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「どうぞ、次で降りますから」席を譲った私、本当は3つ先だけど──咄嗟に『ウソをついた理由』

  • 2026.1.4

バスや電車で「席を譲る」という行為。頭では分かっていても、勇気がでなかったり、反応が怖かったりして躊躇(ちゅうちょ)してしまうことはありませんか? 筆者の知人A子も、ある日バスの中で小さな葛藤を経験したそうです。「良かれと思ってしたこと」が空回りしたとき、私たちはどうすればいいのでしょうか。彼女の体験談をご紹介します。

画像: 「どうぞ、次で降りますから」席を譲った私、本当は3つ先だけど──咄嗟に『ウソをついた理由』

事務所を飛び出して

法律事務所で働く私は、仕事柄、裁判所と事務所を行き来する毎日。

移動はいつも市営バスです。

事務所に缶詰めではなく、外の空気に触れられるこの時間が密かな楽しみ。

バスに揺られ街を眺めるひとときは、慌ただしい業務の中で活力をチャージする大切な時間なのです。

優しさが空回りするとき

ある日、大きな紙袋を持った高齢の女性がバスに乗車してきました。買い物帰りなのでしょうか、両手には大きめの紙袋が握られています。

私は迷わず「よかったら、どうぞ」と声をかけました。しかし、返ってきたのは予想外の反応でした。

「結構です。私はまだ元気よ、そんなに年寄りに見えるかしら」

少しトゲのある言葉とともに、頑なに断られてしまったのです。

もちろん相手に悪気はなかったのかもしれません。けれど、「良かれ」と思ったことが裏目に出てしまった……。

それ以来、席を譲ろうとするたびに「また断られるのではないか」と、足がすくむようになってしまいました。

溢れる感謝と、優しい嘘

しばらくして、再び似たような状況が訪れます。前回の記憶が蘇り、心臓がトクトクと音を立てました。

「どうしよう、譲りたいけど迷惑かな……」

それでも、「もし断られてもいいや」と勇気を振り絞って席を立ちました。恐る恐る声をかけると、今度の女性は花が咲いたように微笑み、何度も感謝の言葉を繰り返してくれたのです。

「ありがとうね、本当に助かるわ」

その熱量に嬉しさと気恥ずかしさが一気に込み上げ、私はとっさに嘘をついてしまいました。

「大丈夫です! 次で降りますから」

本当はまだ3つも先の停留所だというのに、その場の勢いで私は本当にバスを降りてしまったのです。

小さな決意

思いがけず途中下車し、事務所まで歩くことになりました。けれど、自分の足で地面を踏みしめると、不思議と心は羽が生えたように軽いのです。
遠回りをしましたが、気持ちは晴れやか。「これからは、自分の気持ちに素直でありたい」。そう心に誓った私は、軽やかな足取りで事務所への道を急ぎました。

【体験者:30代・女性事務職、回答時期:2025年10月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:Yumeko.N
元大学職員のコラムニスト。専業主婦として家事と子育てに奮闘。その傍ら、ママ友や同僚からの聞き取り・紹介を中心にインタビューを行う。特に子育てに関する記事、教育機関での経験を通じた子供の成長に関わる親子・家庭環境のテーマを得意とし、同ジャンルのフィールドワークを通じて記事を執筆。

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