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27年前、“4人の少女”が放った“60万ヒットの衝撃” “かけがえのない一瞬”を刻んだ名曲

  • 2026.3.1

1999年2月。90年代の区切りを目前に控え、街にはどこか急ぎ足で、それでいて言いようのない高揚感が満ちていた。携帯電話が急速に普及し、情報の速度が劇的に早まり始めた頃。アナログとデジタルが交差するその独特な空気感の中で、あの4人組が放った旋律が冬の澄んだ空気に溶け込んでいった。

SPEED『Precious Time』(作詞・作曲:伊秩弘将)――1999年2月17日発売

社会全体が来る「ミレニアム」という未知の響きに浮き足立つ中、この楽曲はリリースされた。彼女たちがデビュー以来走り続けてきた狂騒の地平に、ふと差し込んだ柔らかな光のような一曲である。

時代の速度を追い越した少女たちの足跡

1990年代後半の日本の音楽シーンを語る上で、SPEEDという存在を避けて通ることはできない。彼女たちは単なるアイドルという枠組みを超え、圧倒的なボーカル力とダンスパフォーマンスで、凄まじい速度で時代の階段を駆け上がっていった。デビューからわずかな期間で数々のミリオンセラーを記録し、彼女たちのスタイルを模倣する若者が街に溢れたことは記憶に新しい。

1999年という年は、彼女たちにとっても一つの成熟を迎えようとしていた時期であった。初期の爆発的なエネルギーはそのままに、表現の幅がより繊細に、そして深みを増していく過程にあったのだ。その結実の一つとして世に送り出されたのが、9枚目のシングルとなるこの作品である。

この楽曲の最大の魅力は、イントロが始まった瞬間に広がる冬特有の透明感と、それを一気に熱くさせる疾走感の対比にある。プロデューサーである伊秩弘将が手がけたメロディは、どこまでもキャッチーでありながら、胸を締め付けるような切なさを内包している。

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SPEED-1998年撮影(C)SANKEI

編曲を担当した水島康貴によるサウンドメイキングも秀逸だ。サックスの音色が少し大人びていて、そこに重なる煌びやかなシンセサイザーの音色は、まるで冬の朝に舞うダイヤモンドダストのような輝きを放っている。

特筆すべきは、やはりメインボーカルの二人が聴かせる歌声の進化だろう。突き抜けるようなハイトーンボイスはさらに磨きがかかり、一方で低〜中音域の響きには、デビュー当時にはなかった憂いが宿り始めている。

激しいダンスを踊りながらも、一切の妥協を許さないその歌声こそが、彼女たちが唯一無二の存在であることを証明していた。この楽曲は、累計セールスは60万枚を超える大ヒットとなった。

27年後の今も響き続ける永遠の瞬間

あれから27年という長い月日が流れた。1999年に私たちが手にしていた最新ガジェットはすでに過去のものとなり、生活の様式も大きく変わった。それでも、冬の冷たい風が頬をかすめる時、ふとこの旋律が脳裏をよぎることがある。

それは、この楽曲が単に「売れた曲」だからではない。青春という名の、二度と戻らない一瞬の輝きを、音という形で見事に結晶化させているからだ。若さゆえの無鉄砲さと、大人へと向かう途中の戸惑い。その両方が、この一曲の中に混じり気なしに封じ込められている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。