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ベストセラー「怖い絵」シリーズの作者【中野京子さん】。新刊『希望の名画』への思い、2026年におすすめの絵画展情報も!

  • 2026.1.31

ベストセラー「怖い絵」シリーズの作者【中野京子さん】。新刊『希望の名画』への思い、2026年におすすめの絵画展情報も!

「希望」をキーワードに選んだ30枚の名画に潜む画家や描かれた人物のドラマチックな人生をひもとく『希望の名画』の著者・中野京子さんにお話を伺いました。

細部を観賞することで絵画がぐんと面白く

独自の視点から、さまざまな時代、国、画家の手になる名画を読み解くエッセイで、多くの読者に支持されている中野京子さん。なかでも「恐怖」をキーワードに名画をセレクトした「怖い絵」シリーズは、大ベストセラーとなり、「怖い絵」をベースにした展覧会「怖い絵展」は大きな反響を呼んだ。

新作『希望の名画』は「希望」に焦点をあてて選んだ名画30点に、中野さんならではの解説をつけた一冊。全8章の見出しは「愛」「期待」「救世主」「信仰」「王族の幸福」「絶望の先に」「理想郷」「人生の開拓者」。ゴッホ、ボッティチェリ、ゴヤ、クラーナハ、クラムスコイなど、国や時代もさまざまな画家たちの作品が取り上げられている。

それぞれの解説には美術的な知識のみならず、絵にまつわる歴史、画家や描かれた人の人間ドラマがちりばめられていて、文章を読んでは絵を見直し、絵を観ては、また文章を読み、とじっくり楽しめる一冊だ。

画家が渾身の力をふりしぼって描いた絵。ぜひ細部まで観て、楽しんでください

そして、本作で注目したいのが絵の見せ方。絵画の紹介に先立ち、作品のごく一部を切り取って拡大したものが提示されているのだ。

たとえば表紙のウォーターハウス(イギリスの画家)の作品「パンドラ」では、「開けてはいけない」と夫に言われた箱を、そっと開けようとしている黒髪の美女、パンドラの横顔部分が切り取られている。白くなめらかな肌、赤い唇、箱をのぞき込む目元。箱の中からありとあらゆる災厄が飛び出す寸前の、パンドラの表情がハッとするほど美しく、なまめかしい。

「美しいですよね。この本は月刊誌『文藝春秋』の連載を抜粋してまとめたものですが、連載の開始前、編集者から3ページの展開と聞き、絵は見開きの2ページに大きく載せたい、と思ったんです。それで最初の1ページで絵のごく一部分を見せて、『この絵はどんな絵の一部でしょう』とクイズっぽくしたら面白くなるのでは、と考えました」

名画から切り取られているのは、つぶらな瞳の幼子(おさなご) 、手に握られた一輪のバラ、こめかみにつけぼくろのある老嬢の顔、ちょこんと座った老妖精などなど。「この絵にこんな部分があったの?」と、驚かされるものも多い。

「絵を観るとき、多くの人は主題として描かれたものを観るだけで、細部まで観る人は少ないのでは。でも絵画も小説と同じ。特にミステリー小説家がたくさんの伏線を張っているように、画家も細部にさまざまなことを描き込んでいます。それを知れば、一枚の絵をより楽しむことができると思います。ぜひ細部まで観ていただきたいですね」

中野さんは「絵は、その裏にある物語や時代背景、社会状況、文化などを知ると、より深く理解でき、楽しむことができる」と言う。中野さんの数多くの著書は、どれも、わかりやすい指南書であり、絵画を観賞する新しい目を授けてくれる。

ゴッホの喜び、希望が伝わる「花咲くアーモンドの木」

取り上げた30点の中で中野さんのお気に入りの絵を尋ねてみた。

「どれが好きかは、その日の気分によっても違うので、これ、とは答えられないのですが……。ただ、本書の最後に取り上げた、ゴッホの『花咲くアーモンドの木』は、ゴッホの中でも好きな作品ですね」

美しい一面の青空に、淡いピンクの花を咲かせたアーモンドの木の枝が大きく広がる作品。ゴッホが弟のテオから「長男が生まれ、お兄さんと同じフィンセントと名づけた」という手紙を受け取った直後に描き始めた絵だという。

「ゴッホの短い生涯で、この絵を描いているときが、最も希望と喜びに満ちた幸せなときだったのでしょう。輝くような希望が伝わってきます。日本的な色合いなのも好きですね。この絵のスカーフも持っているんですよ」とほほ笑む中野さん。

写真で身に着けているスカーフがそれ。お気に入りの絵を身にまとう! それも、絵の楽しみ方のひとつ。

最後に、中野さんおすすめの2026年の絵画展を教えていただいた。

「まず、9月に国立新美術館で開催される『ルーヴル美術館展 ルネサンス』。日本初公開のレオナルド・ダ・ヴィンチの『女性の肖像』(通称・美しきフェロニエール)がやってきます。ダ・ヴィンチのような貴重な絵は、なかなか国外に出ないので楽しみです。11月には東京都美術館で『オルセー美術館所蔵印象派展』が。ミレーの『落穂拾い』がきます。それと、好き嫌いがあるかもしれませんが、4月から東京都美術館などで開かれる『アンドリュー・ワイエス展』も。ワイエスの絵は、髪の毛の一本一本が繊細に描かれているなど、近寄って観ると面白いと思います」

PROFILE
中野 京子さん

なかの・きょうこ●作家、ドイツ文学者。北海道生まれ。
「名画の謎」シリーズ、「怖い絵」シリーズ、『西洋絵画のお約束』など著書多数。
月刊誌『文藝春秋』の連載「中野京子の名画が語る西洋史」は14年に及ぶ。

※この記事は「ゆうゆう」2026年3月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。

取材・文/田﨑佳子

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