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「夏休みに学校開放」ネットで賛否あつまる…元小学校教員が明かした“切実なホンネ”は

  • 2026.7.14
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

夏休み期間中の子どもの居場所を確保するため、文部科学省は学校施設の一部開放などを全国へ要請する方針を示しました。

背景には、電気代の高騰などにより家庭で冷房の使用を控えるケースが懸念されていることや、子どもたちが安心して過ごせる居場所を確保したいという狙いがあります。学校のほか、図書館やスポーツ施設などの活用も想定されています。

一方で、学校を開放することで教員や学校現場の負担が増えるのではないかという声も。SNSでは、「子どもの居場所づくりは必要だと思う」「教員の負担が増えることは心配」といった意見も寄せられています。

そこで今回は、元小学校教員の風間千歌さんに、この取り組みのメリットや課題、学校現場で実施する場合に必要な配慮について伺いました。

夏休みの学校開放がもたらすメリットと、見落とせない「現場の現実」

――夏休み中に学校を開放し、子どもの居場所として活用する取り組みについて、元教員としてどのように受け止めていますか。子どもたちにとって期待できるメリットがあれば教えてください。

風間千歌さん:

「共働き世帯が増えている現在、夏休みの多くの日を保護者と一緒に自宅で過ごすことが難しい家庭も少なくありません。学童保育を利用したくても、定員などの事情で入れないケースもあります。そのような家庭にとって、冷房の効いた学校や公共施設で子どもが安全に過ごせる選択肢が増えることには、大きな意義があると感じます。

特に、日中を一人で過ごさざるを得ない子どもや、家庭で冷房を十分に使用することが難しい子どもにとって、安心して過ごせる居場所が確保されることは、心身の安全を守るという点でもメリットがあるでしょう。また、決まった場所へ出かけ、ほかの子どもや大人と関わることは、長期休業中の孤立を防ぎ、生活リズムを保つことにもつながると考えます。

一方で、学校は本来、教育活動を行うための施設です。夏休み中に子どもの居場所として活用するのであれば、学校や教員だけに運営や見守りの責任を負わせるのではなく、自治体や福祉部門、外部スタッフなどが連携した体制を整えることが欠かせません。

子どもの居場所を増やすという方向性そのものには意義がありますが、現場の負担を増やす形で実施されれば、継続することは難しくなります。子どもの安全と、受け入れる側の体制の両方を十分に考えたうえで進める必要がある取り組みだと受け止めています。」

なぜ「学校に任せるだけ」では危険なのか?教員が直面する責任と負担のリアル

――一方で、この取り組みを学校で実施する場合、どのような課題が考えられるでしょうか。教員の負担や安全管理、人員配置など、現場で懸念される点があれば教えてください。

風間千歌さん:

「子どもの居場所を増やす方向性には賛成ですが、学校施設を利用するという理由だけで、運営や責任まで学校に委ねることには慎重であるべきです。家庭の負担軽減や居場所不足に対応するのであれば、『学校教育』の一環ではなく『福祉施策』として、別枠での十分な予算と人員確保が前提となります。

現場で最も懸念されるのは、安全管理と責任の所在です。登下校中の熱中症リスクや、施設内でのケガやトラブルに対し、誰が責任を負うのかを明確にする必要があります。たとえ外部スタッフを配置しても、同じ校舎内に教員がいれば、緊急時の対応や施設の施錠・冷房管理などで結局は職員室に頼ることになり、教員が『実質的な責任者』になってしまう事態が容易に想像できます。

さらに、教員の夏休みは決して余裕のある期間ではありません。1学期の成績処理や2学期以降の授業・行事準備、施設点検や研修など、授業がある時期にはできない業務が山積みです。ここに新たな児童対応が加われば、本来の教育活動に向けた準備や休養の時間が削られ、結果的に2学期以降の指導に影響するおそれがあります。

子どもの居場所づくりは大切ですが、学校が際限なく役割を引き受ければ現場はさらに疲弊します。自治体の福祉部門などが主体となり、明確な責任体制を用意することが不可欠です。」

子どもを安全に守り、持続可能な居場所をつくるために必要な「仕組み」とは

――子どもの居場所を確保しながら、学校や教員への負担を過度に増やさないためには、どのような体制や支援が必要だとお考えでしょうか。

風間千歌さん:

「まずは学校を新たな居場所として活用する前に、現在ある学童保育の待遇改善や受け入れ体制の充実など、すでに機能している制度へ十分な予算と人員を確保することを優先すべきだと考えます。

そのうえで学校施設を活用するのであれば、現職の教員に負担が集中しない制度設計が不可欠です。自治体や福祉部門が運営主体となり、専門スタッフの雇用や実績ある事業者への委託を行うべきです。地域のボランティアに協力をお願いする案もありますが、子どもの安全を継続的に守る役割を無償の善意だけに依存することには慎重になるべきであり、予算を確保して研修を受けた人材を適切に配置する必要があります。

また、施設の施錠や空調管理など学校側の協力が必要な業務もありますが、見守りや保護者対応を含むすべての責任を教員が担う形にしてはいけません。具体的には、登下校中の安全、昼食の扱い、ケガやトラブル、災害時の対応から、出欠確認や苦情窓口、スタッフ欠勤時の代替要員に至るまで、事前に責任の所在を明確にしておくべきです。

こうした責任の線引きは、教員の負担を減らすためだけのものではありません。判断や対応が曖昧な状態をなくし、子どもたちの安全を確実に守るために必要なことです。予算や責任体制を明確にし、一時的な対応ではなく継続できる仕組みとして設計することが重要だと考えます。」

子どもと教員、双方にとって持続可能な仕組みづくりを

子どもたちの居場所を増やすことは、酷暑や共働き世帯の増加といった社会状況を踏まえると、重要な取り組みといえるでしょう。一方で、学校を活用する場合には、教員へ過度な負担が集中しない体制づくりや、責任の所在を明確にすることも欠かせません。

子どもの安全を守りながら、学校現場も無理なく運営できる仕組みを整えることが、この取り組みを継続していくための鍵となりそうです。


監修者:風間千歌

小学校教諭として10年以上公立小学校に勤務したのち、2人目の妊娠を機に退職。現在はフリーランスライターとして、教員経験を活かした教材制作や入試問題の解説のほか、育児・教育分野のウェブメディアで執筆を行っている。

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