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「とんでもなく名作」「全国民観てくれ」7年前 NHKが生んだ至高ドラマ…“今こそ観たい”「最高傑作」として君臨する完成度

  • 2026.2.3

ドラマや映画の中には、物語に深く心を打たれ、人生の指針になるような作品があります。今回は、そんな中から"今こそ観たい名作ドラマ"を5本セレクトしました。本記事ではその第4弾として、大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(NHK総合)をご紹介します。日本初のオリンピック選手から、戦争と震災を越えて東京五輪実現へと走り続けた人々の想いを、落語的語りと疾走感あふれる演出で描いた本作。敗者や名もなき人々の情熱が時代を超えて受け継がれていく、その壮大な物語とは――?

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

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映画「ミーツ・ザ・ワールド」の大ヒット祈願イベントに出席した杉咲花(C)SANKEI
  • 作品名(放送局):大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(NHK総合)
  • 放送期間:2019年1月6日 - 2019年12月15日
  • 出演:中村勘九郎(金栗四三 役)

本作は、連続テレビ小説『あまちゃん』で社会現象を巻き起こした宮藤官九郎さんが脚本を手がけ、日本人とオリンピックの歩みを描いた作品です。主演は中村勘九郎(六代目)さんと阿部サダヲさんが“リレー方式”でつとめています。中村勘九郎さんが演じたのは、日本人として初めてオリンピックに挑んだ1912年ストックホルム大会のマラソン選手・金栗四三。一方、阿部サダヲさんは1964年の東京オリンピック開催に情熱を注いだ田畑政治を演じています。

日本人初のオリンピック選手である金栗四三と、日本にオリンピックを招致した田畑政治。この二人の存在なくして、日本のオリンピック史は語れないといわれるほどの功労者です。1912年ストックホルム大会での初参加と苦い敗北から、1964年の東京オリンピック実現まで――。日本人の泣き笑いが詰まった、激動の半世紀を描いた大河ドラマです。

近現代を走り抜けた異端の大河ドラマ

本作は、大河ドラマとしては異例の「近現代」を舞台に、日本が初めてオリンピックに参加した1912年のストックホルム大会から、悲願の開催となった1964年の東京大会までの52年間を描いた、壮大な物語です。

近現代史を大河ドラマで取り上げるのは実に33年ぶりという挑戦作であり、“知られざる五輪の歴史”にスポットを当てた常識破りのエンターテインメントとして話題を呼びました。

物語は、“日本マラソンの父”金栗四三(中村勘九郎)を描く明治・大正期の前半と、東京オリンピック招致に命を懸けた政治記者・田畑政治(阿部サダヲ)を軸とする昭和期の後半を、リレー形式でつないで描かれました。

さらに、ビートたけしさん演じる落語家・古今亭志ん生が「東京オリムピック噺」を語るナビゲーターとなり、森山未來さん演じる若き日の志ん生(美濃部孝蔵)さんの青春も並行して描かれるなど、落語とスポーツ、そして東京の変遷が交錯する多重構造になっています。歴史の表舞台に立つ主人公たちと、市井の人々の視点が入り混じる、まさに“クドカンマジック”が炸裂した傑作と言えるでしょう。

「おなごも走っていい…」震災に消えたシマと希望のバトン

『いだてん』の大きなテーマの一つが、当時はまだ当たり前ではなかった「女子スポーツ」の始まりです。

その中心人物として、圧倒的な輝きを放ったのが杉咲花さん演じるシマでした。シマは、三島弥彦(生田斗真)が暮らす名家・三島家の女中ですが、金栗や三島がスポーツに打ち込む姿を間近で見るうちに、「走ること」への憧れを抱くようになります。

和服の裾をたくし上げ、足袋姿で早朝の街を走るシマ。その表情には、恥じらいと高揚感が入り混じり、視聴者の心を惹きつけました。なかでも、息苦しさに耐えかねて帯を解き捨て、再び走り出す場面は、女性を縛ってきた旧来の慣習からの解放を象徴する名シーンとして語り継がれています。

女子体育の先駆者・二階堂トクヨ(寺島しのぶ)のもとで学び、やがて教師となったシマは、自らの走る姿を通して、『おなごも走っていい』という自由を体現しました。しかし、運命は残酷でした。1923年の関東大震災…。シマは夫の増野(柄本佑)と幼い娘を遺し、行方不明となってしまうのです。

シマ自身がオリンピックの舞台に立つことは叶いませんでしたが、彼女が人見絹枝(菅原小春)に送り続けた励ましの手紙、そして次世代へ託した情熱はまさに「希望の種」となりました。震災後の「復興運動会」で、シマの志を胸に、絹枝たちが走る姿は、涙なしには見られません。

SNS騒然の再登場――一人二役が生んだ衝撃

杉咲花さんにとって『いだてん』での大きな挑戦の一つが、母・シマとその娘・りくという「一人二役」を演じたことでした。関東大震災で行方不明となったシマの退場は多くの視聴者に惜しまれましたが、震災から13年後、第35回でシマに瓜二つの娘・りくとして再登場した際には、「えっ、嬉しい!」「テンション上がった」「シマちゃんロスだったから最高!」と驚きと喜びの声が広がりました。

杉咲さんは、活発で行動的だった母・シマとは対照的に、りくを「シマより少し控えめな女の子」として演じ分けようと心がけたそう。外見こそ瓜二つでありながら、纏う空気感だけで別人と分からせる表現力は、まさに圧巻でした。

杉咲さんはその後、2020年度後期の連続テレビ小説『おちょやん』でヒロイン・竹井千代を演じ、名実ともに国民的女優の仲間入りを果たします。他にも、映画『市子』『52ヘルツのクジラたち』やドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』などで難役を次々とこなし、実力派女優としての地位を不動のものにしています。

今もその躍進は止まりません。現在放送中の主演ドラマ『冬のなんかさ、春のなんかね』(日本テレビ系)では、繊細な内面を抱える小説家・土田文菜を等身大で好演。今泉力哉監督ならではの会話劇の中で、数分に及ぶ長回しのワンショットにも耐える説得力ある演技や、ふとした瞬間に見せる自然な可愛らしさがSNSでも話題を集めています。

そんな杉咲花さんの名演が味わえる本作を、今こそご覧になってみてはいかがでしょうか?

勝ち負けを超えて…英雄なきリレー

放送当時は視聴率に苦しんだ『いだてん』。しかし、最後まで視聴した視聴者からは「間違いなく名作」「さすがNHK」「超えるドラマはない」「やっぱり最高傑作「とんでもなく名作」「全国民観てくれ」と熱い支持を集めました。評価される最大の理由は、「敗者」や「夢半ばで散った人々」の想いが次世代へ「継承」されていく姿を描き切った点にあるでしょう。

震災や戦争という絶望の中で開催された「復興運動会」は、シマの姿こそなくとも、彼女がまいた種が確実に芽吹いていることを証明する名シーンです。

『いだてん』は、一人の英雄の物語ではありません。無名の誰かが繋いだ想いが歴史を変えていく「バトンリレーの物語」です。シマから人見絹枝、そして東洋の魔女へ――。性別や時代の壁を越えて「希望の火」が受け渡されていく尊さを、杉咲花さんをはじめとするキャスト陣が全身全霊で演じ切りました。

閉塞感を感じる今だからこそ、52年間の壮大なリレーを走り抜けた人々の姿が心に響きます。勝ち負けだけではない、人間味あふれるその「足跡」に、大切な何かを感じ取れるはずです。


※記事は執筆時点の情報です