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「生々しすぎて観てられない…」実力派女優が挑んだ『衝撃映画』…観る者の心に爪痕を残す至高の一作

  • 2026.1.4

ドラマや映画の中には、登場人物の“生き様”が観る者の心に、強烈なインパクトを残す作品があります。今回は、そんな中から"生々しさが光る名作"を5本セレクトしました。本記事ではその第3弾として、映画『欲望』(メディア・スーツ)をご紹介します。不倫、性的不能、そして叶わぬ想い――絡まり合う愛と孤独の果てに迎える、衝撃の結末とは――?

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

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映画『欲望』原作者との対談に参加した板谷由夏(C)SANKEI
  • 作品名(配給):映画『欲望』(メディア・スーツ)
  • 公開日:2005年11月19日
  • 出演: 板谷由夏(青田類子役)

図書館司書の類子(板谷由夏)は、妻子ある能勢(大森南朋)との関係にのめり込んでいました。そんなある日、偶然、中学時代の親友・阿佐緒(高岡早紀)と再会します。阿佐緒は年の離れた精神科医・袴田亮介(故・津川雅彦さん)と結婚するといいます。

結婚披露パーティーで袴田邸を訪れた類子は、同級生の秋葉正巳(村上淳)と再会。たくましく成長した彼は、家業の造園を継ぎ、袴田邸の庭を手がけていました。

実は、高校時代、正巳は交通事故に遭い、見舞いに訪れた類子に衝動的に襲いかかったことがありました。しかし、それ以上のことは何も起こりませんでした。事故の後遺症で、正巳は一生治る見込みのない性的不能となっていたのです。

阿佐緒の披露宴をきっかけに、三人は頻繁に顔を合わせるようになります。阿佐緒もまた、夫との肉体関係のない結婚生活に苦しんでいました。正巳は阿佐緒への憧れを語りつつも、次第に類子に惹かれていきます。そしてある夜、ついに類子を抱きしめる正巳――。しかし、熱い抱擁にも奇跡は訪れません。けれど、類子の想いは肉体を超えたものでした。

その後、迎えた袴田の出版記念パーティー。幸せそうに微笑む阿佐緒でしたが、家政婦・初枝が袴田の子を身ごもったと誤解した阿佐緒は、初枝を乗せたまま車を暴走させ、命を落としてしまいます。

阿佐緒の死後、類子と正巳は心の傷を癒すように沖縄へ。まぶしい陽射しの中で、2人は穏やかな時間を過ごします。しかし、その至福の時は、永遠の別れへの序章にすぎませんでした――。

板谷由夏が映画初主演で挑んだ“純愛と官能”のラブストーリー

映画『欲望』は、直木賞作家・小池真理子さんの同名小説を原作とした、大人のための官能的なヒューマンドラマです。

監督は『月とキャベツ』などで知られる篠原哲雄さん。脚本は大森寿美男さんと川﨑いづみさんが手がけました。主演の板谷由夏さんにとって、本作は記念すべき映画初主演作。複雑な内面を抱える主人公・類子を、全身全霊で演じきりました。

本作では、正巳が傾倒する三島由紀夫の作品世界に通じる美学や死生観が随所に息づいており、恋愛映画の枠を超えた深い文学性と芸術性をたたえています。

また、本作がR-18指定を受けたことについて、製作陣は当初から覚悟していたといいます。男女の性を真正面から描くという強い意志が、その決断の背景にありました。

主演の板谷由夏さんは、類子という役に深く入り込みすぎたあまり、撮影後もしばらく抜け出せなかったそうです。その後は、ドラマや舞台、さらには報道番組のキャスターなど、多方面で活躍を続けましたが、再び映画で主演をつとめるまでには17年という歳月を要しました。

“不能の男”と“不倫の女”――過激描写の先に見える“愛の本質”

本作の最大の見どころは、人間の「性」と「純愛」の境界線を、生々しく、そして美しく描き出している点にあります。

特に、類子と正巳が初めて身を寄せ合うホテルのシーンは、作品の核心に迫る重要な場面です。正巳が抱える性的不能という苦しみ、そしてそれでも彼と結ばれたいと願う類子の姿は、痛々しくも官能的で、観る者の心を強く揺さぶりました。肉体的な欲望を超えて、魂の結びつきを求めるふたりの姿――そこには純愛の美しささえ感じられます。

また、不倫を通して描かれる「孤独」も本作の大きなテーマです。類子が抱える空虚さが、正巳との出会いによってどのように変化していくのか。その心の揺らぎが、1970〜80年代のどこか懐かしい風景とともに丁寧に映し出されています。

そんな本作には、さまざまな反響が寄せられました。

「生々しすぎて観てられない…」といった、あまりの生々しさに驚く声や、「板谷由夏の演技に圧倒された」「高岡早紀の狂気が滲む色気が最強」「村上淳の儚い美しさが忘れられない」「美しくも切ないラブストーリー」「性をここまで真摯に描いた作品は他にない」「耽美な世界観に引き込まれた」といった称賛も相次ぎました。

主演の板谷由夏さんは、後にテレ朝POSTによるキャリアを振り返るインタビュー内で「あの時は本当に苦しかった」と語るほどほど、心身ともに限界まで役に向き合いました。そんな俳優たちの矜持と、篠原監督の覚悟が重なり、本作に唯一無二の輝きをもたらしています。

人間の深層心理に鋭く切り込み、目を背けたくなる痛みと、息をのむような美しさを同時に描き出した本作。板谷由夏さんの体当たりの演技、緻密に構成された脚本、そして圧巻の映像美が、観る者を官能と思索の渦へと誘います。

男と女の性、そして孤独の果てにある純愛を真正面から描き切った映画『欲望』。俳優たちの剥き出しの感情がぶつかり合う姿は、まさに“生々しさが光る名作”と呼ぶにふさわしい、至高の一作です。


※記事は執筆時点の情報です