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25年前、祈りを音にした“無垢なハーモニー” 孤独を優しく包み込んだ“冬の陽だまりソング”

  • 2026.1.24

新しい世紀が幕を開けたばかりの2001年。街中がどこか慌ただしく、デジタルの光に溢れていたあの頃。冷たく乾いた風の中で、私たちの冷えた心にそっと火を灯してくれるような、温かな歌声が流れてきた。

花*花『ハナムケノハナタバ』(作詞・作曲:こじまいづみ)――2001年2月21日発売

それは、派手な演出で飾るのではなく、ただひたむきに「祈り」を音にしたような一曲。聴く者の日常に寄り添い、こわばった心をゆっくりと解きほぐしていくような、不思議な安心感に満ちていた。

都会の静寂に溶け込む「混じりけのない」響き

この楽曲がリリースされた当時、彼女たちはすでにその圧倒的な歌唱力と、飾らない人柄で多くのリスナーから信頼を得ていた。メジャー3作目のシングルとして届けられた本作で見せたのは、さらに深みを増した、包み込むような優しさだった。

彼女たちの最大の武器である二人のハーモニーは、時に寄り添い、時に重なり合いながら空気を震わせる。それは単に音を合わせるということではなく、二人の人生が交差する瞬間に生まれる、奇跡のような響きだった。その透明感の中に宿る凛とした強さに、当時の私たちは、自分の内側にある「誰かを大切に想う気持ち」を再確認させられたのである。

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花*花-1999年撮影(C)SANKEI

職人が音に込めた「引き算」の美学

『ハナムケノハナタバ』の魅力は、音を詰め込むのではなく、あえて「余白」を大切にした構成にある。作詞・作曲を手がけたこじまいづみによる感性は、緻密でありながらも、決して聴き手を突き放さない親密さを携えていた。

編曲を手がけたパパダイスケによるアレンジも秀逸だ。生楽器のぬくもりを活かしたサウンドは、まるで冬の陽だまりのような温かさと、夜の静寂を同時に感じさせるものだった。盛り上がりを無理に煽るのではなく、旋律の美しさと二人の声の響きだけで、聴き手をじわじわと高揚させていく展開。その職人技ともいえる音作りが、時代に媚びない普遍性を生み出していた。

時代が求めた「素顔のままの自分」への回答

本作は、人気番組『世界ウルルン滞在記』(TBS系)のエンディングテーマとして多くの人々の記憶に刻まれた。旅人が異国の地で出会い、そして別れる瞬間の、あの言葉にできない感情。番組を通じて流れてくるこの曲は、単なるBGMの枠を超え、視聴者それぞれの人生にある「出会いと別れ」を肯定してくれる安らぎのような役割を果たしていた。

2001年という転換期において、私たちは常に「強さ」や「正解」を求められていたように思う。けれど、彼女たちの歌声は、弱さも迷いも丸ごと受け入れてくれる。派手なタイアップの枠を超え、ラジオや街角からふと流れてくるその歌声を耳にするたびに、「そのままでいいんだよ」という静かな勇気をもらった人は多いはずだ。

25年を経て、なお瑞々しく響く「心の解放」

あれから四半世紀。音楽を聴く環境は劇的に変化し、世界はより便利に、そして忙しくなった。けれど、ふとした瞬間にこの旋律が流れてくると、あの冬に感じた「心が解き放たれる感覚」が昨日のことのように蘇る。

今、改めてこの曲を聴くと、当時の彼女たちが楽曲に込めた「純粋な音楽への愛」が、より鮮明に伝わってくる。それは、この曲が一時的なトレンドを追ったものではなく、人間の感情の揺らぎや、普遍的な心地よさを正確に捉えていたからに他ならない。

軽やかな旋律が終わりを迎えるとき、心に残るのは空虚さではなく、澄み渡った静寂。あの冬に私たちが受け取った「優しさへの感覚」は、今も私たちの心の中で、日常を劇的に、そして優しく彩り続けるための魔法として鳴り続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。