1. トップ
  2. 「妙に生々しい」「直視できない…」“あまりにも濃密な描写”の数々に騒然…「色気が凄い」演技派女優の快演光る『傑作映画』

「妙に生々しい」「直視できない…」“あまりにも濃密な描写”の数々に騒然…「色気が凄い」演技派女優の快演光る『傑作映画』

  • 2026.1.15

派手な事件も、極端な暴力もない。それなのに、観ているあいだ中、胸の奥がじわじわと締めつけられていくーー。“目が離せない映画5選”の最後に紹介するのは、日常の延長線上に潜む痛みを、これ以上ないほどリアルに描き切った一本、映画『南瓜とマヨネーズ』です。この映画が突きつけてくるのは、誰の身にも起こり得る、あまりにも身近で、あまりにも逃げづらい現実。観る者によっては、「怖い映画」よりもずっと苦しく感じられるかもしれません。それでは、“目が離せない映画5選”のラストを飾る作品『南瓜とマヨネーズ』をご紹介していきます。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

undefined
映画『南瓜とマヨネーズ』の初日舞台あいさつに出席した臼田あさ美(C)SANKEI
  • 作品名(配給):映画『南瓜とマヨネーズ』(S・D・P)
  • 公開日:2017年11月11日
  • 出演者:臼田あさ美、太賀(現:仲野太賀)、浅香航大、若葉達也 ほか

主人公・ツチダ(臼田あさ美)は、昼はカフェ、夜はキャバクラで働きながら、ミュージシャンの夢を追いかける恋人・せいいち(仲野太賀)と同棲生活を送っています。

夢を追うと言いながら、何も生み出さないせいいち。せいいちはスランプに陥り、曲を生み出せずにいたのです。そうしてダラダラと毎日を過ごすせいいち。彼を支え続けるツチダは、次第に自分の気持ちが見えなくなっていきます。

ツチダは稼ぎを得るために、キャバクラ店に来る客・安原(光石研)と愛人関係になってしまい、そのことがせいいちにバレてしまいます。せいいちはここでようやく、ツチダに大きな負担をかけていたことを悟り、夢を追いかけるのを諦め、心を入れ替えて働き始めるのでした。

しかしそんなある日、彼女はかつての恋人・ハギオ(オダギリジョー)と再会してしまいます。ハギオのことを今でも引きずっていたツチダは、過去の思い出にしがみつくかのように、抗いがたい引力でもってハギオにのめりこんでいくのですがーー。

過去と現在、理想と現実。その狭間で揺れるツチダの心は、少しずつ、しかし確実に軋み始めていきます。

静かな日常が、いちばん苦しい

映画『南瓜とマヨネーズ』は、故・魚喃キリコさんの代表作の一つでもある同名漫画を原作とした実写映画化作品です。2024年12月25日に52歳で逝去。一周忌に際し公表された訃報は、多くのファンに衝撃を与えました。その独自の感性と「言葉」は、今も色あせず輝き続けています。本作が描くのは、誰かが明確に悪いわけではない、しかし確実に“しんどい”関係性です。

夢を追う恋人を支えること。自分の気持ちを後回しにすること。「好き」という感情だけで、生活を続けていくこと。

SNSでも「あまりに生々しい」という声が多く見られるのは、この物語が決して他人事ではないからでしょう。自分事のようにキリキリと胃を縛り上げられていく様な辛さがあり、あまりにも濃密な描写の数々に思わず没入してしまいます。

静かな会話、沈黙、何気ない生活音。それらが積み重なることで、観る側はツチダの、吸っても吸っても肺に空気が入ってこない様な息苦しさをそのまま共有させられます。

生活感という名のリアリティ…そして臼田あさ美が体現する“諦めきられなさ”

本作の最大の特徴は、その圧倒的な生活感です。SNSでは「妙に生々しい」「直視できない…」という感想も多く、作られたドラマというより、誰かの人生をじっくりと盗み見ている感覚に近いかもしれません。部屋の散らかり方、食事の仕方、金銭感覚。どれもが妙にリアルで、「見たくなかった現実」「知りたくなかったこと」を突きつけられるような居心地の悪さがあります。

この映画を成立させている最大の要素が、臼田あさ美さんの存在。大きく感情を爆発させることはない。それでも、視線や間、声のトーンだけで、ツチダが纏う独特の雰囲気を醸し出し、迷いや疲弊、諦めきれない想いを感じさせます。そんな臼田さんの快演にSNSでは「色気が凄い」「ファンになった」「演技が最高すぎる」という声が多数。

特に印象的なのは、「自分が不幸だと断言できない」状態を演じ切っている点です。臼田あさ美さんの演技によって、ツチダは“可哀想な女性”ではなく、現実のどこかに確かに存在する、もしかしたら隣に住んでいるかも知れないほどのリアル感を持って一人の人間として立ち上がります。少なくとも鑑賞後の人々の脳内には、ツチダの影ががいつまでも座り込み続けることでしょう。

なぜ、こんなにも心に残るのか

映画『南瓜とマヨネーズ』は、答えを与えてくれません。正解も、救いも、はっきりした結論も用意されていません。それでも観終わったあと、「自分ならどうするだろう」と考えずにはいられなくなります。この映画が“目が離せない”のは、感情を揺さぶるからではなく、自分自身の生活や選択を静かに照らし返してくるからなのではないでしょうか。

また、原作者である魚喃キリコさんは、独特な作風で90年代から一時代を築いた漫画家の一人です。2024年12月25日に52歳でご逝去され、一周忌に際して訃報が公表されました。SNSを中心に、キリコさんの漫画を愛するファンから悲しみの声が集まりました。本作の原作漫画でもある『南瓜とマヨネーズ』は代表作の一つとして今もなお熱狂的なファンを持つ作品となっています。

映画を観たファンからは「原作の雰囲気を上手く反映させてる」「最近の邦画で一線を画した恋愛映画」と、大切な漫画の実写化作品を絶賛する声が多く投稿されています。

もし今、自分の選択や日常に少しでも引っかかりを感じているなら、本作は、優しくも残酷な鏡になるでしょう。静かなのに、目が離せない。それが、『南瓜とマヨネーズ』という映画です。


※記事は執筆時点の情報です