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ニューヨークで活躍する日本人ヘアスタイリスト、穂高律子。洗練美が光るサロンとライフスタイル

  • 2026.2.15
OMI TANAKA

ファッションや文化の発信源であるニューヨークで活躍する、自立した女性たちのファッションやライフスタイルを紹介する連載。Vol.9は、東京からニューヨークに移住し、自身のヘアサロンをオープンしたヘアスタイリストの穂高律子をフィーチャーする。

<a href="https://www.instagram.com/ritsuko725/" target="_blank"><strong>穂高律子</strong></a>/岩手県出身。日本美容専門学校卒業後、都内サロン勤務を経て2016年に渡米。2024年、マンハッタンにヘアスタイリストの夫、月沢孝義とともに「<a href="https://www.instagram.com/onsessionsalon/" target="_blank">オンセッション(ON-SESSION)</a>」をオープン。現在はブルックリンを拠点に夫と3歳の息子と暮らしている。 OMI TANAKA

ビューティー大国アメリカ。その中でも世界有数のトレンド発信地であるニューヨークに、夫とともに自身のヘアサロン「オンセッション(ON-SESSION)」を構える穂高さん。確かな技術と時代の空気を捉える感性を武器に、紹介や口コミを中心に評判が広がり、ファッション業界人やクリエイターたちが足繁く通うアドレスとなっている。渡米したきっかけやサロンへのこだわり、クリエイションへの活力、そしてニューヨークの魅力について。今回はサロンにおじゃまし、お話を伺った。

憧れから始まったニューヨーク、サロン開業という選択

自然光がたっぷりと差し込む、お気に入りのサロンスペース。 OMI TANAKA

── ニューヨークに移住したきっかけを教えてください。

幼少期からアメリカに憧れがありました。ストリート感のあるかっこいい女性像やグラフィックデザインが好きだったんです。20代後半は、同期たちが海外に出始めて、ちょうどSNSも広まり出した頃。SNSを通して現地の情報に触れやすくなり、海外が身近に感じられるようになったんです。ツキさん(夫の月沢孝義)が先にニューヨークで活動していたので、リアルな話を聞くうちにうらやましくなったり(笑)。「自分の目で確かめたい」と思うようになり、渡米を決めました。

── 東京のサロンで10年間勤務し、2016年にニューヨークへ。2024年にはご自身のサロン「オンセッション」を立ち上げました。どんなサロンを思い描いていましたか?

ニューヨークのサロンは、すごくゴージャスな空間か手作り感のある空間か、どちらかに寄りがちで。そのどちらでもない、日本的な洗練された感覚を提案したいと思いました。ギャラリーのような、少し緊張感のある雰囲気。美容室に行く時間そのものが楽しみになるような場所をつくりたかったんです。それに、アメリカは建物の造りが日本と違うので、そこに日本の感覚が重なったら面白いんじゃないかと思いました。

── サロン開業は、移住当初から考えていたのでしょうか?

いえ、全然。東京のサロンで店長をやっていたので、マネジメントが苦手ではなかったのですが、当初は自由にできるなら雇われる働き方でもいいと思っていました。だけど、1日の大半を過ごすサロンをより心地よい場所にしたいという思いが芽生えて。そんなことを毎日のように話している中で、ツキさんに「自分でお店を出せばいいじゃん」って言われ、その一言に背中を押されました。

日本人としてニューヨークで働くということ

ラフ・シモンズのファブリックを用いたガルザ(GARZA)のライト。もともとはオレンジだったベルトは時間とともにやわらかく変色。その経年の表情もまた味わいとして楽しんでいる。 OMI TANAKA

── ニューヨークで働く日本人としての強みは何だと思いますか?

日本で培ってきた、良いものを見てきた感覚と、ひとつの技術を磨き続ける職人気質だと思います。より良いものを追求する精神は日本ならでは。東京で積んだ経験が今の自分の土台になっています。ニューヨークでは日本に対するイメージがいいので、日本人っていうだけで対応がちょっと変わることもあるし、英語がつたなくても確かな技術があればきちんと評価してもらえる。その環境の中で、日本人であることがアドバンテージになっていると実感しています。

── 逆に、大変だったことは?

