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32年前、元日の朝に放たれた“希望の音” クォーターミリオン達成したアニメ主題歌

  • 2026.1.22

1994年の元日。まだ街が完全に目覚めきらない朝。正月特有のゆったりした時間、こたつの中でぼんやりと眺めていた画面。その空気に、やけに相性のいい音楽があった。世の中は少しずつ現実的な方向へと舵を切り始めていた。派手さよりも、分かりやすさや親しみやすさが求められ始めた頃。そんな時代の入り口に、肩の力が抜けたまま、自然に心へ入り込んできた1曲がある。

SMAP『君色思い』(作詞・作曲:林田健司)――1994年1月1日発売

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Google Geminiにて作成(イメージ)

子ども向けアニメと、国民的グループの交差点

『君色思い』は、SMAPにとって11枚目のシングル。テレビ東京系アニメ『赤ずきんチャチャ』のオープニング・テーマとして制作された楽曲だ。作中では、メンバーの香取慎吾が狼男の少年・リーヤの声優を務めており、作品とグループの距離は極めて近かった。

当時のSMAPは、すでにテレビで見ない日はない存在になりつつあったが、まだ「国民的」と呼ばれる手前の段階でもあった。バラエティ、ドラマ、歌番組を横断しながら、少しずつ幅を広げていく途中。その過程で選ばれたのが、子ども向けアニメというフィールドだった点も興味深い。

この曲は、アニメの世界観に過度に寄せることなく、あくまでSMAPのポップソングとして成立している。子どもにも届き、大人の耳にも違和感なく残る、その中間の温度感が、この曲の立ち位置を象徴している。

軽やかさの裏にある、計算されたポップネス

『君色思い』の最大の特徴は、その軽快さだ。跳ねるようなリズム、明るく開いたメロディ、引っかかりの良いフレーズ。どれも一度聴けばすぐに覚えられるが、安易に流れていかない芯の強さがある。

作詞・作曲を手がけた林田健司は、当時からポップスの構造を熟知した作り手だった。メロディはシンプルだが単調ではなく、サビに向かって自然に高揚感が積み重なっていく。そこにCHOKKAKUの編曲が加わることで、音の輪郭はさらに明瞭になり、テレビから流れても埋もれない存在感を放った。

SMAPのボーカルも、この楽曲では実に素直だ。誰かが突出するわけでもなく、グループ全体で一つの明るさを共有している。その均衡が、聴き手に安心感を与え、繰り返し耳にしても疲れない理由になっている。

無邪気さが許された、最後の時代の空気

『君色思い』は楽曲の良さもありクォーターミリオン(25万枚)を超える売り上げをあげた。アニメ主題歌という枠に収まりながらも、SMAPのシングルとしてしっかり記憶されているのは、この曲が持つ普遍的なポップ性ゆえだろう。

今振り返ると、『君色思い』には90年代前半特有の無邪気さが詰まっている。深読みを必要とせず、構えずに受け取れる明るさ。そこには、まだ世の中全体が「重さ」を背負いきる前の余白があった。

SMAPはこの後、より大きなテーマや社会性を帯びた楽曲とも向き合っていく。その前段階として、この曲は彼らが最も自然体でポップでいられた瞬間を切り取っているようにも思える。

元日の朝に流れていた、少しだけ浮き立った空気。その中で聴いた『君色思い』は、今もなお、軽やかな記憶として胸のどこかに残り続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。