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「俺は大丈夫」保健指導を無視し続けた男性。管理栄養士が忘れられない、最悪の面談の『5年後の結末』

  • 2026.1.26

筆者の話です。管理栄養士として特定保健指導を行っています。ある日、一言も話さず拒絶的な態度を取る男性と面談しました。その後、偶然その男性の近況を耳にした私は、言葉を失いました。もっと早く気づいていれば……。

画像: 「俺は大丈夫」保健指導を無視し続けた男性。管理栄養士が忘れられない、最悪の面談の『5年後の結末』

保健指導、最後の一人

私は管理栄養士として、特定保健指導の仕事をしています。

今から10年前のこと、ある企業から従業員への集団指導の依頼を受けました。

担当は10名で、一人30分以内で面談を行い、次の対象者までの休憩はわずか5分というタイトなスケジュールでした。

午前中に5人、午後に入ってさらに4人の面談を終えました。

どの対象者の方も協力的で、自分の健康について真剣に話し、アドバイスを聞いてくれました。

「こんな風に話を聞いてもらえて良かった」と感謝してくれる方もいました。

そして、残るは最後の一人。

「よし、あと一人。がんばろう!」

私は気合を入れ直し、対象者Xさんが来るのを待ちました。

無言の面談

しかし、面談予定時刻を10分過ぎてもXさんは現れません。

会社側の担当者に連絡を取ると、ようやくXさんが現れました。

Xさんはどこか居心地が悪そうで、終始視線を落としたまま椅子に座りました。

「こんにちは。今日はよろしくお願いします」

私が笑顔で挨拶をしても、Xさんは一言も発しませんでした。

目も合わせず、無表情のまま椅子に座ります。

「では、まず現在の生活習慣についてお伺いしますね。普段、朝食は食べていますか?」

無言でうなずきます。

「お酒は飲まれますか?」

「週に何回くらいですか? 三回以上?」

うなずきます。

どんな質問をしても、返ってくるのは「うなずく」か「首を振る」だけ。

一言も言葉を発してくれません。

私は20年のキャリアの中で、ここまで聞き取り調査に苦戦したことは初めてでした。

「運動習慣についてもお聞きしたいのですが」

必死に質問を続けましたが、Xさんの態度は変わりませんでした。

まるで、私の存在そのものを拒絶しているかのようでした。

何とか30分の面談時間を使い切り、最低限の情報だけを聞き出しました。

「では、これで終了です。お疲れ様でした」

私が締めくくると、Xさんは挨拶もせずに席を立ち、さっさと部屋を出て行きました。

拒絶の理由

面談終了後、会社の担当者が申し訳なさそうに話しかけてきました。

「すみませんでした。Xさん、病気とかで話せないわけじゃないんです。この保健指導を受けたくなかったみたいで」

「そうだったんですか」と私は答えました。

担当者は続けました。

「実は彼、去年の健康診断でも引っかかっていたんです。でも『俺は大丈夫』って言って、何も改善しようとしなくて。今回も上司に無理やり参加させられたような形でした」

ああ、そういうことか。私はようやく理解しました。

それから5年後、私は別の企業から依頼された保健指導をしていた時、偶然にもXさんの会社の担当の方に会いました。

世間話の流れから、Xさんの話題になりました。

「ああ、Xさん……実は3年前に倒れて、入院したんですよ。脳梗塞だったみたいです。幸い命は助かったんですけど、今もリハビリ中で」

私は言葉を失いました。

伝えられなかった思い

「Xさん、今は本当に変わったんですよ。リハビリの先生や栄養士さんの言うこと、とても真面目に聞いてるって。『もっと早く気づいていれば』って、いつも言ってるみたいです」

私は複雑な気持ちになりました。

「あの時、もっと違う接し方ができていれば。本人の心の壁を少しでも溶かすことができていれば……」

防げたかもしれない未来を思うと、専門職として悔しさがこみ上げます。

健康指導の現場では、受け入れる準備ができていない人もいます。

その拒絶の裏には、恐れや無関心、あるいは「自分だけは大丈夫」という根拠のない自信が隠れていることがあります。

Xさんは、身をもってそのことを学んだのでしょう。

この出来事以来、私は「話を聞いてくれない」と嘆くのではなく、相手がなぜ拒絶しているのか、その背景をより深く想像して向き合うようになりました。

私ができることは、これからも一人ひとりに真摯に向き合い続けることだけ。

そして、Xさんのような後悔を抱える人が、一人でも減ることを祈るばかりです。

【体験者:50代・筆者、回答時期:2025年12月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:藍沢佑菜
管理栄養士の資格を持つ、2人の自閉症男子のママ。自身の育児環境の変化をきっかけに、ライター活動をスタート。食と健康を軸に、ライフスタイル全般のコラムを得意とし、実体験に基づいたリアルな記事を執筆中。専門的な情報を「わかりやすく、すぐに日常に取り入れられる形」で伝えることが信条。読者の「知りたい」に寄り添い、暮らしを整えるヒントを発信しつづけている。

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