「パソコン使えないの？これだからおばさんは」笑う新人。だが、私が若手社員のミスを救った結果【短編小説】

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

私は経理部で働く事務員です。
勤続20年、正確さを第一に仕事をしてきました。
ある日、配属されたばかりの新人の男の子が、私が伝票と電卓を使って数字の確認をしているのを見て、鼻で笑いました。

「え、今どき電卓ですか？エクセルなら一瞬で終わるのに。これだからおばさんは非効率なんですよね。パソコン使えないんですか？」

彼は「自分はデジタルネイティブだ」と豪語し、全ての作業をパソコン上の計算式だけで済ませていました。

「機械に任せればミスなんて起きないっすよ」

そう言って、私が地道に行う目視確認や検算を「時間の無駄」と切り捨てていたのです。
私は苦笑いして、「検算は大事よ」とだけ伝えましたが、彼は聞く耳を持ちませんでした。

そして迎えた決算期。
部長への報告直前に、新人が青ざめた顔で叫びました。

「やばい！合計金額が合わない！なんでだ！？」

どうやら、彼が組んだ計算式に誤りがあり、どこかで数字がズレてしまったようです。
しかし、彼は普段から機械任せで「数字の中身」を理解していないため、どこが間違っているのか見当もつきません。

「どうしよう、もう会議まで時間がない……！」

パニックになる彼を横目に、私は静かに彼の手からマウスを取りました。

「ちょっと貸して」私はキーボードの上に手を置くと、ショートカットキーを駆使して、猛烈なスピードで画面を操作し始めました。
マウスすら使わないその速さに、彼は目を丸くしています。

「あ、ここの参照セルがズレてるわね。あと、この関数は間違ってる」

私は瞬時にエラーを特定し、数分で正しい表に修正しました。

「はい、直しておいたわよ」

呆然とする彼に、私はニッコリ笑って言いました。

「私、この会社の経理システムが導入された時の立ち上げメンバーなの。パソコンが『使えない』んじゃなくて、機械のミスを見抜くために、あえてアナログで確認していたのよ」

彼は赤面し、蚊の鳴くような声で

「すみませんでした……」

と謝りました。
それ以来、彼は私にマウントを取るのをやめ、真面目に検算をするようになりました。
便利さを使いこなすには、基礎知識が必要ということですね。

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