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【作家・森絵都さんインタビュー】年末年始のおこもりにおススメ【推薦図書】

  • 2025.12.26

『カラフル』『みかづき』などの代表作で、幅広い世代の読者を魅了してきた森 絵都さん。
6年ぶりとなる長編小説『デモクラシーのいろは』は民主主義の根源について、考えさせられる一冊です。

長編を書き上げるには何よりも体力が必要

GHQ占領下の日本を舞台に、「民主主義とは何か」と問いかける森 絵都さんの新作『デモクラシーのいろは』。
「戦後」という時代へ関心を抱いたことが、執筆のきっかけだったそう。

「それまでの全体主義から民主主義へと大きく価値観が切り替わったのが、戦後の大きな特徴。その民主主義を柱に物語ができないかと考え、女性たちに民主主義を教えるというストーリーにたどり着きました」

構想が生まれたのは5年前。
そこから2年を費やし、戦中戦後の膨大な資料を読み込むことで、史実のみならず街の風景や人々の暮らしまで立体的に描き出すことが可能となりました。

「私自身は体験していない時代なので、自分の中に蓄えがないと物語が立ち上がってこない。どんなストーリーを書くかは後からでいいので、まずは時代の空気感を掴もうと考えました」

生徒となる4人の女性と教師役の日系二世の男性。物語を彩る登場人物も個性豊かです。

「一人ひとりがどこで生まれ、どんな家庭で育ち、どんな戦争を体験してきたのか…。まずはそこを作り込むことから始めました。先生を日系二世にしたのは、同胞意識だけでなく、冷静に生徒を見つめられる人物にしたかったから。日系二世の視点であれば、現代に生きる私と同じ距離感で彼女たちを捉えられるのではないかと考えました」

読み進めるうちに、戦後の日本を学び直してみよう、と思わせてくれるのも本作の魅力。

「そうなってくれれば嬉しいですね。執筆前の私を含め、戦後について意外と知らない人は多いのでは。〝焼け野原〟の一言で表現されがちですが、その背景にはそれぞれ異なる無数の声がある。資料を通じて、多くの一般市民の無念を知ることで、『絶対に書き上げなければ』とモチベーションが高まりました」

久しぶりの長編となった本作は、600ページに及ぶ大作に。
書き切るためには体力が不可欠だとあらためて感じたそう。

「ここ5年ほど、自宅にある腹筋マシーンで100回腹筋してから、スクワットと腕立て伏せ
をするのが日課になっています。小説を書くには集中力が必要で、さらに言うと、集中力は体力と直結している。『本当はもっと推敲したいのに、体力がなくてできない』と手を抜くのは絶対に嫌。毎日の運動もそのためです」

『デモクラシーのいろは』 森 絵都 ¥2,310(KADOKAWA)

舞台は終戦直後の1946 年。民主化政策の成果を焦るGHQは、日系二世のリュウに教師役を命じ、それぞれ異なる経歴を持つ4 人の女性を集め、民主主義のレッスンを行う。半年間の学びと共同生活を通じ、彼女たちは何を掴むのか。戦後80年の今年にふさわしい超大作。

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撮影/白井裕介 文/工藤花衣

大人のおしゃれ手帖2025年12月号より抜粋
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

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大人のおしゃれ手帖編集部

大人のおしゃれ手帖編集部

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