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35年前、“艶に射抜かれた”異色の映画主題歌 悪魔が刻んだ“熱を帯びたロックの肖像”

  • 2026.1.21

1991年1月。街にはまだ華やかな光が溢れていたが、その奥にはどこか落ち着かない空気が漂っていた。勢いだけでは押し切れない感情や、言葉にできない違和感が、夜の隙間に滲み出し始めていた時代だ。そんな空気の中で、異様な存在感を放っていたのがこの曲だった。

激しい。だが荒々しいだけではない。艶があり、張りつめている。悪魔たちが「魔暦紀元前8年(1991年)」に鳴らしたサウンドは、いつもの破壊力とともに、聴き手を捉えてきた。

聖飢魔II『赤い玉の伝説』(作詞:デーモン小暮・作曲:エース清水)――1991年1月21日発売

映画が求めたのは、過剰さではなく“張りつめた熱”

『赤い玉の伝説』は、聖飢魔IIにとって12枚目の小教典(シングル)。樋口可南子主演の映画『陽炎』主題歌として制作された。

映画の持つ妖しさや緊張感に合わせ、ロックとしての熱量を一点に集中させたような音像が提示されている。デーモン小暮の詞は、生々しく、どこか危うい言葉が連なり、映像の余白に入り込む。

主題歌として前に出るのではなく、物語の体温を底上げする役割を担っている。

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聖飢魔II-1993年撮影(C)SANKEI

走り続けるビートが生む、逃げ場のない緊張感

この曲を特徴づけているのは、その推進力だ。リズムは粘らず、前へ前へと進む。テンポ感は明確で、足を止める隙がない。

エース清水のギターは、歪みを効かせながらも輪郭が鋭い。重さよりも切れ味が前に出ており、楽曲全体に張りつめた空気を生む。バンド全体がその速度感を崩さず、音を過不足なく配置している。

そこに重なるデーモン小暮のボーカルは、叫びに寄りすぎない。しかし感情は十分に熱い。言葉を引き伸ばさず、前へ投げるように歌うことで、艶と緊張が同時に立ち上がる

この歌唱があるからこそ、曲はロックとして最後まで走り切る。

攻撃性と色気をまとったロックサウンド

『赤い玉の伝説』は、いわゆる代表曲とは少し違う位置にある。だがそれは妥協でも、実験でもない。聖飢魔IIが持つ攻撃性、色気、構築力を、主題歌という制約の中で研ぎ澄ませた結果が、この形だった。

派手なフックに頼らず、曲そのものの推進力と空気感で聴かせる。だからこの曲は、35年経った今も“古くならない”。ロックは、ただ爆音であればよいわけではない。熱を保ったまま、走り続けること、それこそが核だろう。『赤い玉の伝説』は、そのことを静かに、しかし強く刻みつけた一曲だった。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。