「無能は雇わないよ」と圧迫面接する男。数年後、その男が私の会社に、面接を受けにきた結果【短編小説】

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

あれは私がまだ就活生だった頃の話です。

第一志望企業の最終面接。通された部屋には、ふんぞり返って座る男性面接官が一人いました。彼は私の履歴書を指先でつまみ上げると、鼻で笑ってこう言ったのです。

「君さ、これといった強みもないね。うちは即戦力しかいらないんだよ」

圧迫面接と呼ぶにはあまりに酷い態度でした。私が必死に熱意を伝えても、彼はあくびを噛み殺して聞き流すだけ。挙句の果てに、冷たい目で見下しながら言い放ちました。

「悪いけど、無能は雇わないよ。時間の無駄だから帰って」

悔しくて、帰りの駅のトイレで声を殺して泣きました。でも、その涙が私に火をつけました。「絶対に見返してやる」。そう誓い、私は別の会社で必死にスキルを磨き続けたのです。

それから数年後。

努力が実り、私は自ら会社を立ち上げました。業績も好調で、新たなメンバーを募集することになったある日のことです。

入室してきた志望者を見て、私は息を呑みました。

以前より白髪が増え、脂汗を浮かべた疲れた顔。……間違いありません。あの時の面接官です。

かつて威張り散らしていた彼はリストラに遭ったらしく、背中を丸めて座っています。私には気づかず、過去の栄光と自身の経験を早口で語り始めました。

「私はマネジメント経験が豊富です。御社でも必ず即戦力になります」

必死にアピールする彼を見ながら、私は静かに口を開きました。

「素晴らしいご経歴ですね。でも、弊社が求めているのは、相手の立場に立って考えられる心ある人材なんです」

彼は怪訝な顔をします。私はニッコリと微笑んで続けました。

「実は数年前、私はあなたに『無能は雇わない』と言われた就活生なんです」

その瞬間、彼の顔からサァーッと血の気が引いていくのが分かりました。口をパクパクさせて言葉を失っている彼に、私はかつての言葉をそのまま丁寧にお返ししました。

「人の可能性を潰すような方と働く余裕は、今の弊社にはありません。本日はお引き取りください」

呆然とする彼が部屋を出て行った後、私は大きく深呼吸をしました。胸のつかえが取れたような、この上ない清々しさ。

これからも人の痛みがわかる素敵な仲間たちと、もっといい会社を作っていこうと思います。

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