1. トップ
  2. おでかけ
  3. 「甘い匂いから、咳き込むような辛い匂いに変わる」職人だけが知る感覚で作り出される、木炭の世界

「甘い匂いから、咳き込むような辛い匂いに変わる」職人だけが知る感覚で作り出される、木炭の世界

  • 2025.12.18

数多くの「絶景」を持つ北海道。
観光情報にはなかなか載っていない、「日常の絶景」も多くあります。

今回は、HBC帯広放送局のカメラマン・大内孝哉さんが撮影した「木炭職人の世界」をお届けします。

連載「テレビカメラマンがとらえた“一瞬”の北海道」

木炭職人の世界

いつもは十勝平野の絶景をお送りしていますが、今回は今年最後の【番外編】です。
木炭職人の世界をお送りしたいと思います。

帯広から車で約1時間。
池田町の山の麓に、作業場はあります。

今回お邪魔したのは、池田町で木炭を製造する『本郷林業』さん。

作業場に近づくと、じんわり広がる炭火の香りがしてきました。

Sitakke

周りは山に囲まれ、携帯の電波も通ったり通らなかったり。

ここは道内でも珍しい、木炭を作る作業場です。
炭を焼くための「窯場」とも呼ばれています。

Sitakke

窯場にお邪魔すると、一層炭火の香りが強くなり、パチパチと火を炊く音が聞こえ、釜から煙がモクモクと上がっています。
まさに木炭を作っている最中でした。

中央にかまどがあり、丸みを帯びた建物が木炭を作る窯です。
この窯はセメントや火山灰を練って組み合わせ、すべて手作業で作り上げられています。

Sitakke

ここで作業しているのは、計良佳輝(けら・よしき)さん、32歳です。
以下、佳輝さんと呼ばせていただきます。

佳輝さんは12年前に職人を目指したいと、この世界の門を叩きました。

「木炭にこだわって使ってくれている人がいっぱいる。そこはとてもやりごたえを感じる」と話します。

しかし、簡単に木炭ができ上がるわけではありません。
実は木炭を作るには、とても手間がかかり、職人の技と感覚を必要とする大事な行程を経て、やっとでき上がります。

作業風景を見せていただきました。

Sitakke

まずは「木入れ」という作業。
窯の中に放射状に並べていきます。
放射状に並べるのは木に火の熱をムラなく伝えていくためです。

Sitakke

木炭の原料は、池田町内で伐採した、ミズナラやイタヤの木です。

Sitakke

並べ終わったら窯の入り口を閉じ、火を焚き、薪をくべていきます。
一度入り口を閉じたら、木炭ができ上がるまでは開けることは許されません。

Sitakke

「木入れ」で並べた木に直接火をかけるわけではなく、かまどに薪をどんどん足して釜の中の温度を上げていき、木炭へと姿を変えていきます。

Sitakke

燃やし続けて3日経つと、煙の匂いが変わってくるといいます。
その後もどんどん薪を足していきます。

Sitakke

そしてここからが作業の本番です。
職人の感覚がとても大事になってきます。

炭を炭化させるための「本焚き」という作業が始まります。
窯の中に火がつくまで、薪を焚き続ける作業です。

Sitakke

ここでの火加減の調整や、一番最後に炭を絞める作業がとても難しいのです。

ここで失敗すると、窯の中に入れた木がボサボサになってしまったり、折れたり、いろいろなことが起こると言います。

Sitakke

そして煙の匂いで判断。

「最初は水分の甘いような匂いがするが、窯の中に火がついてくると、咳き込むような辛い匂いに変わる」と佳輝さんは言います。

この感覚は、長く木炭を作っている職人にしか分かりません。

窯に火がつくのは、そのときの気温などで違いがあり、火がつくまで夜通し作業することもあるそうです。

Sitakke
窯の煙突口

窯に火がつくとその後は煙突口を調整しながら、窯の中の火の温度を管理し、煙が出なくなったら6日間置いて、やっと木炭の完成です。

木入れしてから一つの窯を使い終わるまで約半月。

創業以来半世紀、変わらない作業工程です。

Sitakke

窯に火をつけてから半月。閉ざしていた窯の入り口を開けると、どんな光景が待っているのか。
続きは後編の記事でお伝えします。

連載「テレビカメラマンがとらえた“一瞬”の北海道」

撮影・文:HBC帯広放送局 大内孝哉
2015年からテレビカメラマンとして、主にニュースやドキュメンタリーを撮影。担当作品に映画/ドキュメンタリー「ヤジと民主主義」「クマと民主主義」や、ドキュメンタリー「核と民主主義」「ベトナムのカミさん〜共生社会の行方〜」「101歳のことば ~生活図画事件 最後の生き証人~」など。
2023年10月から帯広支局に異動。インスタグラム@takayasunset0921では、プライベートで撮影した北海道の写真を公開中。

編集:Sitakke編集部IKU

※掲載の内容は記事執筆時(2025年12月)の情報に基づきます

元記事で読む
の記事をもっとみる