1. トップ
  2. 寒くなると痛みが強くなる気がする……これって本当なのかお医者さんに聞いてみた

寒くなると痛みが強くなる気がする……これって本当なのかお医者さんに聞いてみた

  • 2025.12.9

■寒くなると痛みが強くなるのは本当?

寒い時期に痛みを感じやすくなるという現象は、多くの人に見られます。実際、気温の低下だけでなく、気圧の変動、血流の変化、活動量の減少、ホルモンバランス、自律神経や気分の変調など、いくつもの要因が複雑に重なり合って起きると考えられています。

頭痛の中でも片頭痛は、寒さや気圧の変化、乾燥などが引き金となりやすく、脳内のセロトニンなど神経伝達物質のバランス変化が発作を誘発します。そのため、もともと片頭痛を持つ人では、冬季や天候が不安定な時期に発作頻度が増える傾向があります。

また、生理痛や月経随伴症状と天候要因との関連を調べた研究では、低温、気圧変動が痛みやPMS(⽉経前症候群)の症状悪化と関連するとの報告があります。さらに、冬は日照時間の短縮によりビタミンDが不足しやすく、活動量の低下や気分の落ち込みも加わることで、痛みをより強く感じやすくなることが知られています。

関節や筋肉の痛みについても、寒冷刺激により末梢血管が収縮し、血流が低下することで筋肉や腱、靱帯がこわばり、動かし始めに痛みを感じやすくなります。また、低温下では関節内の滑液(関節液)の粘度が高まり、関節の動きが硬くなることも、痛みの一因となります。

■寒さ以外にも痛みを強める要因がある

寒い季節は屋外での活動が減り、身体を動かす機会が少なくなるため、筋力や柔軟性の低下によって「こり」や「こわばり」が生じやすくなります。さらに、長時間のデスクワークや在宅勤務で同じ姿勢を続けることも、頚部や肩、腰の筋緊張を高め、痛みを悪化させる要素となります。

心理的な要因も見逃せません。人は過去の痛みの記憶を「つらかった時期」として記憶しやすく、冬に経験した痛みの印象が強く残っている場合、「冬=痛み」という結び付きが心の中で条件反射的に固定化されやすくなります。そのため、実際の痛み頻度が大きく変化していなくても、「また痛くなるかもしれない」という予期不安が痛み感受性を高めることがあります。

さらに、冬季には日照不足や冷え、生活リズムの乱れ、年末の忙しさなどにより、ストレスや睡眠不足が増えやすい傾向があります。ストレスや抑うつ気分は痛覚閾値を下げるため、同じ刺激でも「より強い痛み」として感じられるようになります。

また、気圧の変化も重要な因子であり、慢性疼痛を抱える人では「気圧が下がると痛む」と訴えるケースが多いことが知られています。気圧の低下によって関節包や腱鞘内の機械受容神経が刺激されるため、わずかな刺激でも痛みとして感じやすくなるのです。

■温活は効果があるの?

近年注目されている「温活(おんかつ)」は、寒い季節のセルフケアとして非常に有効です。温熱刺激によって血管が拡張し、末梢血流が促進されることで酸素や栄養の供給が改善し、筋肉の緊張が和らぎます。これにより、肩こりや腰痛などの症状緩和が期待できるほか、自律神経のバランスが整い、リラックス効果や睡眠の質の向上にもつながります。

入浴は特に効果的で、シャワーだけで済ませるのではなく、38〜40℃程度のぬるめのお湯に10〜15分かけてゆっくり浸かると、全身の血流が促されます。肩や腰、手足など冷えを感じやすい部位には、温熱パッドやカイロを使って15〜20分程度温めると良いでしょう。ただし、低温やけどには注意が必要です。

温めた後に軽いストレッチやウォーキングなど穏やかな運動を行うことで、筋肉の柔軟性や関節の可動域を維持しやすくなります。

また、衣服選びも重要です。保温性の高い下着や靴下を身につけ、特に首・手首・足首など「くび」のつく部位を冷やさないことが、全身の血行維持に役立ちます。これらの取り組みは特別な準備を必要とせず、日常の中で続けやすいセルフケアです。

■「痛み」が増える冬。解熱鎮痛剤の服用時に気をつけるべきことは?

体の痛みに対して、市販の解熱鎮痛剤を服用する人も多いと思います。なかには、「いつもより痛みが強い」「薬を飲んでも効きが悪い」と感じることも増えてくるでしょう。

しかし、痛みが強まったときに、市販の解熱鎮痛剤を通常より多く服用するのは避けるべきです。自己判断による過量服用は、副作用や薬物乱用頭痛、さらには肝臓や腎臓への負担を引き起こす危険があります。薬を使用する際は、用法・用量を守ることが前提です。

たとえばアセトアミノフェンの場合、成人では1日あたり4,000mg以内、服用は1日3回までが目安とされています。

痛みが頻繁に起こる、または薬が効きにくくなっていると感じた場合は、早めに医師の診察を受けることが大切です。同じ成分の薬を重ねて服用することや、月に10日以上継続して使用することは避けましょう。

これは、慢性的な頭痛を引き起こす「薬物乱用頭痛」を防ぐためです。服用中に胃の不快感や発疹、浮腫などの症状が出た場合はすぐに中止し、医療機関に相談してください。

■冬の痛みはセルフケアで対策を

冬の痛み対策としてのセルフケアは、冷えや運動不足による血流低下や筋肉のこわばりを防ぎ、痛みの発生や慢性化を抑えるうえで極めて重要です。冷えた体を温めて血流を保ちつつ、適度に動かすことで、腰痛・肩こり・関節痛といった慢性的な不調を予防することができます。

また、ストレス軽減や睡眠の質の維持も、痛みの感じ方に大きく影響します。就寝前のスマートフォン使用を控え、ぬるめの入浴で体を温め、心身ともにリラックスできる時間を作ることが推奨されます。

寒さと痛みの関係は、血流・神経活動・自律神経・気象要因など、さまざまな因子が関与する複雑なものです。しかし、日常生活の中で「温めて、整えて、動かす」という基本を意識すれば、痛みを緩和し、快適に冬を過ごすことが可能です。

“痛みが気になる季節こそ、自分の体と向き合うタイミング”。寒さを上手に乗り越えるために、日々のセルフケアを大切にしていきましょう。

(監修:中路 幸之助、編集:マイナビウーマン編集部)

※この記事は、医療健康情報を含むコンテンツを公開前の段階で専門医がオンライン上で確認する「メディコレWEB」の認証を受けています。 ※画像はイメージです。

元記事で読む
の記事をもっとみる