1. トップ
  2. 22年前、「バンド」と「アイドル」を融合させた新生バンド メンバー脱退の痛みを乗り越えた“再起曲”

22年前、「バンド」と「アイドル」を融合させた新生バンド メンバー脱退の痛みを乗り越えた“再起曲”

  • 2026.2.17

「22年前の今頃、あなたは誰の背中を見送っていた?」

2004年。まだ冷たい風が頬を刺す2月の放課後、少しだけ伸びた夕暮れ時の影を見つめながら、卒業式を目前に控えたあの独特な静けさに、胸が締め付けられた記憶はないだろうか。

期待よりも寂しさがほんの少し勝っていた、あの季節の隙間に寄り添うように届けられたのが、ある4人組による真っ直ぐな旋律だった。

ZONE『卒業』(作詞・作曲:町田紀彦)――2004年2月4日発売

「楽器を弾きながら踊る」という新しいスタイルで音楽シーンを席巻してから数年。「バンド」と「アイドル」を融合させた唯一無二の存在として、同世代から絶大な支持を集めていた彼女たちが、グループとしての大きな転換期に放ったのが、この一曲である。

痛みを抱えながら踏み出した“新生”への一歩

2004年の幕開けは、彼女たちにとって決して穏やかなものではなかった。前年の大晦日、紅白歌合戦のステージを最後に、ギターのTAKAYOが脱退。その事実は、ファンにとっても、そして残されたメンバーにとっても、あまりに大きな衝撃だった。

そんな荒波の中で新メンバーのTOMOKAを迎え、文字通り「新しい自分たち」としてリスタートを切る第1弾シングルが、この『卒業』だったのである。

この楽曲の最大の魅力は、何といってもその「生々しいほどに純粋な歌声」にある。聴く者の耳を瞬時に「あの頃」の教室へと連れ戻す力。過度な装飾を削ぎ落としたサウンド作りは、メンバーそれぞれの個性を際立たせ、まるで耳元でそっと語りかけられているような親密さを生んでいた。

undefined
2004年1月、新曲のヒット祈願を行ったZONE。左からMIZUHO、新メンバーのTOMOKA、MIYU、MAIKO(C)SANKEI

季節の匂いを閉じ込めた“等身大”の物語

作詞・作曲を手がけたのは、彼女たちの代表曲『secret base 〜君がくれたもの〜』をはじめ、ZONEのプロデュースを手掛けてきた町田紀彦。

彼が描く世界観は、単なる学校行事としての「卒業」を描くにとどまらない。それは、昨日までの自分との決別であり、不確かな未来へと踏み出す瞬間の「震えるような心の動き」そのものだった。

編曲を担当したha-jによるアレンジもまた、見事な職人技が光っている。繊細な始まりから、サビに向けて徐々に熱を帯びていくバンドサウンド。そこには、ただ悲しみに暮れるのではない、前を向こうとする力強い意志が込められていた。

別れを惜しむ涙を拭って、新しい世界へと走り出す「疾走感」が、聴く者の心に静かな勇気を与えてくれた。

重なり合う歌声が告げる“物語の続き”

新メンバーの合流は、グループに新たな息吹を吹き込んだ。彼女の参加によって生まれた新しいハーモニーは、これまでの彼女たちが築いてきた物語を大切に継承しつつ、さらに広がりを見せる予感を感じさせた。

かつての仲間を見送り、新しい仲間と手を取り合う。その現実のドラマが楽曲のテーマと見事にシンクロし、リスナーに「これからの未来」への希望を抱かせたのである。

当時の音楽シーンを振り返れば、ダンスユニットやソロアーティストが華やかにチャートを彩っていた。その中で、少し無骨に楽器を抱え、等身大の言葉を届けようとする彼女たちの姿は、どこか特別で、だからこそ愛おしく映ったものだ。

彼女たちが歌うのは、遠い世界の出来事ではなく、私たちの日常に転がっている「ありふれているけれど、かけがえのない瞬間」だったからに他ならない。

22年経っても色褪せない“旅立ちの記憶”

この曲を聴くと、当時の冷たい空気や、夕暮れの校舎の匂いを思い出すという人も多いはずだ。

それは、この旋律が単なる流行歌としてではなく、多くの人の「個人的な記憶のしおり」として深く刻まれている証拠でもある。

「さよなら」は終わりを意味する言葉ではなく、次の場所へ行くための合言葉。そんなメッセージが、22年という月日を経てもなお、瑞々しいまま響き続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。