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“伝説の日曜劇場”脚本家による6年前のNHK朝ドラ「素晴らしかった」主演女優の“転機”となった最初の代表作

  • 2026.2.11

長年、NHK連続テレビ小説(朝ドラ)を観ているが、『おちょやん』ほど、ヒロインの人生が過酷すぎる作品はあっただろうか、と時々考える。「よくぞ頑張った!」と、心から拍手を送りたくなる主人公・千代。彼女の波乱万丈の物語は、6年経っても色あせることなく、ずっと心に残っている。

千代を演じた主演の杉咲花には、放送後もSNSで「名演技だった」「素晴らしかった」「彼女こそ座長!」といった絶賛の声が鳴りやまない。『おちょやん』は、「再放送してほしい」という希望の多い朝ドラだ。

※以下、本文には初回放送時の内容が含まれます。

NHK連続テレビ小説『おちょやん』

2020~2021年に放送された『おちょやん』は、TBS日曜劇場『半沢直樹』や、放送中のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』の脚本家・八津弘幸が執筆した朝ドラだ。2016年の朝ドラ『とと姉ちゃん』で、高畑充希が演じたヒロインの妹・美子に扮した杉咲が主演を務めた。

あらすじ:
明治の末、極貧の家に生まれた竹井千代は、9歳で道頓堀の芝居茶屋に奉公に出る。そこで目にした芝居の世界に入り、「鶴亀家庭劇」に参加。喜劇団の天海天海(あまみてんかい)と結婚し、理想の喜劇を目指して奮闘。戦後、芝居の世界から去るが、ラジオドラマをきっかけに女優として復活、上方を代表する女優となっていく。
出典:連続テレビ小説 おちょやん 〈第103作〉

あらすじにある“天海天海”は天海一平の芸名で、一平を成田凌が演じた。一平は不倫をするなど、妻の千代を苦しめた夫として、視聴者から反感を買った。

また、千代が極貧の幼少期を送った原因であり、その後も彼女を酷い目に遭わせ続けた父・竹井テルヲをトータス松本が演じたが、テルヲは“朝ドラ史上最も酷い父親”と称されている。
SNSには「朝ドラクズ男2トップを出したおちょやん」などのコメントが見られるが、テルヲと一平は、ちょっと笑ってしまうくらいのクズ男。そんな2人と人生を歩んだ千代は、心から応援したくなるヒロインであり、愛おしい存在として忘れがたい。

千代の進む道を示す印象的な人物

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杉咲花 (C)SANKEI 

困難な人生を送る千代だが、彼女はとても前向きで、素敵な人物との出会いも多々あるのが良かった。特に印象的だった人物は、千代の奉公先の芝居茶屋『岡安』の女将・岡田シズ(篠原涼子)と、千代の最初の芝居の師匠となった、劇団『山村千鳥一座』の座長・山村千鳥(若村麻由美)。2人ともきっぷのいい女性で、千代のことを見守ってくれて、進む道を示してくれる存在となった。

千鳥を演じた若村は、朝ドラヒロイン出身(『はっさい先生』)。朝ドラファンにとっては、若村と杉咲という2人の朝ドラヒロインの共演シーンは、感慨深いものとなった。
シズ役の篠原は、日本テレビ系・日曜ドラマ『パンチドランク・ウーマン -脱獄まであと××日-』に主演している。『おちょやん』の出演者は、現在放送中の民放ドラマやNHK大河ドラマで活躍している俳優たちが複数出演しており、見つける度に、SNSでは「『おちょやん』の○○役だった人!」と盛り上がっている模様だ。

千代の弟を演じた倉悠貴は多くの作品で活躍中

何と言っても、主演の杉咲と、夫役だった成田は、日本テレビ系・水曜ドラマ『冬のなんかさ、春のなんかね』で、カップル役で共演していて、「転生した世界線?」などの声が上がり、SNSを大いにざわつかせている。

さらに、千代の弟・竹井ヨシヲを演じた倉悠貴まで、杉咲が演じている主人公・土田文菜の高校時代の恋人役で登場。千代とヨシヲは、テルヲのせいでつらい子ども時代を送った上に、生き別れとなってしまい、再会した後も胸が張り裂けるような展開が待ち受けていた。
そんな姉と弟を演じた2人の再共演に、SNSには「千代と弟のヨシヲが元恋人同士になるなんて驚き!」といったコメントが投稿されており、みんなずっと『おちょやん』を忘れられないんだなと実感した。

筆者は、『おちょやん』放送当時に倉の演技の上手さに引き込まれ、そこから彼が非常に気になる俳優となった。Snow Manの目黒蓮がシーズン2に出演することでも話題の海外ドラマ『SHOGUN 将軍』にも倉は、真田広之が演じている徳川家康にインスパイアされた主人公・吉井虎永の息子・吉井長門役で出演した。
倉は、朝ドラには『おちょやん』のほかに『あんぱん』にも出演。八津脚本の大河ドラマ『豊臣兄弟!』では黒田官兵衛を演じるほか、『教場』シリーズなどの映画でも活躍している。

千代の家族が3人も登場する大河ドラマ

『豊臣兄弟!』は、倉に加え、テルヲ役のトータス松本など、『おちょやん』のキャストの出演が続けて発表されたことでも話題だ。テルヲが再婚した栗子を演じた宮澤エマは、『豊臣兄弟!』の第1話から登場している。千代の家族の3人を、放送中の大河ドラマで見られるなんて、朝ドラ&大河ファンにはたまらないだろう。

最後に、千代の初恋の人・小暮真治を、若葉竜也が演じたことについても触れておきたい。小暮は、役者を目指す千代が入った「鶴亀撮影所」で助監督をしていた人物。親切な小暮と親しくなった千代は、彼に恋をするが、残念ながら失恋してしまう。
千代の切ない初恋も、『おちょやん』を語る上で忘れられないエピソードだ。杉咲と若葉は、杉咲主演のドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』で共演し、多くのファンを虜にした。

千代が好きになった2人の男性、一平と小暮を演じた成田と若葉がそれぞれ、後に杉咲主演のドラマ2作で、彼女と深い関わりを持つキャラクターを演じているのが興味深い。

『おちょやん』は、杉咲の転機となった最初の代表作ではないかと思う。彼女の演技が素晴らしいからこそ、朝ドラファンの間で語り継がれる作品として、再放送が熱望されているに違いない。


ライター:清水久美子(Kumiko Shimizu)
海外ドラマ・映画・音楽について取材・執筆。日本のドラマ・韓国ドラマも守備範囲。朝ドラは長年見続けています。声優をリスペクトしており、吹替やアニメ作品もできる限りチェック。特撮出身俳優のその後を見守り、松坂桃李さんはデビュー時に取材して以来、応援し続けています。
X:@KumikoShimizuWP