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軽自動車で「エンジンのアイドリングが安定しない」電話越しに怒鳴る相談者…プロが絶句した“失火原因”

  • 2026.3.5
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

みなさま、こんにちは。元自動車整備技術アドバイザーの松尾です。

車の不調は、すぐに原因が特定できるとは限りません。それでも「教えてもらった通りにやったのに直らない」と感情的になってしまう。そんな場面に出くわしたことがあります。技術相談は“答えをもらう場”ではなく、“一緒に絞り込んでいく作業”。冷静さを失った瞬間、問題解決も、人間関係も遠回りになります。

軽自動車のアイドリング不調

ある日、軽自動車で「エンジンのアイドリングが安定しない」という相談が入りました。エンジン警告灯が点灯し、診断機には“失火”の表示。失火とは、エンジン内部でうまく火がついていない状態。ライターで例えれば、カチッと回しても火がつかないようなものです。

原因は一つではありません。スパークプラグやイグニッションコイルなどの点火系、インジェクターなどの燃料系の問題など、可能性は複数あります。

そこで私はまず、「走行距離を考えると点火系の点検から進めてみてはどうでしょう」と助言しました。あくまで“点検”です。

「直らないじゃないか!」という怒声

2日後、再び電話が鳴りました。電話を取り次いでもらうと、

「この前の車だけど、直らないじゃないか!イグニッションコイルとプラグも交換したのに!」

受話器越しに伝わる苛立ち。思わずこちらも謝ってしまいましたが、よく考えれば私は“交換”を指示したわけではありません。点検を勧めただけです。

故障診断とは、本来こういう流れです。

・まず一つ目を点検
・正常なら次へ進む
・さらに絞り込む
・ようやく原因にたどり着く

私たちは数多くの相談を請け負っているとはいえ、魔法使いではないので、一発で正解が出る保証はありません。それでも焦りや期待が先行すると、「すぐ結果が出るはずだ」という思い込みが生まれます。

本当の原因は“燃料の汚れ”

「点火系に異常がないなら、次は燃料系を見てみましょう」と提案しました。

改めて確認してもらうと、インジェクターが汚れていました。インジェクターとは、エンジンの内部にガソリンを噴射する部品で、そこが汚れで詰まり、本来出る量より少なくなっていたのです。

「失火」という文字だけ見ると、点火系が原因と思いがちです。これはプロでも同じ考えに陥る方が多いです。しかし、失火はエンジンが燃焼していない状態を表すので、燃焼しない原因を探っていくという診断方法になります。今回はインジェクター(燃料系)が原因で失火していたという状況です。結果として、燃焼状態が不安定になりアイドリングが不安定になっていました。

インジェクターを洗浄する液剤を投入し、清掃しました。すると症状は改善しました。エンジンは静かに安定して回るようになりました。もし最初から順を追って確認していれば、余計な部品交換も、感情的なやり取りもなかったはずです。

問題解決を遠回りにするもの

ある程度の経験を積むと、「これくらい分かっている」という自信が生まれます。仕事でも家庭でも、アドバイスをする側になることが増えていきます。だからこそ、思った通りの結果が出ないときに感情が動きやすい。

しかし本当に頼られる人は、結果が出なくても次の一手を冷静に考えられる人です。人とのやり取りも同じ。「なぜうまくいかない?」と声を荒げるより、「次はどこを確認しようか」と一歩進めるほうが、結果的に早く解決に近づきます。

エンジンも、人間関係も

エンジンの回転を安定させるには、正しい順序で原因を絞り込むこと。人間関係を安定させるには、冷静さを失わないこと。技術は実務と知識で磨けます。けれど信頼は、態度で築かれます。

電話越しに凍りついたあの瞬間を思い出すたびに、私はそう感じるのです。


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