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「嫌な仕事が始められない」脳メカニズムが明らかに

  • 2026.1.16
Credit: canva

「やらなければいけない」と分かっているのに、どうしても手がつかない。

クレーム対応の電話や気が重い資料作成など、嫌な仕事ほど最初の一歩が踏み出せない経験は、多くの人に覚えがあるはずです。

この現象は怠けや性格の問題なのでしょうか。

実はその裏には、「やる気を出さない」のではなく、「やる気を止める」脳の仕組みが関わっている可能性が、京都大学の最新研究で示されました。

研究の詳細は2026年1月9日付で科学雑誌『Current Biology』に掲載されています。

目次

  • やる気が出ないのではなく「始められない」
  • 「やる気ブレーキ」を担う脳回路

やる気が出ないのではなく「始められない」

この研究を行ったのは、京都大学高等研究院ヒト生物学高等研究拠点(WPI-ASHBi)を中心とする研究チームです。

研究者たちは、「嫌な仕事に手がつかない状態」を、結果への判断ではなく、「行動を始めるかどうか」という視点から調べました。

実験ではマカクザルに対し、

・報酬だけが得られる課題

・報酬はあるが、不快な刺激も伴うストレスの高い課題

を用意し、「どちらを選ぶか」ではなく、「そもそも試行を始めるかどうか」に注目しました。

その結果、ストレスのある課題では、報酬の価値を理解していても、課題そのものを始めないケースが増えることが分かりました。

つまり、「やる意味が分からない」から動けないのではなく、「始める段階でブレーキがかかっている」状態だったのです。

「やる気ブレーキ」を担う脳回路

さらにチームは、脳のどこがこのブレーキを担っているのかを調べました。

注目されたのは、報酬や動機づけに関わる「腹側線条体」と、その信号を受け取る「腹側淡蒼球」をつなぐ神経経路です。

この経路を、特定の回路だけ一時的に働きにくくする方法で抑えたところ、ストレスの高い課題でも、サルはためらわずに行動を開始するようになりました。

一方で、報酬の大きさの判断や、どちらを選ぶかといった意思決定自体は、ほとんど変化しませんでした。

この結果は「嫌な仕事を避ける」のは判断力の問題ではなく、行動開始を抑えるブレーキ回路が強く働いているためであることを示しています。

怠けではなく、脳のブレーキ

この研究が示したのは、「嫌な仕事が始められない」という状態が、根性や意志の弱さでは説明できないという点です。

私たちは、やる気が足りないのではなく、ストレスによって「やる気ブレーキ」が強く踏まれているだけなのかもしれません。

この仕組みを理解することは、先延ばしの正体を知る手がかりになるだけでなく、うつ病などで見られる意欲低下の理解や、将来の治療法開発にもつながる可能性があります。

「始められない自分」を責める前に、脳の中で何が起きているのかを知ることが、最初の一歩になるのかもしれません。

参考文献

嫌な仕事を「始められない」脳回路を解明
https://ashbi.kyoto-u.ac.jp/ja/news_research/21576/

元論文

Motivation under aversive conditions is regulated by a striatopallidal pathway in primates
https://doi.org/10.1016/j.cub.2025.12.035

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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