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「いつまでも待ってます」放送から10年、今なお“続編が熱望”される【日曜劇場の名作】…主演じゃなくとも“異彩を放つ”大河俳優

  • 2026.2.2

ドラマや映画の中には、物語に深く心を打たれ、人生の指針になるような作品があります。今回は、そんな中から"今こそ観たい名作ドラマ"を5本セレクトしました。本記事ではその第3弾として、ドラマ『仰げば尊し』(TBSテレビ系)をご紹介します。音楽に背を向けてきた大人と、行き場を失った高校生たちが、吹奏楽を通して出会い、荒れた学園にもう一度“青春の音”を響かせていく。そんな王道の青春物語が、今なお心を打つ理由とは――?

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

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映画「十一人の賊軍」の初日舞台あいさつに出席した仲野太賀(C)SANKEI
  • 作品名(放送局):ドラマ『仰げば尊し』(TBSテレビ系)
  • 放送期間:2016年7月17日 - 2016年9月11日
  • 出演:寺尾聰(樋熊迎一 役)ほか

横須賀でブラスバンドを指導していた樋熊(寺尾聰)に、美崎高校の校長・小田桐(石坂浩二)が声をかけます。問題を抱える生徒たちへの指導を見直したいと考え、協力を依頼するためでした。娘の奈津紀(多部未華子)は反対するものの、樋熊は話を聞くために美崎高校を訪れます。
そこで樋熊は、不良グループの青島裕人(村上虹郎)らと出会い、教師や大人を軽視する彼らの態度を目の当たりにしました。この出来事をきっかけに、樋熊は美崎高校で生徒たちと向き合うことを決意。
元プロのサックス奏者として全校集会で話をした樋熊は、生徒たちに自分の時間の使い方を考えるよう呼びかけました。その言葉に心を動かされた吹奏楽部部長の有馬渚(石井杏奈)が顧問就任を願い出て、樋熊の指導による部活動が始まるのですが――。

実話が原点――感動の吹奏楽ドラマ

本作は、1980年代に神奈川県立野庭高等学校の吹奏楽部を全国トップへ導いた中澤忠雄先生の実話をもとに、石川高子さんが記したノンフィクション『ブラバンキッズ・ラプソディー』『ブラバンキッズ・オデッセイ』を原案とするオリジナルドラマです。

主演の寺尾聰さんにとって、「日曜劇場」での主演は28年ぶり。娘役の多部未華子さん、校長役の石坂浩二さんに加え、生徒役には真剣佑(現・新田真剣佑)さん、村上虹郎さん、北村匠海さん、太賀(現・仲野太賀)さん、佐野岳さん、石井杏奈さんら、当時、“次のスーパースター”と注目を集めていた若手俳優陣が揃いました。

制作陣には、社会現象を巻き起こした『ROOKIES』の平川雄一朗監督や脚本のいずみ吉紘さんらが再集結。盤石の制作陣によって制作された本作は、第1話から話題を呼び、吹奏楽経験者に限らず、多くの視聴者から支持を集めました。

一人では叶えられない夢がある――不良少年たちが出会った音楽

物語は、事故の後遺症で音楽から離れていた元サックス奏者・樋熊迎一(寺尾聰)が、荒れた美崎高校に赴任してくるところから始まります。そこには、夢を失い、将来に希望を持てずにいる問題児たちがいました。

樋熊は、生徒たちの反発を受けながらも距離を置くことなく向き合い続けます。「音楽は心で奏でるものだ」と信じ、生徒一人ひとりの内面と向き合うことで、その心の奥底に眠る情熱に火を灯していきます。

物語の軸となるのは、不良グループの木藤良蓮(真剣佑)、青島裕人(村上虹郎)、安保圭太(北村匠海)、高杢金也(太賀)、桑田勇治(佐野岳)の5人。

かつては固い絆で結ばれていたものの、ある事件をきっかけに音楽を諦めていた彼らが、再び楽器を手にし、バラバラだった音が“一つのアンサンブル”へと変わっていく過程は圧巻のひと言です。性格の異なる5人が互いを補い合い、チームとして成長していく姿も見どころのひとつ。

本作が描くのは、「一人では叶えられない夢がある」ということ。同時に、夢半ばで挫折した大人(教師)が、青春真っ只中の生徒たちと共に、もう一度「自身の青春」を取り戻していく再生の物語でもあります。吹奏楽を通して他者と向き合い、同じ目標に向かう中で育まれる信頼と友情。その姿は、世代を超えて観る者の胸を打ちます。

仲野太賀が魅せた名演技

本作を語る上で欠かせないのが、高杢金也役を演じた仲野太賀さんです。現在、大河ドラマ『豊臣兄弟!』で主人公・豊臣秀長を演じ、兄・秀吉(池松壮亮)を支える“天下一の補佐役”として理知的で誠実な姿が印象的な仲野さんですが、本作ではそのイメージを覆す存在感を放っています。

パンチパーマにヒゲ、派手な柄シャツに長ランといった個性的なファッション。そして、語尾に「〜じゃねぇし!」「〜だしっ!」をつける特徴的な話し方――。お調子者で愛らしい高杢というキャラクターは、物語の絶妙なアクセントとなりました。

仲野さんは、セリフのないシーンでも、見切れている場面でも、高杢としての仕草や表情を表現し続けたといいます。役と自分を切り離さない没入感。そして普段のおちゃらけた姿と、ティンパニを叩く際の真剣な眼差しとのギャップ――。その徹底した役作りが、キャラクターに“血の通ったリアリティ”を吹き込んだのです。

仲野さんの演技の根底にあるのは、10代の頃、オーディションに落ち続けた苦い経験を経て、どんな小さな役にも生命を吹き込もうとするその執念。それが、本作の「高杢」という愛すべきキャラクターを作り上げ、現在の大河ドラマ主演という大きな成功へと繋がったのでしょう。

『豊臣兄弟!』で演じる秀長の、周囲の混乱を冷静にさばく「調整力」や、大切な人を守ろうとする「誠実さ」。その演技の原点は、仲間を想い、ムードメーカーとしてチームを支えながらティンパニを叩いていた『仰げば尊し』の高杢の中に、すでに息づいていたのかもしれません。

主題歌と重なる“魂の合奏”

放送から約10年が経った今も、本作の魅力は少しも色褪せていません。その理由は、今や日本のエンタメ界を背負う仲野太賀さん、村上虹郎さん、北村匠海さんらが、大ベテランである寺尾聰さんに、全身全霊でぶつかり合った迫真の演技が記録されているからです。

寺尾さんは撮影中、若手俳優たちを対等な表現者として接したといいます。彼らがその期待に応え、本気で火花を散らした瞬間は、ドキュメンタリーのような熱気にあふれています。

今なお「私の青春そのもの」「続編が観たい」「いつまでも待ってます」「映画化してほしい」といった声が絶えないのは、その熱量が私たちの心に伝わった証拠でしょう。

誰からも期待されていなかった無名校が起こした奇跡。その情熱は、閉塞感の漂う今の時代だからこそ、より強く胸に響きます。若きスターたちが本気で挑んだこの物語は、“今こそ観たい名作ドラマ”と呼ぶにふさわしい一作です。


※記事は執筆時点の情報です