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13歳の少年が洞窟で「地底湖」を発見した物語

  • 2026.1.14
Credit: canva

もし、子どもの頃に遊び場にしていた洞窟の奥で、底の見えない巨大な湖に出くわしたらどうするでしょうか。

1905年、アメリカ・テネシー州で実際にそんな体験をしたのが、当時わずか13歳の少年でした。

彼の偶然の行動が、後に「北米最大級の地底湖」と呼ばれる場所を人類の前に現すことになります。

これは好奇心が歴史を動かした100年以上前の実話です。

目次

  • 遊び場だった洞窟が歴史の舞台だった
  • 13歳の少年が見つけた「失われた海」

遊び場だった洞窟が歴史の舞台だった

その洞窟は、テネシー州スウィートウォーター近郊にある巨大な洞窟群「クレイグヘッド洞窟」です。

この洞窟は1905年以前から知られており、19世紀初頭にはチェロキー族の人々が避難場所として利用していました。

洞窟の奥には「評議の間」と呼ばれる空間があり、土器や装身具、矢じりなどの遺物が見つかっています。

さらに1800年代になると、ヨーロッパ系の入植者たちがこの洞窟を発見し、年間を通して涼しい環境を利用してジャガイモなどの野菜を保存していました。

南北戦争の時代には、南軍兵士が洞窟内の鉱物を火薬の原料として使っていたことも分かっています。

洞窟の壁には「1863」という数字が焼き付けられており、炭素年代測定から、その年に刻まれた可能性が高いとされています。

さらに時代をさかのぼると、約2万年前には更新世の巨大なジャガーが洞窟内に迷い込み、脱出を試みる途中で裂け目に落ちて命を落とした痕跡も残されています。

つまりこの洞窟は、人類史と自然史が幾層にも重なった場所だったのです。

13歳の少年が見つけた「失われた海」

1905年、そんな洞窟を遊び場にしていた少年ベン・サンズは、ある日、壁の奥に続く未知の隙間を見つけます。

その穴は、自転車のタイヤほどの大きさしかなく、洞窟探検の常識から見れば、決して進むべき場所ではありませんでした。

しかし少年は、その狭いトンネルを約12メートルも這って進み、突然、足元が抜ける感覚を味わいます。

彼が落ちた先に広がっていたのは、膝の高さまで水がたまった、巨大な地下空間でした。松明の光では、反対側の壁がまったく見えません。

少年は空間の広さを確かめようと、四方八方に泥団子を投げましたが、返ってくるのは水面に落ちる音だけでした。

こうして発見されたのが、後に「ロスト・シー(失われた海)」と呼ばれる地底湖です。

その後、洞窟内は発破によって拡張され、現在では観光用に整備されています。

湖の見える範囲だけでも、長さ約243メートル、幅約67メートル、水深は少なくとも約21メートルに達します。

ダイバーによる調査では、水中に続く空間を含め、5.2ヘクタール以上が確認されていますが、湖の全貌はいまだ解明されていません。

現在、この地底湖は「ロスト・シー・アドベンチャー」として公開され、年間およそ15万人が訪れています。

地底湖への探検映像はこちら。

湖には約300匹のニジマスが放流されており、長年暗闇で暮らすうちに、視力や体色の一部を失っていることも知られています。

この地底湖の発見は、科学的な探査計画や大規模な調査から生まれたものではありません。

きっかけは、洞窟に慣れ親しんでいた13歳の少年の、純粋な好奇心でした。

地下約43メートルに広がる巨大な湖は、100年以上たった今も、その全貌を明かしていません。

人類が自然のすべてを知り尽くしていないことを、この1905年の出来事は静かに教えてくれます。

身近な場所にも、まだ「失われた世界」は眠っているのかもしれません。

参考文献

In 1905, A 13-Year-Old Boy Explored A Cave And Found A Vast “Lost Sea” Beneath The US
https://www.iflscience.com/in-1905-a-13-year-old-boy-explored-a-cave-and-found-a-vast-lost-sea-beneath-the-us-82194

Exploring the “rich history” of America’s largest underground lake
https://www.cbsnews.com/news/the-lost-sea-exploring-americas-largest-underground-lake-tennessee/

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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