英語ですね。渡米当初は大丈夫だろうと思っていましたが、実際は思うように話せずプライドが折れて、語学学校や発音教室に通いました。現在はお客さんの約9割が英語ですが、アートやデザインの話題でもより深く広がりのある会話ができたらと、改めて英語を学び直そうと考えています。

── サロンの空間で気に入っているのはどこですか?

9つの大きな窓があり、そこから光がたっぷり入るところ。天井も高く、開放感があるんです。初めてこの物件を見たとき、一目惚れしました。長い時間を過ごす家のような場所なので、自然光が入る環境が条件だったんです。自分が心地いいと感じられる場所なら、きっとお客さんも同じようにリラックスできるはずだと思い、ここにしました。

── お気に入りのオブジェや家具について教えてください。

ラフ・シモンズがデザインしたファブリックを使用したガルザ(GARZA)のステンレスライトは、特に気に入っています。レンガなど昔ながらのニューヨークの雰囲気が残る空間なので、ステンレスやモノトーンの家具を中心にして、全体を洗練された印象にできたらと思いました。インテリアはツキさんと一緒に相談しながら決めています。撮影現場のセット作りなどで常に新しいものに触れている人なので、その感覚を信頼しています。

ファッション&ビューティのマイルール

最近、迎え入れたミュウミュウ(MIU MIU)のポロシャツ。ミニマルな佇まいに、さりげないロゴが映える一枚。 OMI TANAKA
友人から贈られたエルメス(HERMÈS)のブレスレットから、アグメス(AGMES)やローラ ロンバルディ(LAURA LOMBARDI)など、ニューヨーク発のジュエリーまで。思い出と土地の空気が重なり合う日常のアクセント。 OMI TANAKA

── ファッションやビューティーのルールはありますか?

いいものを少なく長く持つこと。最近はよりそういう選び方になってきましたね。リップや髪の色が明るいので、黒の服でバランスをとることも意識しています。素材の透け感やさりげない肌見せなど、女性らしさのある服が好きです。重ね着はあまりせず、基本はシンプル。トレンドもほどよく意識しつつ、今っぽすぎないように気をつけています。

── 今の自分をつくる、愛用のビューティーアイテムは?

マットな赤リップが好きで、季節によって深めのトーンにしたり、オレンジ寄りにしたりと少しずつ変えています。スキンケアは保湿重視。いろいろ試すのが好きですが、コロナ禍のマスク荒れをきっかけに見直し、改めてアルビオン(ALBION)に落ち着きました。その後、スーパーエッグ(SUPEREGG)が誕生してからはスキンケアに新たに仲間入り。アジア人の肌にすごく合う気がして、海外でここまで感動したプロダクトは正直あまりありません。ラ・メール(LA MER)のクリームもよく使っています。

イソップ(AESOP)、モレキュールズ(MOLECULES)、ル ラボ(LE LABO)の香水。香りもまた、日常のリズムをつくる大切なエレメント。 OMI TANAKA

── お気に入りの香水も気になります。

ル ラボ(LE LABO)の「サンタル33」は王道ですが、いちばん自分の肌に合う気がして、2019年から詰め替えながら使い続けています。デイリー使いで、リフレッシュしたいときに手首の香りを嗅ぐと落ち着くので、携帯用も持ち歩いています。

MOLECULES(モレキュールズ)は、お客さんがつけていたのをきっかけに知って、お出かけやお気に入りの服の日に使っています。この世の中で1番好きな香りです。夜や冬は、少しウッディなイソップ(AESOP)をつけることも。私にとって、香りはとても大切で、その人のセンスや雰囲気が出るもの。気になる香りをまとっている人には、思わず「何を使っているんですか?」と聞いてしまいます。

── おしゃれだと思う女性は、どんな人ですか?

ゾーイ・クラヴィッツやシャーデーはおしゃれですよね。私自身、あまり背が高くないので、彼女たちのように意思を感じさせる佇まいの女性に惹かれます。気負わない服装に髪をきゅっとまとめて全体を整える感じもいいですよね。私もああいう、いい意味でラフな女性になりたいんですけど、性格的に無理なので(笑)。

クリエイションと活力の源

クレージュ(COURRÈGES)やコム シ(COMME SI)など、ブランドの色使いから洋書のヘアまで。視覚のインスピレーションが、そのままクリエイションにつながっていく。 OMI TANAKA

── スタイルや制作のインスピレーション源は何ですか?

