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「うちの子、タレント事務所に入ったの」自慢するママ友。だが、TVに映った役柄に思わず失笑【短編小説】

  • 2025.12.25
「うちの子、タレント事務所に入ったの」自慢するママ友。だが、TVに映った役柄に思わず失笑【短編小説】

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

息子自慢がすごいママ友

幼稚園の送り迎えで顔を合わせるたびに、「うちの子、またスカウトされちゃって」と鼻高々に話すママ友がいます。
彼女の息子くんは確かに可愛らしい顔立ちをしていて、最近あの大手タレント事務所に所属したばかり。「将来はモデルか俳優ね」と彼女の期待は膨らむ一方で、私も「楽しみだね」と話を合わせていました。

そんなある日、彼女から「ついにテレビ出演が決まったの!」と興奮気味に連絡が来ました。
なんでも、人気バラエティ番組内の「感動の実話・再現ドラマ」に出演するとのこと。
「主人公の幼少期に関わる、すごく大事なシーンだから!」と目を輝かせる彼女に押し切られ、仲の良いママ友数人で彼女の家に集まって鑑賞会をすることになったのです。

当日は宅配ピザや高級なケーキが用意され、まるで映画の試写会のような気合の入れようでした。
「もうすぐ出るから! 瞬き禁止よ! 録画もしてるけど、生で見てね!」 番組が始まり、いよいよ再現ドラマのコーナーへ。
感動的なBGMとともに、主人公の少年時代が描かれます。

「あ、ここ! この公園のシーン!」

彼女が叫んだ瞬間、私たちは画面に食い入るように注目しました。
画面の手前では、主人公役の子役が涙ながらに転校する友人と別れを惜しんでいます。
カメラがゆっくりとズームアウトしていき、感動のクライマックスへ。

「ほら、あそこ! 後ろ!」

悲しい現実

彼女が指差した先。
そこには、主人公たちの遥か後方、ピントも合っていない砂場で、ただ黙々と一人で山を作っている子供の背中が小さく映っていました。

「……え?」
誰かの小さな呟きが漏れました。
セリフはもちろんありません。
顔すら映っておらず、着ている服の色でかろうじて「あ、今の息子くんだ」と判別できるレベル。
しかも、カメラのピントは手前の主人公たちに合っているため、息子くんは完全に背景の「モブ」と化していました。出演時間はわずか数秒。

「……あれ? 事務所の人は、もっとアップになるって……」

さっきまでの高揚感が嘘のように、リビングには重苦しい静寂が漂います。
「す、すごいね、映ってたね」と誰かがフォローを入れようとしましたが、あまりにも地味すぎる背景扱いに、言葉が続きません。
ママ友自身も、まさかここまで「その他大勢」だとは思っていなかったのでしょう。
真っ赤な顔をして、「き、きっと編集でカットされちゃったのよ…」と震える声で言い訳をしていました。

その後、残ったケーキを食べる時間の気まずかったことと言ったらありません。
あんなに盛大な鑑賞会を開いてしまった手前、誰もその話題に触れることができず、ただテレビの音だけが虚しく響いていました。

ようやくお開きになり、逃げるように彼女の家を出た帰り道。
私は冷たい夜風に当たりながら、さっきの光景を思い出していました。
あんなに「スター誕生」のような騒ぎをしておいて、映ったのはピンボケの背中だけ。
「ふっ……」 悪いとは思いつつも、そのあまりのギャップに、私は思わず夜道で失笑してしまったのでした。

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。

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