最中に暴れたり、パニックになったりして、動物の体温が急上昇してしまうことです。そうしたことがないように、事前に十分準備をしますし、また、寒い時期を選ぶといったことをしています。動物を扱っている方は、その辺りをよく承知していて、念を押す形になりますけれども、今回もドライバーなど関係される皆様によろしくお願いしますと確認しました」と語った。

トラックは阪急阪神エクスプレスによって手配された。同社は、上野動物園と中国の間の全てのパンダ輸送に関わっている。今回も上野動物園から中国・四川省の成都天府空港までの輸送をサポートした。

職員(写真左)に見送られながら、双子は生まれ育った「パンダのもり」を出ていった。扉には「検疫中につき 関係者以外 通り抜け禁止」とある。(2026年1月27日、園内の報道関係者用のエリアから筆者撮影)

トラックは午後3時頃に成田空港の保税蔵置場に到着。ここで、双子をトラックにのせたまま爆発物検査と輸出通関を済ませた。その後、別の建物に移動して、双子の入った輸送箱をトラックから輸送機材に積み替え、貨物機に搭載した。この貨物機は、中国・四川航空のチャーター便だ。ちなみにシャンシャン、リーリーとシンシンは中国・順豊航空の貨物機(チャーター便)を使ったが、今回は上野動物園の要望で四川航空を利用した。

貨物機には、双子を安心させるため、上野動物園の飼育係1人が同乗。中国ジャイアントパンダ保護研究センターから事前に来日していた経験豊かな獣医師1人も同乗した。この2人以外の関係者は、別の航空機で中国に行った。上野動物園は、同センターと日ごろから情報を共有している。そのため同センターの専門家は「2頭の状況について、よく理解していると思いますが、改めて職員が行った折に対面して、細かな情報を伝えることになると思います」と福田園長は1月27日(火)に話していた。

なお、中国へ向かうときに双子にあげた食べ物と、双子を運んだ乗り物の温度を筆者が上野動物園に尋ねたところ、成田空港で与えたのはリンゴとパンダ団子(それ以降の給餌は非開示)、トラック内と貨物機内の温度は「いずれも10~15℃の範囲になるよう調整しました」(同園の職員)とのことだ。

シャオシャオが入った輸送箱を成田空港で搭載。(提供:(公財)東京動物園協会)
シャオシャオ(左)とレイレイが入った輸送箱を成田空港で搭載。(提供:(公財)東京動物園協会)

消毒などの検疫準備完了

双子をのせた貨物機は、1月27日(火)午後8時頃に飛び立ち、予定通り約6時間後の1月28日(水)午前2時頃(現地時間は午前1時頃)、成都天府空港に到着した。中国側の手続きを終えた後、双子をのせたトラックは、成都天府空港から約200km離れた雅安基地へ。日本時間で午前6時頃(現地時間で午前5時頃)に到着して、雅安基地の検疫施設に入った。

中国ジャイアントパンダ保護研究センターは、双子が環境に早く適応して、検疫を終えられるように、動物舎の消毒などの検疫準備を完了させておいたと1月28日にWeiboで発信した。双子が検疫を終えた後は、気候や食べ物、飼育員の言語といった環境に適応する期間が設けられ、その後、一般公開となる見通しだ。双子がどこの飼育施設で、いつ公開されるかは、現時点で明確には決まっていない。

中川 美帆 (なかがわ みほ)

パンダジャーナリスト。早稲田大学教育学部卒。毎日新聞出版「週刊エコノミスト」などの記者を経て、ジャイアントパンダに関わる各分野の専門家に取材している。訪れたパンダの飼育地は、日本(4カ所)、中国本土(12カ所)、香港、マカオ、台湾、韓国、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、カナダ(2カ所)、アメリカ(4カ所)、メキシコ、ベルギー、スペイン、オーストリア、ドイツ、フランス、オランダ、イギリス、フィンランド、デンマーク、ロシア。近著に『パンダワールド We love PANDA』(大和書房)がある。
@nakagawamihoo

パンダワールド We love PANDA

定価 1,650円(税込)
大和書房

文・撮影=中川美帆

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