もともと海外の雑誌が好きで、ページをめくりながら、髪色やスタイリングのレイヤード、服の配色を見ては、「このオレンジの髪色、誰かにやってみたい」とか「この服の色、ヘアにも落とし込めそう」と考えることが多いです。

最近は、クレージュ(COURRÈGES)の色使いが好きで、以前はインナーに使われることが多かったような色が、今はファッションとして前に出てきているのが面白いですよね。実際こちらのお客さんでも、「今着ている服のこの色にしてほしい」とオーダーされることもあるんです。

── 日々のセルフケアで大切にしていることはありますか?

この2年はずっとフル稼働で走ってきて、帰宅するとエネルギー切れの状態。限界までやりたいし、やれてしまうタイプだからこそ、今年は意識的にセルフケアの時間をつくるのが目標です。お店も少しずつ形になってきたので、ピラティスにも通いたいし、テニスも再開したいですね。

乾燥するニューヨークで欠かせない保湿スキンケア、スーパーエッグ(SUPEREGG)とラ メール(LA MER)。肌のコンディションを整え、忙しい日々に静かな潤いを添えてくれる。 OMI TANAKA
サニーズ フェイス(SUNNIES FACE)、エルメス(HERMÈS)、ナーズ(NARS)の赤のリップ。その日のスタイルに合わせて、さりげなく表情を切り替える。 OMI TANAKA


── 仕事において、どんな瞬間に幸せを感じますか?

一人ひとりのお客さんに喜んでいただけることはもちろんですが、10年間通い続けてくださる方も何人かいて、その方々の人生の節目に関われていると考えると、この仕事の素晴らしさを感じます。以前、フランスの田舎から「これからの人生、白髪を活かしていきたい」とカラーを希望して訪れてくださる方もいて、国や世代を越えて信頼していただける環境に身を置けることは、この街の寛容さであり、大きなやりがいです。

── ニューヨークでお気に入りの場所はどこですか?

マッカレンパーク(MCCARREN PARK)は運動している人が多く、いいエネルギーが流れています。ずっと憧れだったので、近くに引っ越せたのがうれしいです。チェルシー周辺のギャラリーも好きですね。あと、雑誌や本が好きなので、アイコニック マガジンズ(ICONIC MAGAZINES)もお気に入りで、サロンの本棚の並びを変えて、日常の中に自然とインスピレーションが生まれる環境を大切にしています。

飽きない街、ニューヨークで描く次なる目標

クレージュ(COURRÈGES)のトップスにオムガールズ(HOMMEGIRLS)のトラウザーを合わせて。クリーンなラインとマスキュリンなムードが交差するモノトーンスタイル。 OMI TANAKA

── 理想的な1日のスケジュールを教えてください。

朝は子どもを送り、ピラティスに行き、陽が出ているうちに自分の時間を大切にすることが理想です。以前は夜遅くまで働いていましたが、今はできるだけ18時には帰宅し、家族と食事をする時間を持つようにしています。そんな姿を見せていくことも、経営者として大切だと思っています。

── 穂高さんにとってニューヨークとはどんな場所?

常に変化し、飽きることのない場所。失敗しても誰も引きずらず、挑戦できる空気があります。それに、もう一度トライすると前向きに評価してもらえる。チャンスの形が次々と変わっていくのはニューヨークならではです。

さりげない肌見せが女性らしさを感じさせる、デンマークのブランド、エ ローエ ホーベ(A. ROEGE HOVE)のカーディガン。他にも、アウェイク モード(A.W.A.K.E. MODE)やコペルニ(COPERNI)を愛用。 OMI TANAKA

── 今後、叶えたい夢や目標があれば教えてください。

サロンワークを続けながら、パーソナルなクリエイションにもより挑戦していきたいと考えています。カラーを用いたパーソナルプロジェクトなど、新しい表現を発信していけたら。ヘアケアを中心としたプロダクトづくりや、自分たちが本当に良いと言えるものをキュレーションするオンラインショップにも取り組みたいですね。売上よりも、自分たちの世界観を丁寧に伝えることを大切にできたらなと思っています。

 

Text & Coordination: Maki Saijo

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