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5本指じゃない人間は、AIにとってエラー? 思いがけず浮かび上がらせた裂手症の事例からAI時代の問いを考える

  • 2026.1.18
5本指じゃない人間は、AIにとってエラー? 思いがけず浮かび上がらせた裂手症の事例からAI時代の問いを考える
『AIが消し去る声』

『AIが消し去る声』が突きつける、テクノロジー時代の静かな暴力

アーティスト・窪田望が監督したドキュメンタリー作品『AIが消し去る声』が、ドイツの国際映画祭Berlin Indie Film Festivalのショートドキュメンタリー部門で最優秀監督賞を受賞した。本作は5つの国際アワードを受賞、日本国内でも映画祭での上映や、「AIと倫理」をテーマにしたトークイベントを開催している。

本作は「AI社会の背後にある分類の暴力性」を、生まれつき5本指ではなく暮らす裂手症の当事者やその家族、医療従事者への取材映像をもとに浮かび上がらせる作品だ。本作で投げかけている問いを、より広範な国際的対話へと拡張していくため、日本国内でも東京ドキュメンタリー映画祭での上映や特別トークイベントを開催するなど、精力的に活動を展開している。

本作が最優秀監督賞を受賞したBerlin Indie Film Festivalは、ベルリンで開催される国際的なインディペンデント映画祭。世界中から集まった映画を上映し、独立系の才能ある制作者の発掘と紹介に力を入れている。同映画祭の受賞作はベルリン各所の映画館で上映され、長編・短編・ドキュメンタリーなど幅広いジャンルで多数の賞が授与される。映画技術や表現の独自性、ストーリーテリングの質を重視し、新進クリエイターにとって国際的な発信と評価の場となっている。

生成AIの現場では、手の指が5本にならないといったトピックスがしばしば話題になる。エンジニアは、5本指にならない指を5本指に近づけるために大量のGPUや電気代を投入するが、果たしてその行為は単なるエラー修正と記述してよいものなのか。「そこには排斥されているマイノリティの暮らしがあるのではないか」。窪田はそう考え、生まれつき5本指ではなく暮らす裂手症の当事者やその家族、医療従事者に取材を行い、ドキュメンタリー形式の映像作品を制作した。

本作で問題提起しているのは、「AIの進化の影で無自覚に進むマイノリティの排斥」である。この問いをより広範な国際的対話へと拡張していくため、日本国内においても精力的に活動を展開している。2025年12月には、東京ドキュメンタリー映画祭での上映や、東京・渋谷で開催されたAI BB TOKYO 2025のプログラムの一環として、特別上映およびトークイベントを開催した。

特別上映&トークイベントでは、本作上映後に窪田監督が登壇し、「AIと倫理」をテーマに鑑賞者とオープンなディスカッションを実施した。「AIに何を教え、何を教えないべきか」「そもそも私たちは倫理的な態度を取ることができるのか」「AIがまったく知らないデータは、どのように扱われるのか」といった問いが次々と投げかけられ、窪田と鑑賞者のあいだで応答が往復する、緊張感のある時間となった。ディスカッションを通して共有されたのは、特定の結論に収束しない「AIと倫理」というテーマの深さと、考え続けることの重要性だった。

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