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「かなりエグい」「覚悟が必要」“開始3分”の過激シーンに絶句…視聴者の心を削る“衝撃映画”

  • 2025.12.19

人間の本性や欲望が浮き彫りになる瞬間、そこには思いもよらぬドラマが生まれます。表面的には穏やかに見える日常の裏側で、人々が抱える本音や欲求が明らかになっていく様子は、見る者を引き込む魅力があります。今回は、そんな「人の本性があぶり出される物語」をご紹介します。本記事では、2019年公開の映画『タロウのバカ』をご紹介します。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です。
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます。

あらすじ

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「au WALLET ポイント」発表会に出席した菅田将暉(C)SANKEI
  • 作品名(配給):映画『タロウのバカ』(東京テアトル)
  • 上映開始日:2019年9月6日
    ・出演者:YOSHI、菅田将暉、仲野太賀、奥野瑛太 ほか

戸籍を持たず、学校にも通ったことのない名もない少年(故・YOSHIさん)。彼は年上の高校生エージ(菅田将暉)とスギオ(仲野太賀)と出会い、タロウと呼ばれるようになります。柔道で挫折し暴力に走ってしまうエージ、理性的だが危うさを抱えるスギオ。それぞれに深い悩みを抱える3人は、一緒にいるときだけ心を解放できました。

しかし、偶然手に入れた一丁の拳銃が、彼らの運命を大きく変えていきます。社会的弱者の排除、育児放棄、反社会勢力の存在という過酷な現実と向き合うことを余儀なくされた3人。死の影と絶望が彼らを追い詰めていく中、誰にも愛されたことのないタロウの心に、未知なる感情が芽生え始めます。

冒頭から観る者を圧倒する衝撃的な映像表現

本作の最大の特徴は、その過激で暴力的な描写です。しかし、それは決して刺激を求めたものではなく、現実に存在する社会問題を真正面から映し出すための表現手法となっています。SNSでは「冒頭からかなりエグい」「開始3分で…」といった声が見られるほど、開始早々に視聴者を作品の世界へと惹きこみます。そんな本作に、「タブーや社会問題をしっかり描いてる」という声や、「すごく考えさせられる映画」といったコメントも。

大森立嗣監督は、社会の底辺で生きる若者たちのリアルを描くため、容赦のない映像表現を選択しました。冒頭から展開される暴力シーンは、観る者に強烈な不快感を与えますが、それこそが監督の意図するところです。この不快感こそが、私たちが日常で見て見ぬふりをしている現実への警鐘なのです。

愛の反対は憎しみではなく無関心である、という言葉が作中で響きます。「好きって、何?」と問うタロウの姿は、愛を知らずに育った少年の悲しみを象徴しています。

観た後の心の重さ…圧倒的な疲労感の正体

多くの観客が口を揃えて語るのが、鑑賞後の「疲労感」です。それは単なる不快な体験ではなく、作品が持つ強烈なメッセージが心に深く刻まれる証でもあります。「結構キツイ」「終始嫌な予感が…」「観てよかった、でもとにかく過激」「観るのは相当な覚悟が必要」という声が示すように、本作は観客に容赦なく現実を突きつけます。

この疲労感は、作品が観客に突きつける問いかけの重さから来るものです。育児放棄、貧困、暴力といった社会問題は、私たちの日常のすぐ隣に存在しています。しかし、多くの人はそれを見ようとしません。本作は、その「見て見ぬふり」を許さず、観客を現実と向き合わせるのです。

緊張感が途切れることなく続く119分間は、確かにキツイ体験です。しかし、その先に得られるものは、社会への新たな視点と、自分自身への問いかけです。

菅田将暉さんの鬼気迫る演技が魅せる苦悩の深さ

本作で菅田将暉さんが演じるエージは、柔道で挫折し、行き場のない怒りを抱えた高校生です。パワハラを受け、居場所を失った彼の苦悩を、菅田さんは全身で表現しています。

同級生として行動を共にする仲野太賀さん演じるスギオとの掛け合いも見どころの一つです。2人の自然なやり取りが作品にリアリティをもたらしています。

菅田さんの演技で特筆すべきは、その繊細さと激しさの振り幅です。静かに佇む場面では深い絶望が滲み出し、暴力に走る場面では抑えきれない感情が爆発します。26歳で高校生役を演じることの難しさを感じさせない、圧倒的な演技力が光ります。

仲野太賀さんが演じるスギオは、理性的でありながらも心に危うさを秘めた複雑なキャラクターです。援助交際を繰り返す洋子(植田紗々さん)に想いを寄せる彼の切なさが、物語に深みを与えています。

3人の若者それぞれが抱える闇が交錯し、やがて破滅へと向かっていく様は、目を背けたくなるほどの痛みを伴います。しかし、その痛みこそが、本作が伝えようとするメッセージの核心なのです。

強烈な衝撃と疲労感を与える傑作

『タロウのバカ』は、観る者に強烈な衝撃と疲労感を与える作品ですが、それは決して無意味な苦痛ではありません。大森立嗣監督が15年以上温め続けてきたこの物語は、社会の底辺で生きる若者たちの姿を通して、私たちに鋭い問いを投げかけます。「あなたは本当に見ているのか」と。

育児放棄、貧困、暴力、社会的排除という現実は、私たちのすぐ隣に存在しています。しかし多くの人は、それを見て見ぬふりをして生きています。

本作は、その無関心こそが問題の本質であると訴えかけているのです。菅田将暉さん、仲野太賀さん、そして新人YOSHIさんの圧倒的な演技が、物語に命を吹き込んでいます。過激で暴力的な表現の奥にある悲しみと絶望、そして微かな希望。

鑑賞後の疲労感の先に見えてくるのは、社会への新たな視点と、自分自身への問いかけです。この作品を観ることは、決して心地よい体験ではありません。しかし、目を背けてはいけない現実がそこにはあります。


※記事は執筆時点の情報です